「展覧会の絵」を終えて、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ一番」という曲を見て頂いている。
ヴィラ・ロボスを振らせたら日本で師匠以上の人はいない。それだけにこの曲は門下の秘曲の一つであり、憧れの曲だった。
僕のようにまだ入って二年足らずの若造が見て頂ける曲ではないのだけれど、色々あって恐れ多くもヴィラ・ロボス協会の会長である
師匠の前でヴィラ=ロボスを振り、直々に指導(と喝)を受ける日々が始まった。
ブラジル風バッハ一番にしてもそうだが、ヴィラ=ロボスの曲はどれも温かく、大らかだ。
パリで培った巧みな作曲技法・管弦楽法の中に、ときおり野生味が顔をのぞかせる。神経質になることはないが、常に纏まりがある。
楽譜を読んでいると、視野がぱあっと広くなった錯覚に陥る。あたりに立ち並ぶビルが次々と消え、視界が広がり、地平線に沈む夕日が目に浮かぶ。
夏の海が大好きな僕にとって、この音楽はとても受け入れやすくて、初めて聴いた瞬間から親しみが持てた。
師匠の豊かなヴィラ=ロボスを少しでも自分のものにしたい。あの官能的で力強い旋律が頭から離れない。寝ても覚めても。