June 2009
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『僕のピアノコンチェルト』(原題:Vitus フレディ・M・ムーラー監督 2006)を観た。

 

 『僕のピアノコンチェルト』を観た。予想していたようなシナリオとはまったく違う、良い意味で予想を裏切られた作品。

天才であるがゆえの苦悩、そして音楽を無理やり押し付けようとする親が前半では描かれる。

後半は捻りの効いた展開。恋愛というテーマも絡んでくる。

「女性は年上が理想だ」と説明する時のヴィトスのなんとロジカルなことか。天才の中に子供っぽさが見えるショットで印象的だった。

 

「決心がつかないときは大事なものを手放してみろ」という祖父の言葉、

「少し時間が必要ではないですか。Zeit,zeit,zeit,zeit…」という先生の言葉が最後で効いてくる。

その描き方(とりわけ、ラスト直前の着地シーン)には、不思議な爽快さがある。

ラストのシーンについて少し。

一瞬指揮者がティレーマンに見えた。まさかと思って調べてみると、これはテオ・ゲオルギューのピアノ、ハワード・グリフィス

という指揮者で、チューリッヒ室内管の実演だったそうだ。二つ目の和音がずれていたり、妙にリアルに感じる演奏なわけだ。

リアル、に関して言えば、イザベラがあのタイミングで入ってくるのは酷い。実際のコンサートであんなことしたら袋叩きにされる(笑)

音楽は沢山のクラシックが使われているが、テーマになっているシューマンのピアノ協奏曲というセレクトは素晴らしい。

ロマンチシズムに溢れたこの曲は、大空に思いを馳せるこのシナリオと合っている。まるであのおじいちゃんの遺志のようだ。

 

 ついでに。シューマンのPコンはリパッティ-カラヤンの演奏と、ミケランジェリ‐チェリビダッケの演奏を愛聴している。

前者は有名な演奏だが、後者は意外と知られていない。ミケランジェリとチェリビダッケという、個性最強レベルの演奏家二人の

タッグは、どの演奏も印象に残る強烈な美しさがあり、忘れる事が出来ない名演が繰り広げられている。

このタッグ、ラヴェルのコンチェルトなんかもお薦めです。ラヴェルはyoutubeで動画が見れます。