レヴィ・ストロースが逝去された。享年100歳。101歳の目前だった。
この死が意味するところはとても重い。フーコー、バルト、デリダ、メルロ=ポンティ、ドゥルーズ、レヴィナス、ラカン、バタイユ…
フランス現代思想を牽引してきた(そして、世界に影響を与えてきた)人々は、みな既に他界していたが、ついにレヴィ・ストロースまで
この世の人ではなくなってしまったのだ。フランス現代思想における、巨匠の時代が終わったと言っても言い過ぎではないだろう。
実は、レヴィ・ストロースについて僕は昨年まで良く知らなかった。彼の思想については概説書を数冊読んだに過ぎず
通り一遍の知識をかろうじて持っているだけだった。しかし、フランス科に進学するにあたり、授業で彼の『構造人類学』を原典で
読み始めて以来、その思想の魅力にどんどんと引き込まれていった。文章では「構造主義を確立した」と一行で書くことができるが、
「構造主義」の深遠さ、そして構造主義が世界に与えた影響はいくら紙面を割いても書ききれるものではないだろう。
思想のみならず、彼の人柄も僕にとっては魅力的に思われる。
『みる、きく、よむ』(1993)を読むと、彼が音楽に対しても造詣が深かったことが分かる。
ワーグナーとストラヴィンスキーの音楽を愛し、作曲家になりたかった(作曲家がだめなら指揮者になりたかった)そうだ。
僕が今できることはひたすら著作を読んでレヴィ・ストロースの思想を朧げに掴むことしかないけれども、訃報に接して、
立花ゼミでレヴィ・ストロース追悼企画を立ち上げようと決心した。
高度な専門性に立脚しつつも、広く深い教養を同時に持ち、思想界をひっくり返すような書物を書き続けたレヴィ・ストロース。
いま、残された書を読むことでその筆に直接触れることが出来ることを幸せに思うと共に、巨匠の死に心からご冥福をお祈り致します。