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夏との別れ

 

L’automne, déjà !

ランボーのAdieuの冒頭を読み上げてから講義に入る駒場の大先生。

おそらくは、その人にとって自らの世界に入る呪文のような役割をしているランボーの一節。

聞き慣れた声。しかし僕は聞いた。そこに、いつもとは違った震えが宿っていたことを。

ただの秋の訪れではない。その全人生における秋の到来であり、長かった夏との別れを宣言するものだった。

 

Oui l’heure nouvelle est au moins très-sévère.

それは大先生の最終講義の初回だった。

46年間の駒場の生活は教えたというより学び続けたという思いがしている。前期課程向けに最後の講義をして駒場を去りたい。

いつものように即興で印象的な言葉を紡いで行く先生に、広い教室を埋めた学生たちが静まり返る。

僕にとっても前期課程向けの講義に潜るのは久しぶりで、周りの若い熱気に気圧されそうにもなる。

 

向けられる問いは我々に対してではなく、先生自身に向けられたものだ。問いを自分自身に向けて、先生は我々の瞳の前で戦い、考える。

問いの中に、一緒に読ませて頂いたボードレールやミシェル・ドゥギーが顔を出す。

ランボー、ドゥルーズ、ナンシー。そして驚くべきことにコルトレーン。今日の変奏の行き着いた先はAfter the rainだった。

Ballade(バラード)であってBalade(逍遥)、これは授業ではなくある種の降霊術であり、儀式だと思うのだ。

師の語りに何が宿るのか。出来事が生成される瞬間を目撃し、共有させて頂けることを幸せに思う。