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取材から帰ってきました。- 分子科学研究所 -

 

愛知県・岐阜県を横断してのサイエンスの最先端取材旅行から帰ってきました。

愛知県の東岡崎にある自然科学研究機構というところからスタート。まずは分子科学研究所を訪れ、斉藤先生のお話を聞きました。

分子運動の時間スケールというのは1フェムト秒(1000兆分の1秒)と極めて微小なものであり、そのために動的な観察が難しいのですが、

シミュレーション映像を上手く用いて研究することで現象をとらえやすくなります。そこで斉藤先生が見せて下さったのは、

水の結晶化過程のシミュレーション映像。乱れた構造である水が、どのようにして秩序を持った氷へと変化するのか。

これをシミュレーション動画で見せて頂いたのですが、正直感動してしまいました。

最初は乱れた水素結合が画面上に映っているだけなのですが、しだいに安定な水素結合の核が出来てゆき、、水素結合ネットワークが

成長して、欠陥が少しずつ減って六角形の結晶構造がどんどん成長していくのです。カオスな状態が時間とともに秩序立てられていく

様子はとても美しいものでした。(ミクロな世界に秩序が自生してゆくことで最終的には物質の態が変わっていくのです。これはすごい。)

 

水だけでなく、タンパク質のイメージングも見せて頂きました。体内で水の次に多く存在しているのがタンパク質であり、中でも細胞の

増殖はRasというタンパク質の活動と休止によって制御されています。そして、Rasの突然変異により細胞増殖の信号がonになり続けると、

ガンに繋がります。先生によれば、ヒトの癌の30パーセントはRasの変異に関係しているとのこと。つまり、Rasというタンパク質の研究は

ガンを考える上で非常に重要になってくるものなのです。そこで先生が見せて下さったのが、RasとGAPの複合体形成過程の

シミュレーション映像です。これがどのようなものであったか、というのは理系のゼミ生に任せますが、とにかく迫力があってびっくり。

このようにシミュレーションを上手く用いることで、ガンの分子論的な理解に繋がるということを先生は主張されていらっしゃいました。

 

Rasの生物学的機能

Rasの生物学的機能

 

 

 

2 comments to 取材から帰ってきました。- 分子科学研究所 -

  • そうrasは最も有名な癌遺伝子。
    癌遺伝子とは増殖因子が来ないのにシグナル伝達が動いてしまう変異を起こした遺伝子のこと。
    ras癌遺伝子はGTPの分解ができなくなって活性化状態が維持されているのだな。
    ブログの図でいうと
    GTP→GDP+Piが阻害されてRasは活性化されたままになる。
    まあ実際のRasの活性化には他にもSOS,DAG,GEFとか色々必要なんだけどね。
    とりあえずRasの不活性化に働くタンパク質(NF1とか)が働かなくなると癌化してしまう・・。

    活性型になったRasはRafに働きかけてMAPKカスケードを稼働させて、その下流にはエンドサイトーシスとかアポトーシス抑制とか色々あって

    全部把握するのは人間では不可能。
    だからバイオインフォマティクスって分野が注目されてるんだな。
    で、あらゆる事象を演算できるスパコンが不可欠!!

    事業仕分けかなんか知らんけど2番じゃダメなんですか?とか寝ぼけたこと言ってちゃいけないよ。

    ちなみに細かいですがRasってのは実際のタンパク質を表わして、rasってのはそのタンパク質をコードしてるDNAの塩基配列を表します。

    だから正確にはRasの変異じゃなくてrasの変異なんだな。
    まあ参考までに。

    僕も研究所行きたかった。

  • 木許 裕介

    >聖氏
    うーむ、さすが専門だけあって詳しい。この分野面白いよね。カスケード反応とかアポトーシスとか基本的な用語を説明できる程度の知識しかないから、俺もこの辺りはもうちょっと真剣に勉強してみようと思う。ちなみに立花さんは科学技術系を事業仕分けする流れに対して、「このバーバリアン(野蛮人)め!」って言ってたよ。

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