朝六時までベートーヴェンの「エグモント」序曲を勉強していたら目が冴えてしまったので、
珍しく浴槽にお湯を張って、ゆっくりと浸かりながらトゥーサンの『愛しあう』という小説を読んでいた。
原題はfaire l’amour、すなわちmake love というそのものズバリのような刺激的なタイトル。野崎先生はこれを『愛しあう』とギリギリのラインで
日本語にしたわけだが、この訳のセンスには本棚で背表紙を見るたびに感動してしまう。すごい。
ともあれ、邦訳で二・三回読んでいるとあって、これは原典でも辞書無しである程度の意味が分かる。
ペーパーバックは表紙が厚めのコート紙で出来ているのでこうした環境で読んでも湿気ないのが良い。久しぶりに読んでみると
「ここはこういう風に書いてあったんだな」と美しさに驚くところもあったので、覚え書きとして幾つかここに掲載しておこうと思う。
Le taxi nous déposa devant l’entrée de l’hôtel. A Paris, sept ans plut tôt, j’avais proposé à Marie d’aller boire un verre quelque part dans un endroit encore ouvert près de la Bastille, rue de Lappe, ou rue de la Roquette, ou rue Amelot, rue de Pas-de-la-Mule, je ne sais plus. Nos [...]