本番を終えた楽譜を納めるとき、いつも言葉にならぬ寂しさに襲われる。
この曲を演奏する事はこの先何度もあるかもしれない。けれども、この曲をあのメンバーと演奏するのは二度と無い事なのだ。
音楽はいつも一回限り。儚く、しかしそれゆえに掛け替えない。
関西での本番を終えて、来たときと同様に新幹線で東京へ戻る。
抱えていた苦しみは一緒に演奏してくれた子供たちの笑顔と頂いた拍手で吹き飛び、また音楽したいという気持ちだけが強く残る。
明日からはラプソディー・イン・ブルーのリハーサル。どんな音色になるのか楽しみでならない。そして、きっとまた、沢山の人たちと出会うのだろう。
人と会って話すのが昔から好きだった僕にとって、指揮者というのはこれ以上なく恵まれた立場であることに今更気付くのだ。
行く先々でたくさんの人と会い、音楽で会話し、お酒を飲んで笑う。そんな日々を重ねていきたい。