病に倒れている間に僕は初心を思い出した。
色んなしがらみや関係に窮屈になりすぎていた。難しいことは何も無かった。
小さい頃好きだった広場の鬼ごっこやサッカーのように、楽しいから一緒にやろうよと声をかけて自然とはじまる。
それだけで良かったのだ。だから、今年はこの曲を取り上げよう。あのメンバーと演奏したいと思うから。
年が明けて最初に開いたのは、限りなくシンプルで執拗なこの楽譜だった。
読み返すたびに見えてくるものが違う。前に読んだ時は苦しさを感じたけれど、今は裏に刻まれた優しさを思う。
正解も完成もない。結局は心が通うかどうかの問題で、それには演奏しないとはじまらない。
読み返すたびに思う事は変わって行き、見えてくるものも増えてくるけれど
完全に固まることなんてあり得ない。だから固まるのを待とうとしたり、神格化して飾るようなことはもうしない。
うまくやってやろう、と思えば思うほど本質から遠ざかる。ある種の挑戦と冒険に立ち戻る。
今年の僕は、熱を十分に冷ましたら外に出す。
時間は限られている。
新しい年度に入って、自分の年齢のみならず、友人たちの年齢にはじめて意識が向いた。
あと何曲を一緒に演奏出来るだろう、舞台の上でいくつの瞬間を共有することが出来るだろう。
背負わねばならないものは次第にお互い重くなって行くけれど、それを引き受けつつも初心に返る。
やりたいことを、好きな人たちとやる。
欲を捨て、気負いも捨てて、純な楽しさに仕えるように、無心にボールを蹴ろう。