October 2009
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嵐の後に。

 

 嵐が過ぎて、空は澄み渡って青かった。青いだけではなく、高い。秋の空だ。

降り注ぐ光は夏の面影を感じさせるが、高く広がる空と吹き抜ける風はどうしようもなく秋だった。

 

 夕刻、陽が沈むと秋の香りが辺りを覆い尽くした。

秋、それも晩秋の香り。悲しい事がなくても泣きたくなるような、人を一人にする香りだ。いつもより街が静かに見える。

見上げた空は濃いブルーブラック。そこに浮かんだ月の透明さに足が思わず止まる。風が吹く。季節が変わったことを実感する。

 

 と小説っぽく書き出してみたものの、あまり意味は無い。いつものように近況を幾つか書いておくことにする。

 

・授業

授業を大量に取り過ぎてフランス語を自学自習する時間が予想以上に減ってしまったので、授業を少し削って空きコマを増やした。

そういえば相関社会学基礎論の授業で大澤真幸『意味と他者性』(勁草書房)に収められている「規則随順性の本態」について

発表することになった。中々読みづらい論文だが、後に大澤の主張の中核となる「第三者の審級」に相当する部分が多々見られる。

 

・本

何もしていない時間は語学の勉強に殆ど割いているため、最近あまり本を読めていない。台風がやってきたので刺激されて本棚から

新潮出版から出ているヘッセ全集3『春の嵐』を取りだしてざっと流して再読したぐらい。あとは『宣伝会議』という雑誌と『東洋経済』

という雑誌を読んだぐらいか。今日、S氏に「国際政治学を学ぶ上での参考文献」的な書籍を見せてもらったのだが、そのクオリティの

高さに感動した。150ページぐらいあるその本の内容全てが文献紹介で、ざっと5000冊ぐらい挙げられている!読んだことのある本も

ちらほらとは見つけられたがそれも100冊程度に過ぎなかった。この50倍読むべき本があるのかと思うと、やる気が湧いてくる。

S氏と「このリストを見て、秘書の人に『あ、ごめん。ここに挙げられてる5000冊全部注文しといて。それから5000冊入る本棚と。』

なんて言える人になれたらなあ。」などと妄想してみたりする。それにしても、部屋の壁一面に巨大な本棚(もはや本棚というより壁)

がある部屋には心から憧れる。石田衣良の写真なんかで写っている「アレ」だ。他が多少狭くても構わないから、そんな家に住みたい。

 

・ともだち

東大駒場にはAIKOMという交換留学制度があるのだが、そこで海外から来た方のチューターを後期教養の学生がやることに

なっていて、僕も勢いでそれに応募してみたら結構倍率の高いセレクションを通ってしまったらしく、チューターをやることに。

相手はグルノーブル大学から来た、とても物腰の柔らかいフランス人のBastien。ここぞとばかりにフランス語で挨拶をしてみたり

自己紹介をしている間に気付いたのだが、彼は相当に日本語が出来る。ペラペラ、と言っても過言ではない。

これは英語をあまり使う必要が無さそうで、彼が日本語で知らない単語を説明するのに使ったりする程度になりそうだ。

僕が日本語を教え、Bastienがフランス語を僕に教えてくれるということで、日仏間の交流は順調にスタートした。

彼は穏やかで上品で、とても親しみやすい。今日一日話したりご飯を食べたりしている間にすっかり仲良くなった。

ヴァイオリンをやっているそうで、イタリアントマトで昼食をとりつつ「好きなヴァイオリニストは?」というテーマでひとしきり盛り上がった。

(僕はGinet NeveuとArthur Grumiauxを挙げ、彼はItzak PerlmanとZino Francescatttiを挙げた。)

明日、留学生たちと東京見学に出かけるのでまた色々話が出来ることと思う。楽しみだ。

 

・薪能

駒場の図書館前に特設セットを組んで能が上演された。なんとあの野村萬歳を含む超豪華キャスト。

いつも何もない空間に舞台が現れ、いつも学生の声が聞こえる空間は異質の空間へと変容した。

 

・ボウリング

最近200アベレージを維持できている。調子が悪くなるときにチェックすべきポイントが固まってきた。やはり、静から動に移る瞬間、

つまり一歩目の踏み出しとダウンスイングがフォームの核だ。これが上手くいっている時はバックスイングで掌がボールにくっついている

感覚を得ることができるし、リリースの際に掌で押す感覚が味わえる。小指にも意識が行き届く。この調子を続けたい。