March 2024
M T W T F S S
« May    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

探求の時期

 

Certaines recherches, dont l’exigence est illimitée, isolent celui qui s’y plonge. Cet isolement peut être imperceptible : mais un homme qui s’approfondit a beau voir des hommes, causer, disputer avec eux, il réserve ce qu’il croit de son essence et ne livre que ce qu’il sent inutile à son grand dessin. Une part de son [...]

日刊マニラ新聞社さま「ナビマニラ」に掲載頂きました。

 

2015年の2月にマニラ交響楽団&ワールドシップオーケストラ&トンド・チェンバーオーケストラとの演奏について、以下のページに掲載頂いておりました。

ツアー最終日のRizal Parkでの演奏になります。素敵な写真と共にご紹介頂いておりますので、どうぞご覧下さいませ。

また9月にここで指揮させて頂くのが楽しみです。

 

http://navimanila.com/…/japane…/1337-wso-band-in-luneta.html

 

出発の儀式

 

 

あけましておめでとうございます。

大晦日に一年のまとめをしようかと思ったものの、譜読みに集中したりバタバタ片付けをしたりしている間に2015年になってしまいました。

昨年は海外含め26回のコンサートを指揮させて頂き、修士論文を提出するというハードな一年でしたが、体調を崩さず過ごせたことに感謝しています。

 

しかし何より大きかったのは12月に師匠を亡くしたこと。悲しみは未だ消えませんが、それを直視しなければ僕の2015年は始まらないと思えて、

元旦の朝には師匠から頂いた日本酒(木許にはこれだ、と旅行の際に選んできて下さったもので、飲みきるのが惜しくて少しだけ残してありました)を

コートのポケット に入れて新幹線の始発に飛び乗り、早朝から湯沢に登ってきました。

 

本当は山頂で朝陽を見ながらと思っていたのですが、現地は大雪だったため、ひとまずガーラから石打へ向けてしばらく滑走。

午後になると少し晴れ間が見えた ので、眼前に広がる魚沼平野を見下ろしながら最後の一口を頂きました。涙が出るほど美味しかった。

そして、ベートーヴェンの「田園」を教わったときの「君は田園の景色をまだ知らないねえ」と笑うあの声が聞こえたような気がして、しばし呆然。

時間だけが容赦なく流れて行く….。
 
 
Je partirai! /Steamer balançant mâture, /Lève l’ancre pour une exotique nature!
 
(出で立とう!備わる帆柱の総てを揺振っている蒸気船よ、異国の自然を目指して、いまこそ錨を掲げるのだ!)
 
 

——マラルメの「海の微風」を思い返し、ひとつの決意を固めてから、一気に麓まで滑り降りて帰りの新幹線に。

今年は出発の一年になりそうです。2015年もどうぞよろしくお願い致します。
 
 

指揮を教えるということ

 

昨夜が2014年の最後のレッスンだった。

師匠から託され、棒の握り方からスタートして基礎を教えさせて頂いていた門下の後輩。

僕にとって人生初めて指揮のレッスンをさせて頂いたお二人がついに、二年間をかけて指揮法教程練習題最後の「美しく青きドナウ」まで終えたのだ。

師匠から「君が教えろ」と最初に言われたときは、僕に出来るわけがないし、そんなことが許されるとも思えなかった。

門下には僕よりももっと経験の長い先輩方が沢山いる。ましてやその言葉を頂いたとき、僕はちょうどスランプに入って苦しんでいた頃だった。

なぜ師匠は今の僕にこの重責を与えて下さったのだろうか。一回のレッスンを終えるたびにそのことを考え続けた。

自分がまだ何にも分かっていないのに、それでも教える席に座るということはとても難しくて、

僕が教えているのを後ろから見ている師匠に何度も何度も「そうやって教えるんじゃない!」と怒られた。

褒めて頂くことは滅多に無かったし、「教え方が良かったんだな」という言葉を正面から頂いたのは吹奏楽の曲をレッスンしたあとの一回だけだった。

自分が振ることも難しいし、指揮を、それも<基礎>を教えるということはその何百倍も難しかった。

 

 

今になって分かる。

教えるという機会を頂き、教え方そのものを師匠に見て頂いた経験が、どれほど希有なことであったか。

僕なりに師から学んだ体系はある。不十分ながら頭では理解しているつもりだし、それをやってみせろと言われれば拙くとも少しばかりは見せることができる。

しかし教えるというのは、ただそれだけではない。自分が指揮するとき以上に感じ、原因の根本を分析し、相手の思考と現況を読み込み、追いかけながらも遥かに先に行くことなのだ。

今日は何か辛い事があったのかな。体調が悪いのかな。そういうことまで自然と見えてくる。そこまで見えなければ真に適切な言葉をかけることは出来ない。

物凄い集中力と懐の深さが要求される。自分の未熟さにひたすら気付かされると共に、教える中で気付かせて頂いた事は限りない。

 

 

おそらくは、師があのような人間でいられたのは、若い頃から教えることに関わり続けていたからだ。

教えるということの苦しさを相談させて頂いたとき、病床で師がぽつりと呟かれた言葉が忘れられない。

「僕だって若いときから今まで、どうやって教えたらいいか悩み続けているさ。そして、悩めるということは幸せなことなんだよ…。」

 

その師は、自分が教え始めた年齢より遥かに若い僕にその仕事を託して下さった。それが平坦な道のりであるわけはない。

見本として振ってみせることに必要な勇気と確信。当然ながら、長い苦しみと勉強のはじまりとなることを覚悟する。

僕はこれからもオーケストラや吹奏楽を指揮するだろう。そして、これからも教えさせて頂くということを通じて勉強して行くだろう。

先生からお預かりした大切なお弟子さんを一つの区切りまで導くという役目をひとまず果たしました。教えるという機会を頂いたことに今は心から感謝しています。

至らないところばかりだったかもしれないけれど、今の僕に出来る限りの全力を毎回のレッスンで尽くしたし、良い信頼関係が築けたと思っています。

師匠にそう報告したい。そして、「そんなのじゃあ全然だめだよ!」とまたあの元気なお声で僕を天国から叱り飛ばしてほしい。

 

 

 

 

 

別れ

ついにこの時が来てしまった、という思いで呆然とする。

それはとても天気の良い、澄んだ冬の朝だった。修士論文を無事に提出し終えて、挨拶しに伺おうと思っていたところだった。

どの言葉も十分ではない。ストラヴィンスキーを聞いて頂き、モーツァルトで叱られ、ヴィラ=ロボスだけを褒めて頂いてから三年後だった。

この人のためなら自分の寿命を喜んで差し出す。そう思えたはじめての人だった。間違いなく僕の人生はここで変わった。

穏やかな最期であったことを心から願う。

過去の再読

 

休学中にここに書いた文章を読み返す。三年前だ。

あのときのような真っ直ぐな決意を持った文章を書くことができるか?

あのときの溢れんばかりの宣言に応える強度を今の自分は持っているか?

あのときから周りの環境も、自分の年齢も随分と変わってしまった。

三年のうちに、後戻りの出来ないところまで来てしまったことを実感する。

 

けれども。一瞬の躊躇を挟みつつ、僕は三年前に答えるだろう。

これが本望だ。

 
 

<セブ滞在記 10日目>さよならセブ、さらばマニラ。

コンサートツアーを終えてセブからマニラへ移動。

マニラで皆と解散し、マニラ空港で夜通し論文を書いてエクストリーム一泊したあと、成田空港に向かいます。

日本へ向かう空の上、Gaano ko ikaw kamahalやエルガーが頭の中で流れ出し、何だかとても感傷的になってしまいました…。

 

さよならセブ、さらばマニラ。

また近いうちに訪れることが出来ますように。

 

I fly from Manila to Japan while singing Gaano ko ikaw kamahal. Good bye CEBU, MANILA.  I want to go back again, and hope to work with Manila Symphony Orchestra and Cebu Philharmonic Orchestra, of course Seven Spirit Kids.

Thanks for everything from the bottom of my heart.

最後の威風堂々

セブの空から。

マニラの空から。

<セブ滞在記 9日目>最後のコンサート

 

最後のコンサートはE-mallのステージにて。燕尾服に袖を通し、全身全霊を注いで演奏しました。

まずはUUU&CPO合同で金管十重奏 (のはずが打楽器やファゴットの方々にも参加して頂いて、なんと十五重奏になりました!)をロビーコンサートで指揮して、両国国歌で厳かに幕を開けます。 大好きになったスターパズルマーチ、アクションまで練りに練り込んだ楽器紹介「さんぽ」、この数ヶ月ずっと勉強し続けたヴァイオリン協奏曲Rewire と、始まるとあっという間に曲が進んで行きます。

最も忘れ難い瞬間のひとつは現地の音楽教室の子ども達と共演したFrozen Medleyで訪れました。半年前に訪れた時にはドレミを吹くのが精一杯だった現地の音楽教室の子どもたちは今や、オーケストラの中に入って一緒に一つの音楽を演奏するまでになったのです。それは本当に本当に「奇跡的な」光景で、チューニングを終えて指揮台に立ち、ステージに並んで楽器を構えたUUUメンバーと子どもたちと目を合わせたとき、その幸せに涙が溢れてくるのを止めることが出来ませんでした。Frozen Medleyを演奏し終わったときの彼・彼女らの誇らしげな表情を僕は一生忘れないでしょう。

 

それからもう一つ。エルガー「威風堂々」の指揮者体験コーナーに挑戦して見事な指揮を披露してくれた、Seven Spirit音楽教室に通う子どもがくれた言葉です。

「昨年2月にあなたが<運命>を指揮するのを見て、それから指揮に憧れた。フェルマータで伸びた最後の音を切るあの姿を僕もやってみたくて、あれから半年間練習したんだ。夢が叶って僕は本当に嬉しい!」

師匠、この言葉を聞いて頂けましたか。あのとき僕は、心の中でそう呟きました。なぜならば僕は、師匠のその姿に憧れて指揮を続けてきたからです。憧れたものを少しでも自分が体現することが出来て、その魅力を国境や年齢を越えて他者に伝えることが出来た。こんなに嬉しい事はありません…。

 

ヴォーカリストの氷置さんとの最後の共演となるLet It Go,そして愛に溢れたGaano ko ikaw kamahalを終えて握手したときに言葉無くして伝わった思いも、ヴァイオリニスト白小路さんとの最後のグラズノフで交わした別れも、どれもどれも肌を 震わせるものでした。野人から威風堂々に至るまで、目が合っては時に微笑み、確信に満ちて演奏する奏者の皆さんを見ていると、このまま時間が止まれば良い のにという思いに何度も駆られました。

振り返ってみれば殆ど一ヶ月近くになる演奏旅行。成田からマニラへ出発したとき、セブの打ち上げでマイクを渡される時のことを想像して、その瞬間までは走 り抜こうと目標を確認したことを思い出します。ほとんど毎日棒を振り続け、様々なアクシデントも経験した一ヶ月でしたが、体調も気持ちも常に万全な状態の まま、目標とした瞬間を迎えることが出来たことに安堵しています。

 

打ち上げで話させて頂いたConvivialite、共に生き・共に食卓を囲んで笑うような精神を失わずに、音楽に関わることの出来る喜びと厳しさと幸せを身一杯に受け止めた日々でした。合計で200人近くの奏者の方々と出会ってステージを共有し、5000人以上の方々に聴いて頂いたのだということを思うと夢のようで、まだまだ纏めきれない事が沢山あるのですが、今はひとまず無事に帰国したいと思います。一緒に演奏して下さった方々、支えて下さった運営の皆さま、本当にありがとうございました。

 

 

ロビーコンサート。なんと15重奏!

君が代

Gaano ko ikaw kamahal (How much I love you)

最後のグラズノフ

指揮者体験コーナー。

フェルマータ。

全ての終わりに。

<セブ滞在記 7日目・8日目>半年ぶりのLAKWATSA、奇跡の再会。

ラスト2回となったコンサートの初日は、今年2月にも演奏したLAKWATSAにて、UUU&Cebu Philharmonic Orchestraによる合同コンサート。終演後、「私のことを覚えている?」とある女の子が駆け寄って来てくれました。目を見るなり感動して叫んでしまったのですが、なんとその女性は、2月にLAKWATSAで演奏したとき、指揮者体験コーナーで指揮者を志願してくれた女性だったのです!

「また同じ場所で音楽を聴けて良かった。あれから私は音楽を専門にすることを決めて日々を過ごしていたのだけれども、今日またあなたが指揮しているのを聴いて、その決意を新たにした。音楽の楽しさを教えてくれてありがとう。」そんな言葉を頂いて涙腺が崩壊しました。我々の演奏がどれぐらい響いたのか実際のところは分かりませんが、少なくともこの一人の女性の心には継続して届いていたのでしょう…。

 

残すところあと一日、一回の演奏のみ。

明日が終われば倒れても大丈夫。全てを注いで演奏します。

Lakwatsa

Lakwatsaにて、RewireRewire 2

Conducted by Yusuke Kimoto

<セブ滞在記 5日目・6日目>Rewireのセブ初演、小学校での演奏と現地音楽教室での合奏。

 

午前中にワークショップを行ったのち、Sacred Heart Schoolにて第2回目となる演奏会を行いました。場所のことを考えて現代曲コンサートを開始するという、かなり攻めたプログラムを作って みたのですが、これがとてもハマったように思います。久石譲の「オーケストラストーリーズ・さんぽ」を用いた楽器紹介も大成功でしたし、突然指揮することになった 校歌Lux Oriensも歌詞を調べておいた成果あって一安心。個人的には、重心を低くとることを前日からずっと意識し続けて朝練を重ねていたので、それが音楽に反映されてきたことも嬉しいことでした。

 

何よりも、新作のヴァイオリ ン協奏曲Rewireの演奏を、同席してくださった作曲者の薮田さんに御満足頂けたということで、初演を指揮させて頂いたものとして本当に嬉しい限りです。作曲者の薮田さんから頂いたメッセージをここに引用させて頂きます。

 

今夏のUUUオーケストラプロジェクトはマニラからセブに移動しました。
本日はSacred Heart Schoolでの演奏会でRewireを演奏して頂きました。セブへ移動後、ソリストの白小路紗季さんは毎日7,8時間Rewireの練習に取り組んでく ださり、また指揮者の木許さんがオーケストラのメンバー方々と共に精神誠意取り組んでくだり素晴らしい演奏をしてだくださりました。
また今回の演奏にあたり、代表の野口さんのご配慮で今回の演奏機会、また直前のRewireのリハーサルに多くの時間を作ってくださりありがとうございました。(作曲家:薮田翔一さん)

 

日本人の現代曲を積極的にプログラミングに取り込んでいった師匠の弟子として、その精神を僕も引き継ぎ、たくさんの現代曲を演奏していきたいと考えています。初演を任せて頂けるというのはとても幸せなこと。作曲者の方にとって御新曲というのは子どものように大切な存在でしょう。大切な大切な子どもを安心して委ねて頂ける指揮者であれるよう、これからも精進する所存です。

 

夜にはCPOとのリハーサルを経て、翌日。

第3回目の演奏会は、セブ中心から少し離れたところにあるElementary Schoolでの演奏会です。昨夜のリハーサル会場ほどではないにせよ、相当な暑さと湿気のもとでの演奏となりましたが、それでもなお、奏者の皆さんと沢山目が合う時間となり、ひとつの音楽に向かって纏まり始めたことを実感しています。夜にはSeven Spirit音楽教室で子どもたちと一緒に合奏を。Kuya Yusuke!!と叫びながらわああーっと駆け寄ってくる子どもたちの真っ直ぐなパワーと、一つ一つの楽器を見つめるキラキラした眼差しに心を揺さぶられた一日でした。

 

残るはあと2日。マニラから数えれば一ヶ月近くになる演奏旅行ももうすぐ終わってしまうのかと思うと、言葉にしがたい気持ちに襲われます。イタリアンレストランで即興演奏を楽しむ奏者の皆さんを見ながら、日々を一緒に出来た幸せを思いました。このメンバーと演奏できてよかった。

 

Shoichi Yabuta: Violin Concerto "Rewire"

Sacred Heart

小学校にて。

セブ・フィルハーモニックオーケストラとの合同リハーサルのあとに。

セブンスピリット音楽教室に、昨年2月の写真が貼ってありました。