火曜日は基本的に、楽器の練習に一日を捧げることにしている。
今日もその例に漏れず、いくつか授業を受けてからは音楽に没頭する一日だった。
まず、ピアノでパガニーニ変奏曲を弾く。
といっても難しすぎて中々指が回らないので、第一変奏、第二変奏、第三変奏・・・と区切って片手ずつ弾く。
最初はゆっくりと、それから段々早く。うーむ、難しい。作曲者ファジル・サイの演奏をYoutubeで見る事が出来るのだが、
とんでもないスピードで弾いている。確かに、この曲をフルに活かすにはサイぐらいのスピードで弾かねばならないだろう。
第一変奏が速いからこそ、第二変奏以降との対比が際立つのだ。とはいえ、そんなテクニックは僕に無い。
ひとまず七割ぐらいのスピードで確実に弾けるように練習していく。
今日はサイの半分ぐらいのスピードで最後まで弾き、ラストの和音8連打だけは本来の速さで叩いて満足した(笑)
少し休憩して、Hさんに貰ったモーツァルトのロンド(フルートとピアノのためにランパルがアレンジしたもの)の楽譜を広げる。
まずはピアノで、それからフルートに持ち替えて最後まで通して吹く。フルートを吹くのは久しぶりだったので、高音が時折ぶれる。
何度かやっているとかなり落ち着いてきた。ここでまたピアノに変えて伴奏部分を弾く。さきほどよりテンポ感がかなりマシになった。
次にバイオリンでCoriolan序曲の1st部分を適当に弾く。
この曲には静と動の激烈な対比が描かれている。が、技術的には難しくないので、僕のような初心者が練習するにはもってこいだ。
50小節目までと52小節目以降の劇的な変化はいつ聴いてもゾクっとする。
102小節目以降や134小節目以降のテンポは指揮者によって解釈が大きく異なるが、僕は速いテンポの演奏が好きだ。
焦燥や不安に煽られているような感じがこの曲には相応しいと思う。ドキドキして進むからこそスフォルツァンドが効果的に聞こえる。
前のめりになるように走り抜け、時に心臓を掴まれるようなスフォルツァンド、そしてまた音量を落として駆けだす。
声を失ったかのような一瞬のゲネラルパウゼの後、叫ぶようなフォルティッシモ。最後は静かに、息を引き取るように終わる。
自分で弾いていると下手さ加減に呆れてくるが、楽器を離してスコアを見ていると本当に手に汗が滲んでくる。
どうやったらこんな曲が書けるのか。天才としか言いようがない。
片付けなど溜まっていた雑事をこなし、読書タイム。
加藤陽子『戦争を読む』(勁草書房、2007)を読了。立花隆の『僕はこんな本を読んできた』のジャンルを特化したような本だ。
細谷雄一の『大英帝国の外交官』を紹介するくだりで、
「・・・どれも珠玉。バカラのグラスを用意する。大きな氷塊を一つ入れ、とっておきのウィスキーを注ぎ、一二回半撹拌し、
ベッドへゴー。読書灯をつけ、一日一章ずつ読む。ああ至福、極楽。」
と書かれていたので、僕も同じ事をやろうと思ってCHIVAS REGAL12年を引っ張ってきた。
バカラのグラスなんて持っているはずもないので適当なタンブラーで代用。大きな氷塊も無いので普通の氷。
よく考えたらベッドも読書灯も我が家には無いので、布団を敷いて蛍光灯を一段暗くして本を広げる。
いささか怪しい状況である。文章化するなら、
「適当なタンブラーを用意する。100均で買った製氷器で作ったごくごく普通の氷を入れ、日常的に飲むウィスキーを注ぎ、
なぜか家にあるバースプーンで撹拌し、布団を敷く。蛍光灯の灯りを一段階落とし、わざわざ読みづらい中でガシガシ読む。
正直、布団で読む必要が感じられない。」
・・・あまりリッチな光景ではない。
まあそんなことはいい。読んでいて興味を惹かれたのは、「川奈提案」というものについて。川奈提案とは、
98年4月、橋本首相がエリツィン大統領に対して行った北方領土問題解決と平和条約締結に向けた秘密提案のことである。
この内容はいまだ機密扱いだそうで、大変気になった。プーチンが来日ついでにバラしてくれないかなあ。
面白かったのは「本はともだち」と題された第三章である。
それぞれの本屋の様子が目に浮かんでくるようで、本の紹介と一緒にスイスイ読ませて貰った。
この本に挙がっている坂野潤治『昭和史の決定的瞬間』は、本屋に並んでいるのを見るばかりで読んだ事は無かったので、
この機会にAmazonで注文した。合わせて金森先生に勧められたArendt ”The Human Conditon” も注文。
洋書なので相当の値段を覚悟していたが、意外に手に入れやすい価格で安心した。