東京に来て四年になるのか、と気付いて溜め息をつく。
2011年の夏。予定の合間を縫うようにして実家に帰って来た。
かつては憧れの乗り物だった新幹線も、24歳になった今では、近所に出かけるのと同じ感覚で乗っている。
わずか三時間弱乗っているだけで僕の身体は東京から京都へと運ばれる。京都で降りても感慨は無い。
京都だということすら実感が湧かず、ただ周りから聞こえてくる言葉が耳に懐かしくどこか柔らかい関西弁であることに
気付いてようやく「ここは東京じゃないんだな。」と思う。
帰って来たな、と思えたのは、家のドアをあけた時だった。
相変わらず吠える犬。おかえりと声をかけて出てきてくれる両親と弟。帰る時間にぴったりタイミングを合わせて作ってある御飯。
ここは僕の暮らしていた場所だし、ここが僕の家なのだ。そして僕は確かにこの家族で育った。
たとえ交通がもっと発達して一瞬で移動できるようになっても、どれだけ東京に慣れてしまっても、その事実は変わる事がない。
東京に来て四年目の夏、帰る場所がちゃんとこちらにあることを改めて知る。どんな道に進んでも。