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<セブ滞在記 開始まで>海の微風

 

マニラでの全演奏会終了後、セブ島に移動。セブでのコンサートが始まるまでのしばらくの間、少し身体を休めていました。

セブに到着して懐かしのGrand Tierraに宿を移してからは、絶品の中華料理に牛カルパッチョにラザニアと安価で美味しいものを堪能。現地の音楽教室でクラリネットとソプラノサックスに挑戦してみた り、遠出した日にはモアラボアラの海や滝でリフレッシュしたり…。早朝には譜読み、夜には論文執筆と、充実して自由な毎日を過ごしました。

 

ともあれ休息の日々も終わり。いよいよ明日からセブにメンバーが集合して、リハーサルとコンサートの日々が始まります。マニラと曲目は殆ど同じだけれど も、集まった人たちと新たに作っていく気持ちを忘れないようにしたい。再現ではなく「生成」を、忘れ難い瞬間がまた沢山訪れますように!

 

マラルメのBrise Marineへのオマージュ。海へ行くたびに口ずさむ。

<マニラ滞在記9日目・10日目>マニラ交響楽団との合同コンサート

 

マニラ9日目は午前にBellvueホテルのプールで泳いでリフレッシュしたのち、午後はマニラ交響楽団との第二回合同リハーサルでした。夜はアジア最大級のモール、Mall of Asiaにてオイスター料理を堪能。

 

そしていよいよ最終日となるマニラ10日目。UUU&マニラ交響楽団合同で、歴史あるリザール・パークのオープン・オーディトリアムでの演奏会で す。開演の少し前になって豪雨に見舞われるというアクシデントもありましたが、演奏がはじまるころにはちょうど雨が上がりました。

当日のプログラムは以下になります。

1.両国国歌
2.小長谷宗一:「スターパズル・マーチ」
3.楽器紹介&口笛を吹いて働こう&パッヘルベルのカノン
4.薮田翔一:「Rewire」(ヴァイオリン:白小路紗季/世界初演)
5.Let It Go(ヴォーカル:氷置晋/Cups:Child Hope Asiaの子どもたち)
6.「Gaano ko ikaw kamahal」(ヴォーカル:氷置晋)
7.渡邉浦人:交響組曲「 野人」より第三楽章「踊り」
8.グラズノフ:「ヴァイオリン協奏曲」(ヴァイオリン:白小路紗季)
9.エルガー:「威風堂々第一番」(合唱:マニラグリークラブ&セントポール大学合唱団)
10.中川真文:Music Unites The World(UUUテーマソング)

ベルリンフィルのヴァルトビューネコンサートを観て以来、野外で大編成で演奏することに憧れ続けていたこともあり、指揮台に立つたび、喜びと感謝を噛み締めて棒を取っていました。とりわけ、照明に彩られたステージに歩いていって 「君が代」を振り始めたときの感慨は言葉にし難いものがありました。終演後にマニラ交響楽団の方が、「最初見たときは若い指揮者だなと思ったけれども、コンサートが終わった今、俺は確信している。お前はGreat Conductorだ!」と声をかけて下さったことも本当に嬉しかった。未熟な身ではあるけれども、師が教えて下さった指揮は、あるいは音楽は、間違いなく国境や言葉の壁を越えるものだった。

 

気迫のこもった「野人」の響きが、Let it go&Cupsで共演した子供たちの誇らしげな表情が、共演した奏者の一人一人と音楽の中で目を合わせて笑えたあの幸せが、一夜明けた今になって 鮮烈に蘇ってきます。Gaano ko ikaw kamahal(How much I love you)を口ずさんで、悲しくもないのに視界が滲んでしまう。夢のような時間だったけれど、あれは確かに現実のものだった…。Let it goの動画のリンクを以下に掲載しておきます。https://www.youtube.com/watch?v=iW2c_6bFwJU

終わってしまったことに寂しい気持ちもしますが、しかし同時に、寂しさを遥かに上回る充実感に満たされています。マニラでの日々を支えて下さった方々、一緒に演奏して下さった皆さん、本当にありがとうございました。忘れ難い時間を共に出来たとすれば、これ以上の幸せはありません。

 

Let It Go & Cups with CHAPS Student

Glazunov.

小学校時代の友人にして大好きなヴァイオリニスト、白小路紗季さんとグラズノフのヴァイオリン協奏曲。こんな日がやってくるとは想像もしませんでした。

合唱入りの威風堂々。150人近くのオーケストラとなりました。

<マニラ滞在記7日目・8日目>三公演と世界初演

 

マニラ滞在七日目は一日二回のコンサート。午前中にはUniversity Perpetual Help にて、夜にはBellvueホテルのラウンジで演奏させて頂きました。

午前中は僕の大好きな「囲み形式」でステージをセッティング。会場との一体感が生まれたコンサートになったと思います。夜のコンサートではフォーマルの衣装にて、薮田翔一さん作曲のヴァイオリン協奏曲Rewireを世界初演させて頂きました。Rewireには途中でゾクゾクするぐらい神聖なところがあって、振るたびに何とも言えない気分を味わいます。二公演連続で非常に集中したこともあって夜はぐったり。サン・ミゲルも飲み過ぎてそろそろ飽きてきた感が否めません…。(この時点で25本に到達していました笑)

滞在八日目はスタディツアーのちサンホセ・ホスピスにて演奏。途中から物凄い湿気と共に雨が降り始め、コンディションとしてはあまり良いものではありませんでしたが、「また来てほしい」というお言葉を頂いて少し安心しました。残るはあと二公演。終わるのが寂しい、と部屋に戻るたび考えてしまうようになりました。

University of Perpetual Helpにて、スターパズルマーチ。

UUUのテーマソング、Music Unites The Worldをアンコールとして演奏。タイトル通り、音楽で繋がることが出来た瞬間でした。

Bellvue Hotelにて、Rewireの世界初演。

<マニラ滞在記5日目・6日目>マニラ交響楽団とのリハーサル、Let it goの大合唱

 

滞在5日目はCupsを用いたワークショップのあと、夜にはマニラ交響楽団との合同リハーサル。突然の豪雨に見舞われたりと大変でしたが、無事に終 えることが出来ました。マニラ交響楽団の方々はみなフレンドリーかつプロフェッショナルでいらっしゃいました。響きに震えるような瞬間が何度も…。

 

滞在6日目はいよいよ本格的なコンサート。3000人近くの子供たちの前で全力で演奏してきました。スターパズルマーチに始まりグラズノフのヴァイオリン協奏 曲、Let it goの大合唱…どれも忘れ難く、まだあの幸せを言葉にすることが出来ません。同時に改良すべき点も見えて来ているので、決して自己満足にならないよう 冷静に振り返りながら、どんどんブラッシュアップしていきたいと思います。

 

University Perpetual Helpにて。

Tejero Elementary SchoolUniversity of Perpetual Helpにて。

<マニラ滞在記3日目・4日目>リハーサルと「野武士会」での演奏

 

今日から現地でのリハーサルがはじまりました。会場のUPHは不思議な空間で、まだまだ音響に慣れないところもありますが、きっと回を重ねるたびに自然と纏まって行くと信じて、要所を押さえつつ、大きく構えて流れを呼び込みたいと思います。どんな環境であっても絶対に動揺しない、そういう精神の強さが指揮者にとって大切であることを昨年2月のセブ島でのコンサートツアーから教わりました。

 

夜には今回のツアーのファーストステージ。マニラ在住の日本人たちが集う「野武士会」という集まりで演奏させて頂きました。クラブフロアのような環境で、 譜面はほとんど見えず、風で楽譜が飛ばされそうになることもしばしばなステージでしたが、2月にも何度もそういうステージを経験させて頂いたおかげで全く焦ることなく、逆に楽しむことが出来ました。参加されていた他のミュージシャンの方々とも交流させて頂き、ちょっと奇跡的な出会いもあったりして、一発目から非常に印象深いステージになりました。

 

4日目となる今日はひたすらリハーサル。グラズノフのヴァイオリン協奏曲や「カップス」と呼ばれるアクティビティなど、集中して・そして楽しく取り組んでいきます。

 

野武士会にて、スターパズルマーチ

リハーサル@UPH

<マニラ滞在記その1>宮城からマニラへ

 

アンサンブル・コモドとの宮城県での三日間のコンサート(8月18,19,20日)を終えて一日だけ休憩したのち、8月22日〜9月1日までマニラでUUUオーケスト ラ&マニラ交響楽団を、9月6日〜15日までセブでUUUオーケストラ&セブ・フィルハーモニックオーケストラを指揮させて頂いていました。

クラシックはもちろん、世界初演のヴァイオリン協奏曲や日本の現代曲、フィリピンの曲、吹奏楽、ポップスと盛り沢山のプログラムで中々ハードな日々だったのですが、体調も崩さず無事に帰国することが出来ましたので、メモ程度ではありますが、現地で書いていた滞在記をアップして行きます。

 

 

<マニラ滞在記1日目・2日目>

マニラに到着したのは24時前。飛行機に大きなトラブルもなく、無事にホテルへ到着することが出来ました。ぐっすり寝て翌日。コンサートツアーが始まる一日前にマニラ入りしたため、今日は一日オフとなります。朝からホテル周りを把握するため散歩したり、部屋に篭って論文執筆と譜読みにひたすら集中。噂通りマニラは快晴と豪雨を短時間に繰り返す天候ですが、ホテルが高層階ということもあって、夕方には夕暮れの素晴らしい景色が窓の外に広がります。夜には皆さんとモールのフィリピン料理屋に行ってみて、何ともいえないお味とルックスに圧倒されて帰ってきました(笑)

というわけで現在は、明日からの日々に備えるべく部屋でグラズノフのヴァイオリン協奏曲を流しながら、サン・ミゲル(現地のビール)でルームメイトと乾杯しています。水を飲むと危険だということを承知しているので、現地ではサン・ミゲルを水の変わりに飲む予定。一ヶ月弱のフィリピン滞在が終わるまでで何ミゲルになるかカウントしておこうと思います。

 

写真はホテルの部屋と、マニラツアー最終日の演奏場所であるRizal Parkのコンサート掲示。既に案内が出ているよ、と写真を頂きました。

宿泊先(B-Hotel)にて。夕陽の時間になると景色が綺麗でした。

Rizal Park

 

アンサンブル・コモドの東北コンサート2014

 

8月19,20,21日と、アンサンブル・コモドの東北コンサートを指揮させて頂きました。

アンサンブル・コモドからお声がけ頂いたのは、2012年の夏、はじめて東北でコンサートを行うという時でした。

それ以来毎年夏になると宮城県を回って指揮させて頂いているのですが、今年でもう三年目となります。

震災の傷跡が癒えたところ、まだまだ変わらないままでいるところ、三公演させて頂くうちに様々な光景を目にしましたが、何より今回僕の印象に残ったのは、

毎年演奏させて頂いている老人ホームで出会った人たちに流れた「時間」の痕跡です。

 

はじめてここで演奏させて頂いたのも三年前。そのとき頂いた言葉をずっと考えていました。「楽しい音楽をありがとう。来年は楽しい音楽と一緒に、美しい音楽も聴きたいな」

美しさとは何でしょうか。それは一つだけに決まるものではありません。その場、その瞬間に最も相応しい美しさがあって、それこそが心を揺らすものとなり得るはずです。

この場所で最も相応しい美しさを持った音楽とは何だろうか。そのことを僕は三年間ずっと考え・探し続けて、ようやく今年見出したのです。

それはヴォーン=ウィリアムズの賛美歌(平和と愛を謳う歌詞が宿っています)を弦楽合奏にアレンジしたもので、Rhosymedreという前奏曲でした。

全身全霊を込めて演奏して振り返ったあと、聞いて下さった皆様が涙を流していらっしゃった光景に出会えて、心から良かったと思えました。

 

終演後、「また来年も待っている!」と毎年元気に挨拶して下さっていた施設代表のお爺さん。

何よりも今年、僕の頭から離れないのは、このお爺さんの言葉だったかもしれません。

またいつものように元気に挨拶をされたあと、「これで天国への良い土産が出来た。でも、こんなに素敵な演奏を聞いてしまうと、現世というのはやっぱり良いなあとも思うのです」と…。

そこに込められた想いと過ぎた時間を思い、溢れてくる涙を抑えることが出来ませんでした。

 

今年は演奏者の我々にとっても特別で、はじめてこの団体に関わったときに二年生だった主要メンバーが四年生となって卒業していく最後の年でもありました。

みんな頼もしくなったな…。そんなことを考えながら、そして、三年前に見た海に背中を向けて咲く向日葵のことを思いながら、アンコールのYou Raise Me Upを指揮しました。

またここで演奏できることを、そしてまた、あの方々に聞いて頂けることを願って止みません。

 

<2014年度アンサンブル・コモド東北コンサート プログラム>

ディズニー・サウンドトラック(中川真文編曲)
「スター・ウォーズ」組曲より「序曲」
「パイレーツ・オブ・カリビアン」メドレー
日本民謡「さくらさくら」
アンコール:ヴォーン・ウィリアムズ「オルガンのための三つの前奏曲より、Rhosymedre」(弦楽合奏編曲)
アンコール:You raise me up

 

石巻のイオンショッピングモールにて。

アンサンブル・コモド東北コンサート

 

 

 

 

台風前のサーフィンとロシア総領事館でのコンサート

 

全てここ数日の事であるのが嘘のようですが、リハーサルの合間を縫って友人たちとサーフィンを堪能したのち、大阪のロシア総領事館で指揮させて頂きました。

台風が近づいていたこともあって海はヘッドオーバーの波がセットで次々に押し寄せるコンディション。サイズもさることながら、台風のウネリは波自体のパワーが全く違います。自然のエネルギーは本当にすごい。僕にとっては無くてはならない時間を堪能し、体調と精神を整えました。

翌日、ロシア総領事館でショスタコーヴィチの映画音楽「馬あぶ」より抜粋、それからプロコフィエフの「ピーターと狼」を人形浄瑠璃文楽義太夫の語りで、ア ンコールには「さくらさくら」を演奏しました。付け焼き刃で覚えたロシア語の初会話相手が在日ロシア総領事というのは申し訳無さ過ぎる展開でしたが、幸せ なことに総領事や日露サロン関係者の皆様からご好評を頂き、またこの場所で指揮させて頂くことになりそうです。

 

<ベガ・ジュニアアンサンブル ロシア総領事館特別コンサート>

1.ショスタコーヴィッチ:映画音楽「馬あぶ」より抜粋

2.プロコフィエフ:「ピーターと狼」(語り:人形浄瑠璃文楽義太夫 豊竹希大夫)

3.日本民謡「さくらさくら」

 

夏へ

リヨンへ発つ友人に海でプレゼントしたワイン。

ロシア総領事館にて。

オブセッション

 

朝起きたときに頭にすぐ浮かぶもの、寝ていても頭から離れないものが君にとっての本物だ、とある先生は言った。

ここ数ヶ月を振り返ってみて改めて思う。やっぱり、僕は既にそういうものを見つけてしまっている。

夏は来るのだ。

 

 

Da gibt es kein Messen mit der Zeit, da gilt kein Jahr, und zehn Jahre sind nichts, Künstler sein heißt: nicht rechnen und zählen; reifen wie der Baum, der seine Säfte nicht drängt und getrost in den Stürmen des Frühlings steht ohne die Angst, daß dahinter kein Sommer kommen könnte. Er kommt doch. Aber er [...]