先日のコンサートの打ち上げに「子守唄」の作曲者である助川敏弥先生がいらっしゃっていて、
ワインを傾けながら色々とお話を聞かせて頂いた。
助川先生は僕の指揮の師である村方千之先生と藝大時代の同級生でいらっしゃったそう。
先生の懐かしいお話からはじまり、コンサートの感想、そして音楽論へと話は弾む。
僕が指揮したプロコフィエフ「古典交響曲」は、一楽章と四楽章(特に四楽章)で相当に早いテンポをとったのだが、助川先生は
「あれでもまだまだ。もっと早く。冗談みたいに。プロコフィエフのあの音楽はある種の冗談なんだよ。冗談音楽。」とおっしゃった。
「えっ、あれ以上早くですか?!」と驚く僕に、横から村方先生が
「でも、ただ早くというだけではない。フレーズ感を引き出すように指揮すれば早さを窮屈に感じないし、
音楽的になるんだ。木許はそれがまだ出来ていない。一本調子で、若い。」と付け加える。助川先生は笑いながら、
「でも、立ち姿が非常に良かった。オーケストラに放つものがあった。楽しみにしていますよ。」と言って下さった。
その後も助川先生とお話させて頂いたが、とりわけ印象に残ったのは、
「作曲者の目から見れば、テンポがあるのではない。リズムがある。リズムからテンポが生まれるんだ。」という言葉だった。
そういえば自分はテンポのことばかり考えていた。テンポは作るものではない。リズムから必然的に生まれるものなのだ。
そうしたところまで考えの及ばなかった自分の未熟さを痛感する。
音を鳴らすだけなら簡単だ。だけど音楽的に音楽をすること。
それがどれほど難しく底の知れない面白さを持った営為であるか。
コンサートを終えて、より一層、頭が音楽のことでいっぱいになった。
助川先生、沢山のアドバイスを下さりありがとうございました。これからも精進致します。