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合宿にて。

 

UUUオーケストラの初回練習&合宿を終えました。

一日目、宿に到着すぐからひたすら分奏&合奏。自己紹介を兼ねたSound of Musicメドレー合奏にはじまり、

夜は自由参加で初見大会&記憶だけを頼りにした楽譜無しアンサンブルを朝3時すぎまで。アルルの女、カルメン、チャイ コフスキーの五番、新世界…

深夜だけでいったい何曲やったのか分かりません。

 

二日目も朝から合奏。

運命とプロコフィエフのピアノ協奏曲第三番を除いて、今回演奏する曲を通して演奏してみました。

初回練習かつ人数が揃っ ている練習であったため、とりあえず合わせてみることから初め、今回演奏する曲の構成や作り方の大枠を提示して共有して頂くことを二日間通じて心がけした。

今後のことを考えて、どこをどういうふうに練習すれば良いのか、どこがどういうイメージであるのかを重点的にお話しさせて頂いたつもりです。

 

思ったことを書き始めるとキリが無いので書きませんが、音楽-アンサンブルは「再現」ではなく「生成」であるということを改めて強く感じました。

指揮者と奏者がそれぞれのエネルギーを放出しながら、目に見えないアンテナを立てて触発しあう一回限りの営み。

弾き慣れているとかリハーサルをたくさん重ねたと か、そんな事実を超えたものとして大切なことがあって、緊張感と集中力を高めた状態で演奏したときの音は明らかに違います。

たとえば「運命」のような曲に はその変化が残酷なほど出てしまうし、指揮する僕は勿論のこと,奏者全員の精神が集まって行かないと音楽にならない。

そして当然ながら、奏者の精神を集められなかった責任もやはり指揮者の責任だと思うべきでしょう。

あそこでああ進めなければ良かった、と思い返せば後悔もあり、自らの精神力の未熟さを実感するばかりです。

「運命」は精神的に難しいんだよと師 が語っていた理由を肌で実感しました。

(そういう意味では、運命一楽章の初振り下ろしで響いた音は凄く良い音だったと思います。ホルンが素晴らしかっ た!!)

ともあれ、初回練習にしては充実しすぎるぐらい充実した二日間になったと思います。

ハードな二日間お疲れさまでした。変拍子の複雑なトリプティークやリズ ムの難しい「三つのジャポニスム」を一発で通すことが出来たのは、

皆さんが一生懸命練習して下さって、初合奏にも関わらずしっかりと棒について来て下さったおかげです。

また新しく素敵な奏者の方々に出会えたことも幸せでしたし、今まで一緒に演奏したことのあるメンバーと再び演奏出来ることも嬉しいことでした。

僕が指揮し始めた当時は高校一年生だった彼と、こうやって一緒に演奏できる日がやってこようとは!

 

渇いていなければならない

 

書かなければいけないものがあるときに限って、別のものが書けてしまったり、普段良く聞き取れない音が聞こえるようになるのはなぜだろう。

他のものを書きながら、聞きながら、書くべきものがふとした拍子に降りてくるのをひたすらに待つ。

珈琲を淹れて、夜中の町を闇雲に歩き、原稿用紙の升目を無視して意味のない言葉を書き連ね、懐かしい写真を見返す。

陽が登ったらおしまいだ。一端眠りにつくしかない。それを繰り返す。

 

身を切り刻むような時間。

欲しい言葉が振ってくるのは、いつもそのあとだ。それはただ美しい言葉ではなく、巧い文章でもない。

孤独の時間を経由しなければ書けない、何かしらの「強度」を持った言葉。

渇きから生まれる強さ。

 

 

 

 

 

夜明けの断章

 

夏の終わり、秋の始まり。

そういう時期の明け方に譜読みをしているのが好きだ。

真っ暗だった外は深い青へと変わり、青の様子が次第に薄く移ろってゆく。

一目見た限りでは音符の羅列でしかない「楽譜」が「音楽」に変わり、音符に込められた言葉の意味が次第に見えてくる。

それが正しいかどうかなんて僕には分からない。

けれども、何かが見えてくるまで、その瞬間の快楽が訪れるまで楽譜と向き合い続ける。

 

 

ドイツに留学している友人が更新したばかりのブログを読んでしばらく休憩。

彼女の文章を読むと、僕はこの国にいつまでいるのだろうと考えずにはいられない。

今から七年先、2020年の東京オリンピックのとき、僕はどこで、誰と何をしているのだろう。

七年前の僕は浪人生だった。十九歳だった頃の自分は、七年後の自分がこうして過ごしていることなんて予想もしなかった。

同様に今から七年後の自分、三十三歳になった自分を想像する事はやっぱり出来ない。

けれども七年前と決定的に違うのは、七年後も必ず関わっていたいと思うものを見つけたことだ。

 

指揮。この限りなき魅力に溢れた芸術に。

 

秋の気配を感じる三日

 

<9月3日>

今日は用事で武蔵野音大にお邪魔しました。武蔵野音大の知り合いは多いのに、校舎に潜入するのははじめて。

「のだめカンタービレ」のモデルになった大学として、見覚えのある場所が沢山ありました。

色々なオーケストラで出会って一緒に演奏して下さった事のある方たちがわざわざ会いに来て下さって嬉しかったし、

廊下で大好きな二人のトランぺッターにばったり会えたのも幸せでした。

聞けば、授業やレッスンの僅かな合間を縫って来て下さったとのこと…皆さん本当にありがとうございます。

 

解散してから、近くの知る人ぞ知る珈琲屋さんでチャイコフスキー五番の譜読みに集中。

カップを選ばせて下さったので、大ぶりのものを失礼して一時間半ほどゆっくりと。

店内にはシューマンとグリーグのピアノ協奏曲が流れていて、珈琲はもちろん、デザートに無料で頂ける珈琲ゼリーが絶品でした。

池袋でいつもお 世話になっていた珈琲茶房というカフェが閉店してしまってから落ち着ける場所が無かったのですが、ようやく巡り会えた気がします。

そのあと3日・4日とかけてチャイコフスキーの五番をレッスンで全楽章通して見て頂き、燃え尽きて眠りに落ちる日々。

二ヶ月ずっと取り組んだチャイコフスキー五番からは沢山の学びがありました。演奏出来る日がいつかやって来ますように…。

来週からは、月末のリハーサルに備えて、改めてベートーヴェンの五番をレッスンに持って行きます。

運命を振るのは一年ぶり。当たり前だけど、スコアの見え方は一年前と随分違います。この凝縮度をどこまで棒で表現出来るかな。

 

 

<9月5日>

京都の美術系出版社で編集者をしている友人が東京に来たので、美術系の知り合いを招いて我が家で突発的飲み会を開催しました。

一枚の絵の名前を挙げた時、そこにいる人全員に共通の一枚のイメージが浮かぶのはとても楽しいことです。

フランス文化史×ベルギー象徴主義×アメリカ現代美術×ロシア絵画×観相学…マネからドガへ、デュシャン、クノップフ、ヴルーベリ。

絵画から詩へ、音楽と文学へ。時にCDをかけながら、本棚に並んだ本を引き抜きながら、心地よい酔いと共に語る時間でした。

それは容易ではないけれど、「徹底した史料批判の精神と飛翔する想像力の矛盾なき総合」を目指してゆっくりと歩いてきたい。

 

 

<9月6日>

とある書評の原稿依頼を頂き、嬉しさに飛び上がりました。

まだ修士課程の僕には身に余るほどのお話。日頃の恩返しが出来るよう、精一杯書かせて頂きます。

そして音楽の方でも嬉しいお話…コマバ・メモリアル・チェロオーケストラの2013年度公演の日程と場所が確定しました!

 

日時:2013年11月30日(土)16時30分開演

於:丸ノ内KITTE内、IMT(インターメディアテク)

演奏:コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ

指揮:木許裕介

 

今年もまた、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ一番」をメインプログラムに据えて、気心の知れたチェリストたちと演奏します。

昨年までは8人〜9人のチェリストたちと演奏していましたが、今年はいよいよ、12人のチェリストたちとこの曲を演奏する事になりました。

12人のチェリストの予定を合わせるのはある意味で演奏以上にヴィルトゥオーソな作業になるため、相当に大変なものがあります。

しかしそれを全く苦に感じないのは、「好きだから」ということに尽きるのでしょう。

まだリハーサルもはじまっていませんが、今年もきっと良いコンサートになると思います。

 

この「ブラジル風バッハ一番」を演奏して三年目になります。

師にとっても僕にとってもいちばん大切な曲の一つを毎年一回演奏できるというのは本当に幸せなことで、

自分にとってのバロメーターのような曲だと言えるかもしれません。最初にこの曲をレッスンで見て頂いた時、師がぽつりと

「この曲はとても自由な曲なんだ…一回一回新しい。この魅力に惹かれて僕は何度も演奏した。君もきっと、何度もやりたくなる。」

と語った言葉の通り、この曲の魅力に僕はすっかり取り憑かれてしまったのでした。

(余談ですが、昨年のチェロ・オーケストラの公演動画を見直していて、アンコールのあとに僕の指導教官が後方カメラの映像に映り込んでいらっしゃったことに気付きました。

足をお運び下さったのは知っていたけれど、こうやって改めてお姿を拝見すると凄く嬉しくて、学問上でも素敵な師匠に恵まれたなあと感謝するばかりです。)

読み返すたびに・指揮するたびに得る新しい発見を大切にしながら、焦らずじっくりと、一生かけて演奏していきたいなと思っています。

 

 

江古田の名店にてチャイコフスキー五番と格闘。