無事に一回目のリハーサルが終わりました。
あっという間の50分でしたが、予め考えておいた通りの時間配分で行うことが出来たので一安心です。
やってみると上手く行く部分も上手く行かない部分もありましたし、プロの奏者の方々からビシバシと指摘を頂いたりもして、
自分にとって非常に濃密な時間になったように思います。50分で多くを勉強させて頂きました。
コンマスの方は僕の拙い指揮から意図を丁寧に汲み取ってくださいましたし、チェロのトップの方からの
「僕ここめちゃくちゃ気合い入れて弾くからさ、もっと僕に気合いを飛ばしてほしい。プロコフィエフだからね!」という
指摘には背筋が正される思いがしました。
しかも1stVnの一番後ろのプルトのあたりにはなんと指揮の師匠が座っていらっしゃって、
スコアを見ながら僕の指揮をじーっと見つめていらっしゃいます。
いつも自分が振っているドミナントのメンバーが見守る中、プロの奏者と師匠に挟まれて指揮するこの緊張感!
指揮台に立つ前は笑顔になる余裕なんて無いのではないかと思いましたが、振りはじめてみると楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。
とんでもなく綺麗な音が出てくるし、自分の指揮に敏感に反応してくださる。そして何より、モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲が
楽しすぎる。後ろで見学していたドミナントのヴァイオリニストから「いつもと変わらない感じで楽しそうに振ってましたよ!」
とメールをもらって、どれどれとリハーサルの動画を見てみたら、満面の笑顔で棒を振っている自分がいました。
「こいつ全く仕方ないヤツだな」と思われたのか何だか分かりませんが、横でじーっと見守って下さった師匠の厳しい顔にも
時折笑顔が浮かんでいるのを発見してしまいました。(古典交響曲では「テンポもっと上げてやらなきゃ!」と喝を頂きましたが…)
指揮者というのは難しいもので、指揮台に持ち込めるものはたった一本の棒と楽譜だけ。
棒は所詮木の棒にすぎませんし、振り出すと楽譜は丁寧に追っている暇なんてありません。アテになるのは声と頭と心のみ。
つまり、自分という人間ひとつで勝負せねばならないわけです。50人のプロの視線を身ひとつに浴びながら、
視線から逃げることなく(むしろ視線を集中させることを楽しんで)振る舞わなければならない。
それは言葉に出来ないほどの大変さが伴います。その意味で、昨夜は音楽の厳しさと楽しさを身をもって味わう時間となりました。
残されたリハーサルはあと一回。
人間で勝負する芸術である以上、背伸びが無意味なのは承知です。今の自分に出来る限りの指揮をしようと思います。