帰国して数日後より、高熱で倒れていました。今日からようやく復活したので滞っていたものを進めて行きます。デング熱ではないそうなのでご安心下さい。
倒れる前に、国立劇場にて新作文楽「不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)」を見てきました。宝塚でプロコフィエフ「ピーターと狼」を共演させて頂いた豊竹希大夫さまからご招待頂いたものです。文楽を見るのはこれが人生で初めて、果たして楽しめるのか不安だったのですが、三味線と語りの豊かさ、そしてまるで 空を歩くかの如き人形の滑らかな動きに魅了され続けて、時が一瞬で過ぎました。特に音楽については三味線の人間国宝・鶴沢清治さんが30年来温めたアイデ アだったそうで圧巻でした。
「ふぁするのたいふ」というタイトルからも分かるように、「ファルスタッフ」であって、「ウィンザーの陽気な女房」であり、さらに辿ってシェイクスピアの 「ヘンリー四世」が元になっています。シェイクスピアということで、脚本は駒場でマクルーハンの輪読をご一緒させて頂いた河合祥一郎先生によるもの。
「人の命はやがて消ゆる束の間の灯。誉れありといえども命果つるば益なし」という冒頭の独白から、ヘンリー四世の中の名文であるThought’s the slave of life, and life time’s fool; And time, that takes survey of all the world, Must have a stop. などを思い出し、時代も言語もバックグランドも違うものを自然と溶け合わせる脚本と演技の妙、そして深いところで物事が「思想」として繋がっていることに 感動しました。
(追記:観劇しながら、三味線のトップの方のリードが凄まじい気迫で、時に義太夫を煽り、或はバチの一打ちで舞台の表情を変えて行く様がすごい…とた だただ感動して見ていたのですが、そうしたらその方が鶴沢清治さんご本人でいらっしゃったことを後ほど知りました…!)