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J'ai passé une très bonne soirée.

 

  昨夜ハイドンのピアノ協奏曲を譜読みしていて、二楽章で分からないところがあったので動画を見ようと思ってタワレコへ行った。

買ってきたのが下の三枚である。

 

・Haydn Cello Concertos & Piano Concerto No.11 (  Mstislav Rostropovich , Homero Francesch, Neville Marriner )

. Beethoven Piano Concertos No.5 & No.3 ( Ikuyo Nakamichi, Paavo Jarvi )

. Beethoven Piano Concerto No.1 & Mahler Symphony No.1 (Margarita Hohenrieder, Fabio Luisi)

 

・・・案の定、関係ないものまで買ってしまいました(笑) まあどれもコンチェルトの勉強になるからいいか。

まず一枚目のハイドンだが、これはチェロのロストロポーヴィチの音がカッコよすぎる。剛健な音色。ハイドンのチェロ協奏曲ってこんな曲

だったっけ?と思ってしまうぐらい、ロストロポーヴィチの色が強い演奏だ。こういう演奏は嫌いじゃないし、リヒテルとロストロポーヴィチの

Beethoven Cello Sonata No.3を擦り切れるぐらい聴きまくった耳には、どこかほっとする音だ。チェロの音色はやっぱりいいなあ。

本命のピアノ協奏曲は、疑問点の解決のためのヒントを与えてくれはしたので役に立ったが、演奏自体はあまり好みではなかった。

何よりも指揮者のマリナーの顔が怖すぎる。『美味しんぼ』の海原雄山みたいな顔つきで、厳しい表情と楽しい音楽とのGAPが著しい。

これで音が明るかったら良いのだが、取り立ててそういうこともない、ストレートな(ある意味ドライな)演奏。マリナーは2007年に

N響へ振りに来ていたと記憶しているが、その時は「元気なおじいちゃん」という感じだった。DVDの収録は1982年とあるので、

僕の知っている来日時の姿より、25年も前の姿が収められていることになる。25年経てばこれぐらい変わっても不思議ではない。

ピアノはホメロ・フランチェスという人で、僕はこの人の名前も演奏もこのDVDで始めて聞いた。とくに「!」と思った部分は無かったが、

三楽章の150小節目、d moll に転調してピアノが連続トリルを駆け下りていく特徴的な音型の部分でやや変わった弾き方を

していたのが記憶に残っている。

 

 ニ枚目のDVDは「ベートーヴェン弾き」仲道郁代とパーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンのピアコン五番と三番。

仲道さんが一生懸命英語で喋っているドキュメンタリーが付いていたが、普通に日本語で話せばいいのに、とついつい思ってしまう。

それはともかく、ここに収められた仲道さんのピアノはパワフル。さらっと流すような演奏ではなく、ガンガン攻めてくる。

ヤルヴィとカンマーフィルはノン・ヴィヴラート奏法で演奏しており、ベートーヴェンの交響曲の演奏で見せたのと同じ鋭さがある。

「英雄」の録音からも感じたことだが、パーヴォ・ヤルヴィのリズム感とアクセントの入れ方は本当にすごいと思う。

跳ねるような、弾けるような、言葉にはしがたい「目の覚めるような鮮烈さ」がある。音色やニュアンス、奏法の問題を超えて

ヤルヴィのような鋭いリズム感にはちょっと憧れるし、内声部をきっちりと動かしてゆく手腕にも溜息をつくばかりである。凄い。

ちなみに、ドキュメンタリーにはプロデューサーも映っているのだが、このプロデューサーが指揮者のチェリビダッケに似ていて

複雑な気持ちになった。プロデューサーにチェリビダッケがいたら、滅多にGOサイン出してくれないだろうなあ・・・。

 

 最後は、マルガリータ・ヘーエンリーダーのピアノによるBeethovenのピアコン一番と、ファビオ・ルイージによるマーラーの一番。

いずれもオーケストラはシュターツカペレ・ドレスデンで、僕にとってこのオーケストラはとても思い入れのあるオーケストラの一つだ。

というのは、シュターツカペレ・ドレスデンの1970年代-80年代のドイツ系レパートリーの録音は神がかった演奏だらけで、

浪人中に中古CD屋を巡って集めまくったからである。なぜこの時期のシュターツカペレ・ドレスデンの音が素晴らしいかというと、

理由は色々あるだろうが、僕にとってはある二人の奏者の存在が大きい。その楽器をやっている人なら絶対に知っている二人、

ホルンのペーター・ダムとティンパニのペーター・ゾンダーマンである。ダムの温かく柔らかな音は一度聴くと忘れられないし、

ゾンダーマンのティンパニは「こいつは何だ?!」と唖然としてしまうぐらいの迫力とノリを持っている。

1985年ライブ録音のブロムシュテット指揮の第九を聴いてみて欲しい。ティンパニの威力に絶句するに違いない。80年代の演奏からは

「ビロードのような」と評されるまろやかな音に加えて、オーケストラをぐいぐい引っ張っていける「名人」の芸を楽しむ事が出来るだろう。

今回のDVDでもその一端を少しは感じることが出来る。とりわけマーラーの終楽章なんかは音の美しさが分かりやすいし、

ルイージがぐっとテンポを落とすところの反応も鋭くて感動する。ベートーヴェンのコンチェルトのほうは、このヘーエンリーダーという

ピアニストがとても楽しそうに弾いており、自然体で楽しめる演奏。ヘーエンリーダ‐はアクセントをつけるとき、体全体を使って

アクセントをかけにいくように見えるのが印象的。三楽章冒頭の弾き方も面白い。アンコールの曲は初めて聴く曲だった。

 

 そんなこんなでDVDを購入して、夜は僕の恩師である塚原先生に、高校の同級生のS氏と一緒にお寿司へ連れていって頂いた。

塚原先生から学んだものは、音楽で言えばアナリーゼの技術と書法の技術、つまり「設問の分析」と「文章の構成」の技術だ。

物知りなだけでは全く駄目で、「設問や資料をどれだけ深く読み込んで出題者の意図や狙いを汲み取れるか」、そして

「何を盛り込み、何を切り捨て、いかに論理的で見通しの良い文章を書くか」という技術が東大の日本史(世界史でもそうだ)で高得点を

取るには要求されている。今になって分かることだが、設問の深い分析と見晴らしの良い文章構成に必須なのは「冷静さ」だと思う。

緊張や興奮で舞い上がってしまっては、設問や資料をじっくりと読み解くことなんか出来ないだろうし、ましてや厳しい指定字数の

枠内で構造の明確な文章を書くことなど不可能になってしまうだろう。時間制限と一回きりの緊張感の中でじっくりと設問や資料、

そして自分の書いた文章と向かい合うのは至難の技であって、そのためには訓練して癖をつけることしかない。だからこそ浪人中、

塚原先生のもとで徹底的にこれを鍛えて頂いたのは大きかった。この技術・能力は、今になっても小論を書いたり、報告書を書いたり

する際にとても役立っている。論述の勉強はしっかりやれば大学でも役立つので、時間と労力を注ぐ価値ありだと思います。

 

 話が論述の話になってしまったが、とにかく、先生と久しぶりに話すのは本当に楽しかった。

駿台に所属していた頃からもう三年近く経つのに、今でもこうして誘っていただけるのは幸せなことだなと思う。

めちゃくちゃ美味しいお寿司と美味しい日本酒、ごちそうさまでした。ありがとうございます。