8月19,20,21日と、アンサンブル・コモドの東北コンサートを指揮させて頂きました。
アンサンブル・コモドからお声がけ頂いたのは、2012年の夏、はじめて東北でコンサートを行うという時でした。
それ以来毎年夏になると宮城県を回って指揮させて頂いているのですが、今年でもう三年目となります。
震災の傷跡が癒えたところ、まだまだ変わらないままでいるところ、三公演させて頂くうちに様々な光景を目にしましたが、何より今回僕の印象に残ったのは、
毎年演奏させて頂いている老人ホームで出会った人たちに流れた「時間」の痕跡です。
はじめてここで演奏させて頂いたのも三年前。そのとき頂いた言葉をずっと考えていました。「楽しい音楽をありがとう。来年は楽しい音楽と一緒に、美しい音楽も聴きたいな」
美しさとは何でしょうか。それは一つだけに決まるものではありません。その場、その瞬間に最も相応しい美しさがあって、それこそが心を揺らすものとなり得るはずです。
この場所で最も相応しい美しさを持った音楽とは何だろうか。そのことを僕は三年間ずっと考え・探し続けて、ようやく今年見出したのです。
それはヴォーン=ウィリアムズの賛美歌(平和と愛を謳う歌詞が宿っています)を弦楽合奏にアレンジしたもので、Rhosymedreという前奏曲でした。
全身全霊を込めて演奏して振り返ったあと、聞いて下さった皆様が涙を流していらっしゃった光景に出会えて、心から良かったと思えました。
終演後、「また来年も待っている!」と毎年元気に挨拶して下さっていた施設代表のお爺さん。
何よりも今年、僕の頭から離れないのは、このお爺さんの言葉だったかもしれません。
またいつものように元気に挨拶をされたあと、「これで天国への良い土産が出来た。でも、こんなに素敵な演奏を聞いてしまうと、現世というのはやっぱり良いなあとも思うのです」と…。
そこに込められた想いと過ぎた時間を思い、溢れてくる涙を抑えることが出来ませんでした。
今年は演奏者の我々にとっても特別で、はじめてこの団体に関わったときに二年生だった主要メンバーが四年生となって卒業していく最後の年でもありました。
みんな頼もしくなったな…。そんなことを考えながら、そして、三年前に見た海に背中を向けて咲く向日葵のことを思いながら、アンコールのYou Raise Me Upを指揮しました。
またここで演奏できることを、そしてまた、あの方々に聞いて頂けることを願って止みません。
<2014年度アンサンブル・コモド東北コンサート プログラム>
ディズニー・サウンドトラック(中川真文編曲)
「スター・ウォーズ」組曲より「序曲」
「パイレーツ・オブ・カリビアン」メドレー
日本民謡「さくらさくら」
アンコール:ヴォーン・ウィリアムズ「オルガンのための三つの前奏曲より、Rhosymedre」(弦楽合奏編曲)
アンコール:You raise me up