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こんなものを買った

 

 ゆっくりと文章を打つ暇が無く、すっかり更新が滞ってしまっていた。

なぜこんなに時間が無いのかというと理由は簡単で、ただテストが近いからだ。ドイツ語のテストに続いて英語のテスト。

進振りを目の前にしたこのテストは自分の一生を決める可能性があるから必死に勉強する。

連日近所のデニーズでコーヒー1杯だけで朝方まで粘る日々だ。とはいってもずっと勉強しているわけではなく、買い物や

ボウリングなどでそれなりに外へ出かけている。というわけで(?)最近買ったものをあげてみよう。

 

・MDノート(雑誌サイズ) 

愛用のノート。横罫と無地と方眼を一冊ずつ買ったので、用途に応じて使い分ける。万年筆から鉛筆まで、ノリが非常に良い紙で

180度開くあたりも書きやすくて良い。雑誌サイズは通常のノートやルーズリーフに比べてかなり大きいが、ここに太いニブの万年筆で

ガシガシ書きつけるのが気持ちいい。

 

・オロビアンコのショルダー

ジャーナルスタンダードの別注モデル。白と光沢のあるネイビーとの配色に一目惚れした。夏らしい配色で良い。

なんとセールにつき40%オフでゲット。バッグはマスターピースのボストンやGripsのショルダーを長く使ってきたが、

この夏はメインバッグの座をこいつに渡しそうだ。

 

・エディフィスのリネンシャツ

生地と色合いに一目惚れ。色が鮮やかなので、着るのにはやや躊躇する。襟がワイドスプレッドになっていて面白い。

 

・コンタクトレンズ

はじめてコンタクトをつけに行ったとき、看護婦に「あなたには無理ですね」と言われて早6年。

最初は本当に入らなかったし、入れるのに30分ぐらいかかったから、高校では体育の授業の前の時間から用意していたが

今となっては入れたあと号泣する事も無く当り前のように入れている。ワンデーなので出費は馬鹿にならない。

(知り合いが以前、ワンデーのレンズを表4日裏3日入れたそうだ。最終的に視界が真っ白になったとか。怖すぎる。)

 

・雑誌Pen 7月号

テーマが「緑のデザイン」だったので、今関わっているプロジェクトに生かせないかと思って購入。

そんなことを抜きにして面白かった。秋葉原の町に芝生を引いた画像(もちろんコラージュ)は、見る者の目を奪うアートだ。

 

・資生堂Menのクレンジング

この泡はヤバい。パーフェクトホイップなんて目じゃないです。少量で物凄く厚みのある泡が立つ。資生堂の本気を見た気がします。

これを購入後、資生堂Menのテスターキットが自宅に届きました。抽選で当たったようです。

 

・樽珈屋の珈琲豆

浪人中からずっとお世話になっている珈琲屋さんの豆。我が家に無くてはならないものなので、毎月購入している。

この店の豆で「珈琲には甘みがある。」ということを知った。珈琲はお酒と同じくらい嗜好品の性格が強いものだと思わせてくれた。

豆をカリタのナイスカットミルで挽いてお湯を落とした瞬間から、室内に幸せな香りが満ちる。俄然勉強する気になる。

 

・むきえび

近くのスーパーで特売になっていたので迷わず購入。これとホイル焼きにしたガーリックとトマトソースで作るパスタは最高だ。

仕上げにいつもシーバスリーガル12年を香りづけにかけるのだが、今回はグレンモーレンジでやってみようと思う。なんという贅沢。

 

・スイカバー

種に模したチョコチップが最高。

棒にくっついた形式のアイスは制限時間がその内に含まれている(スーパーマリオの横スクロール的な)のでどうも慌ただしくなる。

時間が過ぎると重力の影響をモロに受けて服が甚大な被害を受けることになります。学生の夏の風物詩ですね。

 

 

 

 

 

 

人生を変えた一冊:『十六世紀文化革命』と越境者への憧れ

 

 よく晴れた土曜日、久しく吹いていなかったフルートを片手に、散歩へ出かけた。

外はどこまでも明るい。陽射しが肌に触れたかと思うと、涼しげな風がその温度をそっと奪ってゆく。

6月はもうすぐ終わる。そして7月がやってくる。この夏はどんな夏になるのだろう、と考えつつ、公園のベンチに腰を下ろし、

再読している『磁力と重力の発見』(山本義隆,みすず書房 2003)を開ける。

中学生のころ以来、尊敬する作家の真似をして読んだ本にサインと日付を入れることにしている。この本も例外では無い。

裏表紙の見返し部分を開けてみると2007.7.4とあった。

 

 そうだ、この本を読んだのはちょうど今みたいな天気の日だった。当時の僕は自習室に籠ってモラトリアムに浸っていた時期で、

「音楽室」と書かれたスリッパ(母校の音楽室のスリッパを記念に貰ってきた)を履いたままダイエーのジュンク堂三宮店に行って、

毎週大量に受験と関係ない本を買い込んではひたすらそれを読んでいく生活をしていた。

一年間で300冊ぐらい買ったと思うが、その中でもこの『磁力と重力の発見』には一際思い入れがある。

恩師の一人、駿台世界史科の川西先生にこの『磁力と重力の発見』と、同じ著者の『十六世紀文化革命』を勧めて頂いたのが

きっかけだった。この二冊は夏の暑さを忘れるほど衝撃的な本で、近くに迫っていた東大実戦などの模試をそっちのけにして

一気に最後まで読み通したのを覚えている。読み終わってから川西先生に再び会いに行ったとき、

「それだけ感動したなら、感想文を書いて著者に送ってみなさい」と勧められ、無謀にもあの山本義隆氏にレポートめいたものを

書いて、本当に送ってしまった。内容のほとんどは感想文のようなものだが、当時愛読していた大澤真幸の著作との関連点を指摘

してみたり、僕が得意とする音楽史の領域から『十六世紀文化革命』説を補強することになるのではと思われる事項を指摘してみた。

 

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「プロテスタントは印刷技術を積極的利用した。しかしカトリックは警戒的であった。」という点に乗じて、西洋音楽史からの

以下の指摘は的外れでしょうか。

 

「ルターは宗教における音楽の意義を重視したため、カトリック教会におけるグレゴリオ聖歌にあたるものをプロテスタント教会にも作り出す必要を感じていた。そうして生まれたのがコラールである。どことなく神秘的なグレゴリオ聖歌(歌詞はラテン語)に対して、宗教改革の意図に則り、あらゆる階層の人々に広く口ずさまれることを目的としたコラールは、民謡のように親しみやすく暖かなトーンが特徴である。(歌詞はドイツ語、一部は民謡編曲である)」(岡田暁生「西洋音楽史」による)

 

ここにはプロテスタントの「民謡の活用」と「俗語であるドイツ語の歌詞を採用」という二つの特徴が表れていると思います。

その意味でこれは16世紀文化革命の説を補強するものになると考えます。

さらに、プロテスタントとは離れますが、音楽史という観点で言うと、「マドリガーレ」について述べる事は十六世紀文化革命の説を更に裏付けるものになるのではないでしょうか。すなわち、

 

「マドリガーレは世俗的な歌詞(イタリア語)による合唱曲で、内容は風刺的だったりドラマチックだったり田園的だったり官能的だったりする。このマドリガーレはとりわけ十六世紀末にきわめて前衛的な音楽ジャンルとなり、後述するように音楽のバロックはここから生まれてきたといっても過言ではない。」(同書より)

 

「俗語による表現であり、さらに実験的な要素を持っており、17世紀のバロック音楽を準備した」

ものがマドリガーレであると捉えるならば、これは16世紀の職人の運動と近似しているのではないかなとふと思いました。

「16世紀文化革命の大きな成果は、17世紀科学革命の成果を下から支える事になる」という点でも共通しているのではと考えます。

 

 

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 一か月もしないうちに、氏から直筆の返事が届いた。手紙には、上で指摘した内容が盲点であったこと、そして早く大学に入って

更なる勉強を続けなさい、という事が書かれていた。東大へ行く意味が分からなくなって些かアイデンティティ・クライシスに

陥りかけていた僕にとって、この手紙は効いた。優しい文章なのに痛烈に響いた。

 

 あれからもう二年近くが経った事に、月日の早さを思い知る。

ウォーターマンのブルーブラックで書きつけたサインと日付はすっかり変色してブルー・グリーンに近い色になっている。

だが、この『磁力と重力の発見』と『十六世紀文化革命』の衝撃は今なお色褪せない。

この二冊からは、アカデミズム内部の思考停止に陥らず、知識を秘匿することなく、自然に対する畏怖の念を持ち続けるといった

姿勢を通して、強靭な思考を築いて行くことを学んだ。その上で、『十六世紀文化革命』で描かれている十六世紀の職人達が

勇気を持って大胆に「越境」したように、常に枠組みを越境する人間になりたいと思った。

 

 

 間違いなく、僕の人生を変えた本のうちの一つだ。はじめて読んだ二年前と同様、背筋がゾクゾクするような感動を覚えながら、

二年前を思い出して身が引き締まるような思いをしながら、再びページをめくる。至る所につけられた印や書き込みがどこか眩しい。

 

 ページの上に、緑のフィルターを通って光と影が降り注ぐ。また夏がやってくる。