あるプロジェクトの資料に用いる図のデザインを頼まれていたので、駒場で四時間ほどかかって仕上げる。
このプロジェクトの名前を公にする日もそろそろだろう。きっと相当大きな企画になるに違いない。楽しみだ。
作業をやりながら自分のクラスの友達がどこへ進学先を決めたのかを聞いたのだが、驚くべき結果が明らかになった。
なんと、僕のクラス(文三 十五組)から、四人も法学部へ進学していた!!これは驚かずにはいられまい。
今年度、文三から法学部への進学に成功したのは全員で九人。そのうちの四人がうちのクラスから、というのだから凄いことだ。
周知のように文三から法学部へ進学するためにはかなりの高得点が必要になってくる。高得点だけではなく、「チキンゲーム」、
つまり「一次調査で出したものの、無理そうなのでやっぱり降りる。」「いや、誰かが降りると読んで突っ込む。」というような、
インディアンポーカーめいたゲームを乗り切る「読み」と「度胸」と「運」が必要になってくる。四人のうち、二人は圧倒的な点数をもって
法学部への進学を決め、残る二人は大胆極まりない「読み」によって法学部への進学を成功させた。すごい。
文三のクラス(我々のクラスは三十一人いる。)から、四人が法学部へ進む。これは過去最多ではないだろうか。
ちなみに、みんなの進学先を集計していったところ、我々のクラスから最も多く進学した学科は法学部である可能性まで出てきた。
(文学部を文学部として纏めてしまうとそこが一番多くなってしまうので、法学部と文学部の各学科を比較することにはなるが)
進学先の人数的には、法学部=文学部社会学科>教養学部>文学部英文学科=文学部国文学科=文学部哲学科>etc
という順番になっているはずだ。これは相当に異常な結果である。二年間を一緒に過ごして来てこのクラスの凄さは十分に知っている
つもりだったが、改めてそれを味わった。なんにせよ全員進学先をきっちり決めたようなので、進振りおつかれコンパでも開きましょう!
夜、二日連続で指揮法レッスン。
今日は脱力のコツと、音楽の流れに任せることを教わった。終了後にはアーノンクールのビデオを鑑賞した。
まだアーノンクールの頭髪が黒々としていたので、きっと若かりし頃の映像だろう。そのあと、先生の過去の演奏会のDVDを鑑賞。
曲目はベートーヴェンの五番。見事なまでの脱力と、打点の分かりやすさ、無駄のない動きに毎回のごとく感動。
帰り際に先生が最後に下さった、「音楽に限らず、芸術は【感じる】もので、中から溢れ出すものだよ。内から突き動かされなくっちゃ。」
というアドバイスがとても印象的だった。自ら音を出すのではない指揮者は、音を出さないからこそ、目に見えない〈なにか〉を持ち、
それを伝えなければならない。〈なにか〉は、四拍子をどう振るとか叩きを鋭くとか、そういうテクニカルな問題を超えたところにある。
自分のうちから〈なにか〉が溢れ出して、電流のように棒の先から演奏者の心へ伝えられるようになりたい。
そんなことを考えながら雨の帰り道を歩く。
ふと、エリック・ハイドシェックと話したときにアドバイスを求める僕に向かって彼が優しい笑顔でくれたメッセージを思い出した。
「難しい事はありません。ベートーヴェンが音楽の本質を言い切っています。『心から心へ』と。音楽はあなたの中にあるのです。」