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『カフーを待ちわびて』(原田マハ 宝島社,2006)

 

『カフーを待ちわびて』(原田マハ 宝島社,2006)を読了。

 第一回日本ラブストーリー大賞の大賞受賞作で、作者は作家 原田宗典の妹である。

原田宗典は、僕の人生にとって無くてはならない作家のひとりだ。

小学校時代、友人にこの作家のエッセイを紹介されて以来、エッセイ・小説問わずすべて読んできた。

その軽妙な語りと、ちょっと不気味で時に暖かい小説に惹かれてきた。

その妹はどんな文章を書くのだろうか。本を開く前からとても気になって、一時間ほどで一気に読みとおした。

 

 というわけで以下感想。

何と言っても映像的な描写が上手い。全体的に映像化しやすそうな小説で、映画化される運びになったのも当然だと思う。

同時に、これは場所の設定が全ての小説だ。この場所で無くては成立しない。

展開は「おいおい」と首を捻りたくなるところもあるが、ベタベタな構成に陥らないところは好感がもてる。

文章はそれほど上手いとは思わない。出だしのところ、登場人物や設定の紹介を兼ねて話が進んでいくあたりは

説明している感じが前に出すぎていて少し違和感を覚える。

コナンで事件が起きた直後、登場人物たちが自分のプロフィールを話すときのような説明っぽさがどことなくある。

この辺りは小説としてまだ作者が駆けだしであることを伺わせる。

 

 読み終わってみるとタイトルの意味がやや分からなくなったりしたが、とにかくこのタイトルのインパクトは大きい。

サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』に内容が少し似るところがあるから、これにかかったタイトルなのかもしれない。

表紙の写真は空気感を良く捉えており大変美しい。映像感に溢れるこの小説と良い相性である。

あまり読者の目にとまっていないと思うが、注目すべきは表紙を外したあとに出てくる装丁だ。(単行本版)

表紙とまったく異なる印象の写真が全面に使われており、どこかゾッとする光景が広がっている。

単行本をお持ちの方は表紙を外して見て下さい。

 

 話が装丁の方に行ってしまったが、さらっと楽しめて幸せな気分になれる、そこそこ面白い小説だったと思う。

この小説、映画化だけでなく、いずれドラマ化までされそうな気がする。