フランスでは、パリ国立高等音楽院(いわゆる「コンセルヴァトワール」)にも行ってきました。
コンセルヴァトワールはパリの中央からやや外れた場所、ラ・ヴィレットの方にあります。中に入ると意外にアジア系の人がたくさん。
日本人の姿も見られました。みな留学されていらっしゃる方でしょうか。もしかしたら音楽の知り合いと擦れ違っていたかもしれません。
コンセルヴァトワールで面白かったのは、各練習部屋に作曲家の名前がつけられているところ。「ジョリヴェ」や「バルトーク」など、
ひとつひとつ名前と色がつけられていて、それを見て回るだけでも飽きないぐらいです。
ひとしきりコンヴァト内を回った後、近くにある音楽博物館へ行ってきました。
これがまた面白い!音楽をされている方は絶対楽しめます。音声ガイドがついていて(ただし英・仏のみ)、
展示されている楽器の音を聴くことが出来ます。器楽の発展に合わせて配列されているので、じっくりと音を聴きながらここを
回るだけで、かなりの知識をつけることが出来るでしょう。観光客はそれほど訪れないようで、閑散とした広い空間を心行くまで
堪能。途中に「古楽器生演奏コーナー」みたいなスペースがあって、お姉さんが暇そうにしていらっしゃったので
いくつかの曲や楽器を一対一で聞かせて頂くという贅沢な時間を過ごしたりもしました。終わったあと、拙いフランス語で
「日本から来ました。僕も音楽やってるんです。」と話しかけると、目を輝かせて下さり、
「ようこそフランスへ!指揮をやってるの?日本ではどう振るの、ちょっとやってみてよ。」と話が盛り上がって一時間ぐらいそのコーナーで
おしゃべり。(妙に意気投合して、一緒に写真まで撮ってしまいました) 語学と音楽をやっていて良かったなあと心底思わされた、
幸せな時間となりました。
帰りには電車を上手く乗り継いで、フラゴナール&カピュシーヌ香水博物館を見学して「調香師の天秤」に感動したり、
カルチェ・ラタンの方角まで足を伸ばしてソルボンヌ大学の近くをぶらぶらとしてきました。びっくりしたのは、人混みの中でなんと
フランス科の院生の先輩(同じくこのセミナーに参加されていたのです)に遭遇したこと。
僕はソルボンヌ大学近辺から降りてきて、先輩は本屋の近くから出てきてばったり。まさかフランスで偶然会うとは!
駒場キャンパスの銀杏並木で擦れ違った時とほとんど同じように「やあ、奇遇だね。」と世間話をして、「またドイツで会おう。」と
あっさりと解散。世界は狭いです。
パリの街を歩いていると気になるのは、やはりパサージュ。
ベンヤミンを読んだからにもパサージュ巡りは外せません。脚が限界を叫ぶまでは歩き倒します。
疲れたらカフェへ飛び込むだけ。昼から呑むのもこちらでは普 通ですので、抵抗は全くありません。
チュイルリー公園の静かなベンチで、冷えた白を飲みながらゆっくり本を広げたりもしていました。一人旅ならではの贅沢な時間ですね。
すっかり暗くなったころ、ホテルのあるピガールの街へ戻りました。昼とは全然違って、夜のピガールはまさに歓楽街と言う感じ。
ムーラン・ルージュの大きな風車が煽情的な色で回り、あたりのお店でもネオンが怪しく輝きます。
少し裏地に入ると、映画によく出てくる「娼婦のいるバー」というのが至る所にあって驚きました。
物憂げな視線でガラス越しに眺めてきたり、扇情的な服装で煙草を吹かせつつス ツールに座っていたり。
ネオンの中に広がる薄闇と女のこの構図は、確かに映画に使いたくなるほど、独特の魅力を放っているように感じられました。
何もかも新鮮で刺激に満ちた一日。
歩き疲れてベッドへ倒れ込み、ぐっすりと寝てまた明日に備えます。
滞在してまだ間もないのに、いつのまにか「しばらく帰りたくないなあ。」という思いが浮かんでいました。