オープンキャンパスで東大ガイダンスのイベントへ来て下さった受験生の方々、ありがとうございました。
何人かの方とは直接お話しすることができ、微力ではありますが、経験に基づいたアドバイスを送ることが出来たのではないかと
思っています。とくに、日本史の論述対策で悩んでいるという地方の受験生の方々に「つかはらの日本史工房」の存在を伝える事が
出来て良かったです。皆さんから頂いた質問は受験勉強の方法から一人暮らしに対する不安まで様々でしたが、
以下では受験勉強に関する質問について、覚えている限りでここに簡単に纏めてみようと思います。
(あくまで僕の体験に基づいたアドバイスです。当然、これが東大受験生全員にとって最良の方法だというものではありません。)
【受験勉強編】
Q.数学が苦手です。どうすればいいですか。
A.僕も数学が死ぬほど苦手だったので、浪人中必死になってやりました。
結論から言うと、信頼に足る参考書を何度も何度も繰り返すのがベストです。
ではどのような参考書がいいのかと言いますと、合格者が愛用していたものは以下の三つがメジャーだと思います。
・青チャート(数研出版)⇒赤じゃなくて青で十分。何度も何度もやり込んで、解答がすらすら頭の中で再生できるぐらいにする。
・一対一対応(東京出版)⇒青チャートよりややハイレベル。ただし、解答が洗練されているのでこのレベルをやりこめば二完は固い。
・スタンダード演習(東京出版)⇒おすすめ。難易度は幅がかなりあるが、良問ぞろいで解説も詳しい。僕はこれしかやりませんでした。
これを何十回も繰り返しているうちに、「受験数学は所詮このテキストにある問題のバリエーションに過ぎない」と悟りました。
さらに東大で頻出の整数分野・確率分野を鍛えたければ、東京出版から整数分野と確率分野のみを集めた問題集が出ていますので
これをやると整数・確率の問題には絶対の自信がつくでしょう。とくに整数の問題集は鮮やかな解法だらけで感動させられました。
というわけでⅠAⅡBに関してはスタンダード演習を本当におすすめします。飽きるほどやって下さい。なお、予備校の授業で
「東大対策プログラム」などというセットを取っていても、数学に関してはよっぽど素晴らしい授業で無い限り、自分で解きまくるほうが
遥かに効率が良いはずです。数学に限った事ではありませんが、いらない授業や効率の悪い授業を「切る」勇気を持って下さい。
(親に学費を出してもらっている手前上、授業を「切る」ことは決して良い事ではありませんが、合格しないと何の意味もありません。)
Q.国語が苦手です。特に古文・漢文。
A.東大文系を受験しようとするなら、これはマズイです。まずセンターの古文・漢文はコンスタントに満点近く取れるような基礎学力を
つけて下さい。古文に関しては文法と単語を徹底的に叩きこめば必ず読めます。漢文は『早覚え即答法』という名著がありますので、
これを完全に吸収した上で演習を重ねて下さい。あとでも述べますが、東大二次の得点源は明らかに古文・漢文です。
基礎学力が身に付いている(≒センターが確実に取れる)と思ったら、東大二次の過去問(赤本や青本より、鉄緑会が角川書店から
発行している過去問集に極めて優れた解答と解説とがついているので、これをお薦めします。)をどんどん遡って解いていって下さい。
ここでのコツは、「実際の解答欄のサイズに、実際に記述してみる」ことです。意味が分かっていても文章にならなかったり
枠に収まりきらなかったり、書いてみたものの論理構造がおかしかったり、様々な問題が出てくるでしょう。
実際に書いてみることによって自身の欠点を浮かび上がらせ、その部分を鍛えていって下さい。とにかく書くことです。
Q.二次の現代文が取れません。
A.まず設問にしっかりと答えることを意識してください。「理由」とあったらきちんと「理由」を答えるように。その上で、主語と述部を
決定し、その主語と述部に論理矛盾しないように解答に必要な要素を入れて下さい。一応このようなアドバイスをしましたが、実は
合格者にしろ不合格者にしろ、「東大受験者のほとんどが現代文で高得点を取ることが出来ていない。」というデーターがあります。
つまり、二次の現代文の得点に過剰な期待を抱いて「合格のための得点プラン」を組むのは極めて危険です。現代文は4割ぐらい
得点出来ればそれで十分と思って、期待しないようにしましょう。それでも漢字は間違えないように。
Q.東大英語の点数が伸びません。
A.時間配分は大丈夫ですか?東大英語は時間との勝負です。どこから解いていくかという戦略が必須です。
まず、リスニングまでにどの問題を解くのか。そしてリスニングのあとに何分でどこを解くのか。これは早いうちに決めておきましょう。
その上で、リスニングと英作の部分で点数を掻き集めましょう。リスニングは毎日ラジオ講座か何かを聞いて実戦(問題を解く)を
数多く繰り返す練習をすべきです。その際、直前期にはイヤホンではなく音質の悪いスピーカーでリスニングする練習を積んでおくと
本番の音の悪さにも慌てず対応できます。英作は例文を暗記しまくって、そのバリエーション(単語を変える)をアウトプットしてください。
ただし、東大英語の英作で狙われやすい構文や文法事項が存在するので、そこは文法的に固めておく必要があります。
具体的には過去完了や仮定法、話法、さらには基本動詞の使い分けなどです。このうち、基本動詞の使い分けについては
「基本頻出英単語の使い分け」という本を参考にするのが良いかもしれません。この本は大学に入ってからも使えます。
Q.英語の長文を読むのが遅くて困っています。
A.まず単語力が足りていないのならば、単語力を早急に補強してください。単語帳は好きなものを使えばいいですが、僕は
「単語王」を愛用していました。また、単語だけでなくイディオム帳も並行してやるべきです。イディオムを完璧にしておくと
センターの文法問題や東大二次の小説問題などで効いてきます。単語帳以上の語彙力を身につけたい方は、文春新書から出ている
『語源で分かった!英単語記憶術』が、コストパフォーマンス的にも抜群に良い本です。さらに、東大で頻出の前置詞問題を
鍛えたければ、『前置詞が分かれば英語が分かる』(刀祢 雅彦)を読んでみるといいでしょう。意外と侮れないのは
「イメージでわかる単語帳―NHK新感覚☆キーワードで英会話」で、ポップな表紙と裏腹に内容は結構濃い参考書です。
二次試験で必要とされる、[ 基本単語・前置詞のイメージ ] が湧かない方は是非これを手にとってみてください。
Q.世界史論述が書けません。
A.まず基礎知識は十分ですか?「基礎知識が十分」とはどのようなレベルかというと、東大二次世界史の第三問がコンスタントに8割
以上正答するレベル、さらに大問Ⅰの大論述にある指定語句のほとんどの意味・文脈を説明する事が出来るというレベルです。
指定語句が初見であったり時期を思い出せないようであればそれは基礎知識不足です。とくに時代ごとの世界の様相
(例えば、「○○世紀の西洋はどのような王朝・どんな宗教に支えられた国があって、こんな動きがあって、国と国との交流はどうで、
あんな侵略や戦争があって、その影響を受けてここの制度が変わって・・・」のように。)
をビジュアルに、地図上に書き込めるような形で記憶しておくことが必須でしょう。
基礎知識が十分だと感じたら、過去問をどんどん解いていって下さい。この際、教科書や参考書を見ながらが書くことが大切だと
世界史の恩師である駿台の川西先生もおっしゃっていました。正しいデーターを参考にしながら、自分で苦労して「構成」して書いた
文章は簡単には忘れません。書いたら信頼できる先生に添削してもらって下さい。ちなみに青本や赤本の答えには、
「東大が求めた解答」だとは到底思えないような解答が多々見られますので、青本や赤本の答えを信頼しないようにしましょう。
Q.日本史論述が意味不明です。
A.「つかはらの日本史工房」および塚原先生の『東大日本史二十五か年』 を読み込んでください。よく言われるように東大日本史には
些末な知識は要求されていません。しかしある程度の知識、史料が示している事象を理解することができる知識量は必須です。
人名を覚えようと努力するのではなく、その時代の様子、システムの内容、施策の意味などを中心に覚えていくべきでしょう。
日本史に関しては僕がここに書くより、塚原先生のページと本を隅から隅まで読んでもらうのが一番早いと思いますのでこれぐらいで。
Q.地学や倫理など、センターのみで使う科目の勉強に手が回りません。
A.たぶんみんなそうです。地学や倫理などに関しては、中経出版の「おもしろいほど~」シリーズを一冊やりこんでおけば
それなりの点数が取れるはずですが、最も重要なのは過去問をやりまくることです。河合塾の過去問集(黒本)をどんどん解いて、
解説を暗記したり要点を抜粋したりしてみてください。これらの演習は時間的にも精神的にもさほど負担にならないと思うので、
二次試験の勉強の合間に挟んでみたり、一日のはじまりと終わりに入れてみたりすると良いでしょう。
Q.おすすめのノート法とかありませんか?
A.これはもう人それぞれだと思います。とりあえず、「東大生のノートは必ず美しい」などということはありません。(僕自身がその反例)
僕が愛用していたのは、marumanから出ているB6ルーズリーフです。論述のトピックをまとめたり、英文法の要点をまとめたり、
地学や倫理の過去問から引っ張ってきた要点をまとめるのに使っていました。なぜこれが良いかというと、このB6というサイズが
僕の場合、パッと見ただけで全体を読むことのできるサイズだったからです。これを写真のように目に焼き付けて覚えていました。
なおかつ、小型なので持ち運びやすい、リング式なので順番入れ替えが可能(順番を入れ替える、というのは順番を理解していないと
出来ない作業なので、入れ替えるだけで勉強になります。記憶にも残るしね。)、万年筆のインク乗りが良い、などの理由もありました。
なお、勉強に万年筆を使うのはとても効率の良いことだと思っています。まず、万年筆でノートを取っていると授業中に眠たくなることが
ある程度防げます。というのは、うつらうつらしてペンを落としてしまおうものなら、ペン先が曲がって一貫の終わりだからです。
そして万年筆で書いていると様々なトラブルが発生します。インクが手に付いたり、インクが漏れたり、水で滲んだり・・・
そのようなトラブルが毎日に刺激(?)を与えてくれるでしょう。一番大きいのは、万年筆を使うと「速く・楽しく書ける」ということ。
万年筆は筆圧をほとんど必要としないので、慣れれば流れるように速く書けます。僕はこの性能を利用して、先生の口述を雑談から
すべて書きとっていました。(もちろん口述の内容をまとめながら書いたのであって、そのまま書きうつしたのではありません。)
これをやっていると眠たくなる暇なんてありませんよ。
個人的な趣味が多分に含まれている勉強法ですが、一度やってみてはいかがでしょうか。
(はじめて買うならウォーターマンのエキスパートあたりをおすすめします。鉄ペンにも関わらず、書き心地が素晴らしいです。)
こんなところでしょうか。また思い出したら書きたいと思います。
直接話した高校生たちに僕が毎回伝えたことは、「本当に東大を受けたいと思ったなら周りの人の意見に流されるな。」
それから「東大は浪人してでも来る価値があるよ。」ということです。地方在住の方などは一緒にこの大学を目指す友達が少なくて
何かとやりづらい思いをすることもあるでしょうが、それでも諦めないで欲しい。地方出身のクラスの友達は、受験生時代を振り返って
「自分の意思を強く持って、自分に厳しく過ごしていた。今の自分から見てもビックリするぐらい自分に正直で、厳しかった。」
と言っていました。
そしてまた、浪人時代はそう悪いものではありません。浪人時代にしか会えない友達や、経験できない事は沢山あります。
オープンキャンパスに訪れてくれた受験生はほとんど高校生だと思うので、浪人を恐れずに、東大を受けると決めたら
初志貫徹して飛び込んで下さい。駒場キャンパスで待っています!