四ッ谷のカフェで三時間ほど、現在の活動についての取材を受けた。
結局のところ、僕は、大学・大学院で学んだものと、指揮という芸術に関わって見出すものを融合させることに最大の楽しみを見出している。
ジャコメッティのデッサンについて考えることで指揮の哲学に新たな道が開ける。
ボードレールの一節に触れて、指揮の師が与えて下さった言葉にならぬ言葉を唐突に理解する。そういうことだ。
それが何か絶対的な真理であるなど到底思わないし、融合したものを誰かに押し付けたいなんて微塵も思わない。
けれども両者をポエジーの中に響き合わせる試みこそが(それを学問的でない意味において「比較芸術」と呼んでいたいのだ)自分が生きた証と言うに足る何物かへと繋がっているのだと思う。
帰り道の空は満月だった。夜風に身を委ねて行く先知らず。
また夏がやってくる。26歳がもうすぐ終わる。