October 2009
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後期教養進学の第一歩

 

 後期教養学部(文系)のガイダンスがあったので出席してきました。

11号館の広い部屋に集まったわけですが、ざっと見て100人はいないぐらいの人数。後期教養の人数の少なさにビビったりもしますが、

見知った顔もちらほらとあって少し安心します。同じクラスで教養進学を決めた仲間たちと握手をして祝福しあったあと、

教室をぼんやりと見渡してあることを思い出しました。そういえばこの教室は、僕が一浪目に東大を受験したときの教室だった。

あれから三年。早いものですね。あの頃の自分と比べて何か成長したのかな、などと考えると、過ぎた時間の中にあった出来事に

色々と思うところがありました。

 

 全体ガイダンスでは、さまざまな先生によって「横に広く見ること」 「学問をつなげること」 「卒論しっかり」 「語学大変だよ覚悟しな」

などのアドバイスや脅しを頂きました。そのあと各学部に分かれてのガイダンスがあり、僕は進学先である地域文化研究科の

ガイダンスを聞いていたわけですが、各地域(アメリカ・ラテンアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・アジア)のコース主任の先生に

よって為される挨拶がまさに「その地域っぽい」挨拶ばかりで笑ってしまいました。(ドイツが一番シュールでした。)

わざとなのかもしれませんが、それでも言語が各学科の雰囲気に影響しているのは確かでしょう。

 

 そのあと、志望する各小地域に分かれて学部生室でのガイダンス。

どこの地域に進学するか悩んでいる人はいくつも回っていたようですが、僕は最初からフランスと決めていたので迷うことなくフランス科

の部屋へ突入。結構な冊数の本が棚に並んでいるのが目に入り、「おっとデリダの『触覚』がこんなところに。」などと思いながら

先輩方に案内されるまま席につきました。見渡すと内定生でフランス科に興味を持って来たのは僕を入れて6人で、先輩方の人数も6人

ぐらい。そこにフランス科所属の先生方と教務補佐の方が合わせて5人いらっしゃり、その少人数制にちょっと圧倒されます。

ましてや第二外国語ドイツ語で飛び込んで来たのは僕だけでしたし、過去にもそんなに例がないらしいので、冬学期に相当の勉強を

しておかないと大変なことになりそうな気配を感じます。まあ明らかに予想された展開ではありますが(笑)

 

 自己紹介の際にフーコーのbio-politiqueのことについて触れたら、デリダをご専門にされているM先生があとで話しかけて下さり、

フランス現代思想トークでちょっと盛り上がったりもしました。副専攻制度についても色々と裏ワザ(「テーマ専攻」といって、自分の興味

にあわせて学科横断的にプログラムを組むことができるそうです。最初から研究テーマが決まっている人にはとてもいい制度ですね。)

があるようで、先輩方からそのように様々なワザを聞いたりして時間を過ごし、挨拶をして部屋を後にします。

 

 いやー、しかしこの学科は大変そうです。演習の授業でラカンのセミネールを読んだりしているそうですが、日本語で読んでも難解な

あのセミネール(フランス語文献の中でも屈指の難解さで有名でしょう)を果たして読めるのか。

セミネール以前に、一ヶ月後の歓迎コンパでフランス語でスピーチしろと言われたので、それも考えておかねばなりません。

日本語ならいくらでも話せるんですが、フランス語となると小学生レベルになってしまいます・・・困ったらカルメンのセリフやヴァレリーの

名文でも引用してやり過ごすことにします。

 

 ガイダンスをすべて終了したところで、ガイダンス中に仲良くなったアメリカ科進学予定の友達I君から「ビリヤード出来ます?」と電話が

かかってきたので、二つ返事で一緒に行くことに。I君の友達と、それから僕と同じクラスから地域(たぶんアメリカ科)に進学したT氏も

一緒でした。I君はビリヤードサークルに入っていると聞いたので、久し振りに真剣に突けそうな予感にワクワクしながら下北沢へ移動。

I君と8ボールをずっとやっていましたが、彼は弱い力加減のショットが大変うまく、厚みも近いところは良く見えており、結構な腕前です。

イージーな配置に持っていくと二つ三つは軽く取ってくるので、あまり手が抜けない。僕自身、本気で球を突くのは久し振りですぐには

調子があがりませんでした(入れは良くても出しの精度がかなり落ちていました)が、二セットほど突くうちにクッションの感覚や

ハウスキューの回転の乗りを掴み(とはいえ、いつもマイキューに強烈なドローのかかるメウチを使っているので、ハウスキューのドロー

がどこまで引けるか全く分からず最後まで怖かった)、6-2でなんとか勝つことができました。ゲームをこなすうちにI君とも仲良くなり、

「ビリヤードを通じてほぼ初対面の人と仲良くなれるなんて、やっぱビリヤードはいいよね」なんて話をしながら解散。

初日にして地域文化研究科ビリヤード同好会が出来あがったような感じです(笑)

 

 フランス語の学習は一筋縄ではいかなさそうですが、地域文化研究科のアットホームな雰囲気は大いに楽しめそう。

まだ授業は始まっていないものの、今の時点で自分の進学先にはとても満足しています。あとは語学!

 

うちのクラスは凄かった

 

 あるプロジェクトの資料に用いる図のデザインを頼まれていたので、駒場で四時間ほどかかって仕上げる。

このプロジェクトの名前を公にする日もそろそろだろう。きっと相当大きな企画になるに違いない。楽しみだ。

 

 作業をやりながら自分のクラスの友達がどこへ進学先を決めたのかを聞いたのだが、驚くべき結果が明らかになった。

なんと、僕のクラス(文三 十五組)から、四人も法学部へ進学していた!!これは驚かずにはいられまい。

今年度、文三から法学部への進学に成功したのは全員で九人。そのうちの四人がうちのクラスから、というのだから凄いことだ。

周知のように文三から法学部へ進学するためにはかなりの高得点が必要になってくる。高得点だけではなく、「チキンゲーム」、

つまり「一次調査で出したものの、無理そうなのでやっぱり降りる。」「いや、誰かが降りると読んで突っ込む。」というような、

インディアンポーカーめいたゲームを乗り切る「読み」と「度胸」と「運」が必要になってくる。四人のうち、二人は圧倒的な点数をもって

法学部への進学を決め、残る二人は大胆極まりない「読み」によって法学部への進学を成功させた。すごい。

文三のクラス(我々のクラスは三十一人いる。)から、四人が法学部へ進む。これは過去最多ではないだろうか。

 

 ちなみに、みんなの進学先を集計していったところ、我々のクラスから最も多く進学した学科は法学部である可能性まで出てきた。

(文学部を文学部として纏めてしまうとそこが一番多くなってしまうので、法学部と文学部の各学科を比較することにはなるが)

進学先の人数的には、法学部=文学部社会学科>教養学部>文学部英文学科=文学部国文学科=文学部哲学科>etc

という順番になっているはずだ。これは相当に異常な結果である。二年間を一緒に過ごして来てこのクラスの凄さは十分に知っている

つもりだったが、改めてそれを味わった。なんにせよ全員進学先をきっちり決めたようなので、進振りおつかれコンパでも開きましょう!

 

 夜、二日連続で指揮法レッスン。

今日は脱力のコツと、音楽の流れに任せることを教わった。終了後にはアーノンクールのビデオを鑑賞した。

まだアーノンクールの頭髪が黒々としていたので、きっと若かりし頃の映像だろう。そのあと、先生の過去の演奏会のDVDを鑑賞。

曲目はベートーヴェンの五番。見事なまでの脱力と、打点の分かりやすさ、無駄のない動きに毎回のごとく感動。

帰り際に先生が最後に下さった、「音楽に限らず、芸術は【感じる】もので、中から溢れ出すものだよ。内から突き動かされなくっちゃ。」

というアドバイスがとても印象的だった。自ら音を出すのではない指揮者は、音を出さないからこそ、目に見えない〈なにか〉を持ち、

それを伝えなければならない。〈なにか〉は、四拍子をどう振るとか叩きを鋭くとか、そういうテクニカルな問題を超えたところにある。

自分のうちから〈なにか〉が溢れ出して、電流のように棒の先から演奏者の心へ伝えられるようになりたい。

 

 そんなことを考えながら雨の帰り道を歩く。

ふと、エリック・ハイドシェックと話したときにアドバイスを求める僕に向かって彼が優しい笑顔でくれたメッセージを思い出した。

 

「難しい事はありません。ベートーヴェンが音楽の本質を言い切っています。『心から心へ』と。音楽はあなたの中にあるのです。」