修士論文をひたすら書き進めて、やや朦朧とした頭で大学院のゼミに出る。
あと数ヶ月で退官される大先生は十五分遅れて教室にいらっしゃる。
前触れなく唐突に読み上げられたPhilippe JaccottetのTruinas : le 21 avril 2001に、直ちに頭が覚醒してゆく。
「雪」と「言葉」をめぐる一節に涙しそうになる。ジャコテの言葉の強さ。引用されるヘルダーリン。そして、それを読み上げるこの先生の言葉の力。
言葉の力を信じ、言葉の力を引き出し、言葉の力を体現することが出来る。そういう人がどれだけいるだろうか。