November 2024
M T W T F S S
« May    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

立花隆&佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方』(2009,文春新書)

 

 『ぼくらの頭脳の鍛え方』を読んだ。

おそらく世界最速レビューだろう。それもそのはず、この本はまだ発売されていない。(発売日は今月20日ごろ)

今日の立花ゼミで何気なく立花先生が下さったので、ゼミの時間中に隙を見つけて読み切ってしまった。

 

 内容は立花隆と佐藤優の対談形式から成り、話の中でお互いがお勧めの本を紹介しあっていくというもの。

立花隆『ぼくはこんな本を読んできた』を二人で対話しながら書いているような感じである。「本を紹介する本」は、ともすれば退屈で

独りよがりなものになってしまいがちだが、この本は全く違う。挙げている本が参考になるのはもちろんのこと、

その情報量が非常に濃いし、何より二人の対談がとても面白い。細木数子について取り上げているくだりでは、ついついニヤニヤ

しながら読んでしまった。このようにちょっと小ネタに話を移したかと思うと、その小ネタに関連する本へとすぐ話が移ってゆく様子は

まるで友達と雑談しながら本棚の前をうろうろしているようだ。本を肴に会話を楽しんでいる。

このような会話こそ、「知的」と呼ばれて然るべき会話の形の一つだと思う。

ここに挙げられている400冊の本を学部時代に読み切っておこうと決心し、未読のものをamazonでカートに突っ込みまくった。

当然お金が心配になってくるが、この本の中でお二人は「買おうか迷ったらとりあえず買う。本を買うのを惜しむな。」ということを

言っておられるし、その通りだと僕も思うから、金銭的問題は考えないことにする。(もちろん後で必死に仕事する羽目になるのだが)

とにかく良い本でした。この一冊から沢山の本へと手を伸ばしていくことが出来る、「知の起点」となる一冊だと言えるでしょう。

 

 立花ゼミもだんだん熱が入ってきて面白くなってきた。駒場祭で立花ゼミが行う企画のために、一般の方から

『二十歳の君への宿題』と称して「二十歳の間にこれをしておけ!」というメッセージを集めることになった。

これはもうすぐゼミのHPにメールフォームを設置して(技術班の方々いつもお世話になってます。)そこに書き込んでもらうことで

集めるつもりだ。このブログを読んで頂いている方で、20歳以上の方はぜひご協力ください。

 

 立花ゼミ関連以外では、Claude Lévi-StraussのAntholopologie Structurale(邦訳『構造人類学』)を読むのに必死。

原書で読むと本当に時間がかかって途中で投げ出したくなることもしばしばだが、原書でしか分からないニュアンスやユーモアもあるし、

何よりフランス語のとても良い勉強になる。語学に堪能な人は「とにかく読んで読んで読みまくることがあらゆる語学の上達のコツだ。」

とよく言うが、確かにその通りなのだろう。「読めるようになるために読む」ことが必要なのだ。

 

 指揮のレッスンも順調に進んでいる。今日は振ることばかりに頭が行っていて、静から動に移る瞬間、すなわち振り始めに意識が

足りていない事を指摘された。「二拍目の打点を低くしないように気をつけて振ろう。あと四小節目で柔らかく振らないと。」

などと振り始めてからのことばかり考えている僕を見透かしたように、「振る前、構えたところから音楽は始まっているんだよ。」と

言われて、とてもビックリした。先生には僕らには見えない「何か」が確実に見えている。

「何か」が見えるようになるためには、幾つの壁を超えなければいけないのだろうか。先は長く、遠く、果てしない。

 

東京見学

 

 留学生たちを東京見学へ案内してきた。

朝の十時に浜松町に集合して水上バス、それから浅草、上野、本郷、駒場と回るとてもハードな行程。

途中、雨が降り出してどうなることかと思ったが、雨はすぐ止んですぐに青空が広がった。

Bastienと「屋形船」の屋形がいったい何なのかで議論したり、「かもめ」をフランス語で何と言うか教わったりしているうちに

一瞬で水上バスは浅草に着き、雷門のあたりで解散して自由行動に。自由行動といってもさほど行先があるわけでもなかったので、

今回の東京見学で仲良くなった数人の東大生とフランス(BastienとHanika)、ドイツ、オーストラリアの四人の留学生たちと一緒に

あたりを散策したり食べ歩きをしたりした。

 

 途中、「たこ焼きとは何なのか」と聞かれたので困惑しながら

「まずcutされたoctopusがinしててですね、そのCoverstockというか外側は・・・英語で何と言ったら良いのか・・・とにかく卵を

混ぜ込んだSecret Powderを焼いて包むんですよ。ちなみにこれは大阪の名物で、大阪人の誇りと言っても過言ではない。」

なんて内容を伝えてみたのだが、明らかに過言なうえ、少なくともSecret Powderはおかしかった気がする。

まあ美味しそうに食べていたからいいとしよう。

 

 人形焼きから団子までいろいろ食べたのだが、今回一番のヒットは「冷やし抹茶」なるドリンクだった。ちょうど煎餅で喉が渇いていた

せいもあったとは思うが、なんだか異常に美味しく感じられた。Bastienもこの美味しさがツボに入ったらしく、僕のを少し飲んだあと

自分でも一杯買っていた。これはおすすめです。

本郷キャンパスへは上野で降りて不忍池から歩いて行ったのだが、沈み始めた夕陽と一面の蓮が広がる景色がとても美しかった。

(蓮について色々質問されたが、詳しく答えられずに悔しかったので、帰宅してすぐにwikipediaなどでLotusの項を読んでおいた。)

 

 駒場キャンパスに戻ってきたころにはみんなヘトヘト。だが、イギリス美人のZoeは元気そのもので、僕がPolitical Philosophyを

勉強していると言ったら「政治哲学! 私も政治学を勉強しているから結構わかるよ。誰に興味がある?」と超高速のイギリス英語で

話しかけてきて(超高速だったから色々聞き落しているに違いない。早送りみたいなスピードでした。)、ロールズの正義論について

などのテーマでいろいろ話した。そのあとは生協食堂三階でパーティ。留学生たちがどんどんと寿司を食べてゆくのには驚いた。

パーティのころになると英語の連射に疲れてしまっていたので、今回の東京見学で仲良くなった駒場の学生たちと話したり

Bastienと日本語でまったり話したりして時間を過ごす。たまたま関西出身の人間が多かったので、お約束ではあるが

Bastienに「なんでやねん」(≒No Kidding?)を教えておいた。

相当に疲れたが、とても実りのある一日で幸せだったと思う。フランス語と英語を勉強するモチベーションが強烈に湧いた。頑張ろう。

 

嵐の後に。

 

 嵐が過ぎて、空は澄み渡って青かった。青いだけではなく、高い。秋の空だ。

降り注ぐ光は夏の面影を感じさせるが、高く広がる空と吹き抜ける風はどうしようもなく秋だった。

 

 夕刻、陽が沈むと秋の香りが辺りを覆い尽くした。

秋、それも晩秋の香り。悲しい事がなくても泣きたくなるような、人を一人にする香りだ。いつもより街が静かに見える。

見上げた空は濃いブルーブラック。そこに浮かんだ月の透明さに足が思わず止まる。風が吹く。季節が変わったことを実感する。

 

 と小説っぽく書き出してみたものの、あまり意味は無い。いつものように近況を幾つか書いておくことにする。

 

・授業

授業を大量に取り過ぎてフランス語を自学自習する時間が予想以上に減ってしまったので、授業を少し削って空きコマを増やした。

そういえば相関社会学基礎論の授業で大澤真幸『意味と他者性』(勁草書房)に収められている「規則随順性の本態」について

発表することになった。中々読みづらい論文だが、後に大澤の主張の中核となる「第三者の審級」に相当する部分が多々見られる。

 

・本

何もしていない時間は語学の勉強に殆ど割いているため、最近あまり本を読めていない。台風がやってきたので刺激されて本棚から

新潮出版から出ているヘッセ全集3『春の嵐』を取りだしてざっと流して再読したぐらい。あとは『宣伝会議』という雑誌と『東洋経済』

という雑誌を読んだぐらいか。今日、S氏に「国際政治学を学ぶ上での参考文献」的な書籍を見せてもらったのだが、そのクオリティの

高さに感動した。150ページぐらいあるその本の内容全てが文献紹介で、ざっと5000冊ぐらい挙げられている!読んだことのある本も

ちらほらとは見つけられたがそれも100冊程度に過ぎなかった。この50倍読むべき本があるのかと思うと、やる気が湧いてくる。

S氏と「このリストを見て、秘書の人に『あ、ごめん。ここに挙げられてる5000冊全部注文しといて。それから5000冊入る本棚と。』

なんて言える人になれたらなあ。」などと妄想してみたりする。それにしても、部屋の壁一面に巨大な本棚(もはや本棚というより壁)

がある部屋には心から憧れる。石田衣良の写真なんかで写っている「アレ」だ。他が多少狭くても構わないから、そんな家に住みたい。

 

・ともだち

東大駒場にはAIKOMという交換留学制度があるのだが、そこで海外から来た方のチューターを後期教養の学生がやることに

なっていて、僕も勢いでそれに応募してみたら結構倍率の高いセレクションを通ってしまったらしく、チューターをやることに。

相手はグルノーブル大学から来た、とても物腰の柔らかいフランス人のBastien。ここぞとばかりにフランス語で挨拶をしてみたり

自己紹介をしている間に気付いたのだが、彼は相当に日本語が出来る。ペラペラ、と言っても過言ではない。

これは英語をあまり使う必要が無さそうで、彼が日本語で知らない単語を説明するのに使ったりする程度になりそうだ。

僕が日本語を教え、Bastienがフランス語を僕に教えてくれるということで、日仏間の交流は順調にスタートした。

彼は穏やかで上品で、とても親しみやすい。今日一日話したりご飯を食べたりしている間にすっかり仲良くなった。

ヴァイオリンをやっているそうで、イタリアントマトで昼食をとりつつ「好きなヴァイオリニストは?」というテーマでひとしきり盛り上がった。

(僕はGinet NeveuとArthur Grumiauxを挙げ、彼はItzak PerlmanとZino Francescatttiを挙げた。)

明日、留学生たちと東京見学に出かけるのでまた色々話が出来ることと思う。楽しみだ。

 

・薪能

駒場の図書館前に特設セットを組んで能が上演された。なんとあの野村萬歳を含む超豪華キャスト。

いつも何もない空間に舞台が現れ、いつも学生の声が聞こえる空間は異質の空間へと変容した。

 

・ボウリング

最近200アベレージを維持できている。調子が悪くなるときにチェックすべきポイントが固まってきた。やはり、静から動に移る瞬間、

つまり一歩目の踏み出しとダウンスイングがフォームの核だ。これが上手くいっている時はバックスイングで掌がボールにくっついている

感覚を得ることができるし、リリースの際に掌で押す感覚が味わえる。小指にも意識が行き届く。この調子を続けたい。

 

 

嵐の前に。

 

 学校が始まるとなかなか更新する時間がとれませんね。更新をサボっていた分、今回で一気に書いてしまいます。

 

・授業

キツイです。いやほんとに。予想以上の激しさでした。

フランス語中級会話に至っては授業中に日本語はもちろん、英語すらほとんど話される事が無く、全てがフランス語で展開されており、

正直かなり慌てました。頑張らねば。「文化の社会科学」という授業はこれから面白くなりそう。この授業中に「ブルーノ・タウトを

知っている人?」と先生が我々学生に問われたので、隈健吾の「反オブジェクト」を読んだばかりだったこともあり、

「桂離宮が~オブジェクト消去型建築が~崖の下に作った家が~」などと語りたくなりました。当てられませんでしたが(笑)

授業後、新しく仲良くなった友達から「地域文化フランス科ってどんな感じ?」と聞かれたので、ちょっと悩みながら

「うーん。ボンジュールでトレビアンな感じかな。」と適当に答えたところ、彼の笑いのツボに入ったらしいです。

適当に言ってみたもののこのフレーズは語感も良いので個人的にも気に入ってしまいました。これからフランス科を紹介する時は

この言い回しを定番ネタとして活用していきたいと思います。

 

・ボウリング

なんと練習投球の際にセミ・パーフェクトを達成しました。十一個ストライクを続けて来て、最後の一投で力んでしまいノーヘッドの6ピン。

296です。練習投球でスコアを気にすることなく楽に投げられたのが大きかったのでしょう。やっぱり意識するとだめですね。

そのあとに新オイルパターンのテスターを頼まれてやったのですが、こちらは最強に難しいレーンでした。投げる場所がない。

かなり奥までしっかりとオイルが入っており、結構回転数の多い僕でもフッキングに苦労するレーン。ただし、唯一レーンの左右二枚目

だけはオイルが薄いようで、ここを転がすといい感じに曲がります。ボウリングをやっている人なら容易に想像できると思いますが、

二枚目を投げるというのは相当怖いです。まっすぐ二枚目を投げればセーフ。少しでも外に向けると即ガター。

0.5枚(幅にして1cmぐらいでしょうか)外に投げたり外に向けると溝掃除というライン、これは恐怖です。

そもそも投げた瞬間からボールがガターにはみ出ているように見えます。こんな練習は中々出来ないと思い、ひたすら二枚目を投げる

練習をさせてもらいましたが、さきほどまで210あったアベレージが一気に150まで落ち込みました。

あんなにガターに落としたのは久しぶりです。神経を摩耗させました。

 

・立花ゼミ

立花ゼミの初回授業がありました。予想したよりはるかに多い人数が教室に詰めかけて下さり、椅子が足りなくて立ち見が出ている

状態。ただ、6時から始まり9時まで続くこのゼミのハードさに相当数が諦めたようで、9時まで残っている新規メンバーは10人足らず

でした。まさに自然淘汰、ナチュラル・セレクションです。これからどんどん面白い企画が出てくると思いますので、ガンガン動きましょう!

 

・おしごと

KIRIN-東京大学パートナーシッププログラムのフライヤーと、討議力養成プログラムのシンポジウムのフライヤーを依頼されたので

作成しました。KIRINの方は優しくて暖かな感じ、対照的に討議力養成プログラムの方は頭が冴えるような鋭くスタイリッシュな

デザインを「気になる色遣い」である「薄紫」でまとめてみました。これらはいずれwebで公開されるので、公開され次第お知らせします。

 

・かいもの

EDIFICEで革ブルゾンを購入。フード付きなのでハードすぎずいい感じです。薄さ以上に暖かいのでこれから重宝しそう。

それから新宿の世界堂でgiulisの白レザーバインダーを購入。これを小脇に抱えているとmacみたいです。そのあとにadam et lopeで

紫のオロビアンコショルダーを発見し、その発色の美しさについ買いそうになりましたが、ギリギリで耐えました。あれは危なすぎる。

あと、福沢諭吉の『文明論之概略』(岩波文庫)をS氏が二冊持っているとの事だったので一冊譲ってもらいました。ありがとう。

 

・台風

さきほどから風と雨が凄いです。ベランダに落ちる水滴の音が「ぽたぽた」から「ぼとぼと」、そして「じゃばじゃば」へと変わりました。

早稲田と筑波は午前中休校だそうですが、東大は「台風はともだち!」姿勢を貫いており、どうやら完全スルーする模様です。

 

 

時間割を組んでみた。

 

 長い間愛用しており、僕の勉強時間の多くを支えてくれていたgigabeat-Vの80GBモデルがぶっこわれた。

これに入れた全音楽データ(CDにして500枚ほど)と貴重なリハーサル・演奏動画が全部消えた。ショックすぎる。

特に何かをしたわけではないのだが、いったいなぜだろう。そろそろ中身を整理せよということだろうか。これがなければ勉強の

ペースが一気に落ちてしまうので、ダッシュで帰宅してリカバリー作業にとりかかる。リカバリーといっても家にあるCDを一から録音

しなおして手動で曲名を打ち込むという、死ぬほど地道な作業である。CD情報をネットから引っ張って来ても良いのだが、なんとなく

「第一楽章:アレグロ・コン・ブリオ」などと表記されるのが許せない。中学生でSonyのフラッシュメモリ型プレイヤーを使いだして以来、

曲目は「1st mov Allegro con brio」などの横文字表記で統一してきたために、そうでなければ微妙に落ち着かない。

ましてや演奏者表記が「アルトゥール・ベネディッティ・ミケランジェリ」などと表記されるのは耐えがたい。

というわけで500枚近くの曲目や演奏者データーをすべて手作業で打ち直す。現在150枚ぐらいを録音したところで力尽きた。

続きは明日にしよう。何の役にも立たないが、1st movと音速でタイピング出来るようになった。

 

 週明けから学校が始まるので時間割を組んでみた。

いくつかの専門科目(システムが良く分からない。地域の場合、小地域を決定するのは一か月先なのに、小地域の専門科目を

すでに取らねばならないのだろうか?というか、専門科目って単位認定されるのだろうか。副専攻まで考えたら意味不明な複雑さだ。)

はとりあえず取るとして、あとは前期教養の授業で面白そうなものとフランス語関連をいくつかと、後期教養の他学科の授業を取る。

 

 【月曜】

1限 フランス語初級会話・・・発音がヤバいのでネイティブの先生の授業を。起きられるかどうか怪しい。

2限  文化の社会科学・・・相関社会科学分科の授業。これは素直に面白そう。

3限  フランスメディア環境論・・・〈反復〉の詩的機能を確認するらしい。マラルメを読んでみたい。しかし「国際関係史」も捨てがたい。

4限  相関社会科学基礎論・・・シラバスは良く分からないが面白そう。

5限  全学ゼミ「ジャズダンス」・・・なんとなく(笑) 月曜はこのあとに試合が入ってるからあんまり動きたくないので、初回だけ覗くか。

 

【火曜】

1限  フランス思想テクスト分析・・・人類学的構造主義について。レヴィ=ストロースはちゃんと読んでいないのであさって購入する。

2限  フランス語会話中級・・・余裕があればとる。

3限  フランス歴史社会論・・・物凄くややこしそうな原典テクストを読むようだ。

4限  ドイツ語・・・必修。ドイツ語も忘れないようにせねば。

5限  ニーチェと現代or食ゼミ・・・ドイツ語の後なので。ドイツ系ではニーチェとハイデガー、ハーバーマスはしっかり読んでみたい。

 

【水曜】

1限  なし。ピストン・デヴォート『和声法』の勉強に充てる。

2限  フランス語精読or多文化主義研究・・・後者は相当ハードな予感だが、絶対面白そう。

3限  公法研究・・・カール・シュミット『独裁』を読む授業。政治哲学・政治思想にも興味があるので、シュミットはぜひ読んでおきたい。

4限  フランス語中級会話・・・これも余裕があれば。

5限  言語情報文化論・・・言語情報科学科の授業。なかなか面白そう。

6限  立花ゼミ・・・デフォルト。今学期は指揮レッスンの都合上、あまり遅くまでは残れないかもしれない。

 

【木曜】

1限  国際関係論・・・昨年受講したので、初回にちょっと冷やかすだけ。

2限  比較思想論・・・比較日本文化論学科の授業。ディスカッション主体っぽいので楽しみ。「軍縮と安全保障」という授業も気になる。

3限  国際取引・・・国際関係論分科の授業。たまには法律もやらないと。

4限  フランス表象芸術論・・・週一ぐらいのペースで表象文化論絡みの何かを入れたい。

5限  現代外交論・・・木曜日は国際関係論dayになりそう。実はこの時間の漢方医学を取りたいのだが、本郷は時間的に無理っぽい。

 

【金曜】

1限  なし。自分でフランス語を進める。

2限  メディア分析演習or文化人類学理論・・・せっかくなので文化人類学にも触れておきたい。

3限  フランス文学テクスト分析・・・ボードレールやランボーを読みます。

4限  方法基礎(ドゥルーズ)・・・もぐり。昨年の自分たちの発表によってドゥルーズを扱うことになったと思うので、展開が見たい。

5限  社会意識論or比較芸術orファッション産業政策・・・最後のはオムニバス的なゼミ。ちょっと覗いてみるぐらいかな。

 

 

 とても教養学部らしい時間割になった。後期教養の各学科の垣根の低さを出来るだけ利用しておきたいと思う。

しかしこれを全部取ると確実に死ぬので、実際にはここからかなり削る予定。

教育学部の金森ゼミにも潜りたいのだが、時間帯が不明なのでここには含めなかった。お手数ですがご存知の方は教えてください。

履修計画が被っているものがある方はよろしくです。

なお、午前中に椎名誠『全日本食えばわかる図鑑』(集英社)、夕方に山本文緒『あなたには帰る家がある』(集英社)を読了。

結婚っていったい何なんでしょうね。後者の本からは色々考えさせられます。

 

 

後期教養進学の第一歩

 

 後期教養学部(文系)のガイダンスがあったので出席してきました。

11号館の広い部屋に集まったわけですが、ざっと見て100人はいないぐらいの人数。後期教養の人数の少なさにビビったりもしますが、

見知った顔もちらほらとあって少し安心します。同じクラスで教養進学を決めた仲間たちと握手をして祝福しあったあと、

教室をぼんやりと見渡してあることを思い出しました。そういえばこの教室は、僕が一浪目に東大を受験したときの教室だった。

あれから三年。早いものですね。あの頃の自分と比べて何か成長したのかな、などと考えると、過ぎた時間の中にあった出来事に

色々と思うところがありました。

 

 全体ガイダンスでは、さまざまな先生によって「横に広く見ること」 「学問をつなげること」 「卒論しっかり」 「語学大変だよ覚悟しな」

などのアドバイスや脅しを頂きました。そのあと各学部に分かれてのガイダンスがあり、僕は進学先である地域文化研究科の

ガイダンスを聞いていたわけですが、各地域(アメリカ・ラテンアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・アジア)のコース主任の先生に

よって為される挨拶がまさに「その地域っぽい」挨拶ばかりで笑ってしまいました。(ドイツが一番シュールでした。)

わざとなのかもしれませんが、それでも言語が各学科の雰囲気に影響しているのは確かでしょう。

 

 そのあと、志望する各小地域に分かれて学部生室でのガイダンス。

どこの地域に進学するか悩んでいる人はいくつも回っていたようですが、僕は最初からフランスと決めていたので迷うことなくフランス科

の部屋へ突入。結構な冊数の本が棚に並んでいるのが目に入り、「おっとデリダの『触覚』がこんなところに。」などと思いながら

先輩方に案内されるまま席につきました。見渡すと内定生でフランス科に興味を持って来たのは僕を入れて6人で、先輩方の人数も6人

ぐらい。そこにフランス科所属の先生方と教務補佐の方が合わせて5人いらっしゃり、その少人数制にちょっと圧倒されます。

ましてや第二外国語ドイツ語で飛び込んで来たのは僕だけでしたし、過去にもそんなに例がないらしいので、冬学期に相当の勉強を

しておかないと大変なことになりそうな気配を感じます。まあ明らかに予想された展開ではありますが(笑)

 

 自己紹介の際にフーコーのbio-politiqueのことについて触れたら、デリダをご専門にされているM先生があとで話しかけて下さり、

フランス現代思想トークでちょっと盛り上がったりもしました。副専攻制度についても色々と裏ワザ(「テーマ専攻」といって、自分の興味

にあわせて学科横断的にプログラムを組むことができるそうです。最初から研究テーマが決まっている人にはとてもいい制度ですね。)

があるようで、先輩方からそのように様々なワザを聞いたりして時間を過ごし、挨拶をして部屋を後にします。

 

 いやー、しかしこの学科は大変そうです。演習の授業でラカンのセミネールを読んだりしているそうですが、日本語で読んでも難解な

あのセミネール(フランス語文献の中でも屈指の難解さで有名でしょう)を果たして読めるのか。

セミネール以前に、一ヶ月後の歓迎コンパでフランス語でスピーチしろと言われたので、それも考えておかねばなりません。

日本語ならいくらでも話せるんですが、フランス語となると小学生レベルになってしまいます・・・困ったらカルメンのセリフやヴァレリーの

名文でも引用してやり過ごすことにします。

 

 ガイダンスをすべて終了したところで、ガイダンス中に仲良くなったアメリカ科進学予定の友達I君から「ビリヤード出来ます?」と電話が

かかってきたので、二つ返事で一緒に行くことに。I君の友達と、それから僕と同じクラスから地域(たぶんアメリカ科)に進学したT氏も

一緒でした。I君はビリヤードサークルに入っていると聞いたので、久し振りに真剣に突けそうな予感にワクワクしながら下北沢へ移動。

I君と8ボールをずっとやっていましたが、彼は弱い力加減のショットが大変うまく、厚みも近いところは良く見えており、結構な腕前です。

イージーな配置に持っていくと二つ三つは軽く取ってくるので、あまり手が抜けない。僕自身、本気で球を突くのは久し振りですぐには

調子があがりませんでした(入れは良くても出しの精度がかなり落ちていました)が、二セットほど突くうちにクッションの感覚や

ハウスキューの回転の乗りを掴み(とはいえ、いつもマイキューに強烈なドローのかかるメウチを使っているので、ハウスキューのドロー

がどこまで引けるか全く分からず最後まで怖かった)、6-2でなんとか勝つことができました。ゲームをこなすうちにI君とも仲良くなり、

「ビリヤードを通じてほぼ初対面の人と仲良くなれるなんて、やっぱビリヤードはいいよね」なんて話をしながら解散。

初日にして地域文化研究科ビリヤード同好会が出来あがったような感じです(笑)

 

 フランス語の学習は一筋縄ではいかなさそうですが、地域文化研究科のアットホームな雰囲気は大いに楽しめそう。

まだ授業は始まっていないものの、今の時点で自分の進学先にはとても満足しています。あとは語学!

 

うちのクラスは凄かった

 

 あるプロジェクトの資料に用いる図のデザインを頼まれていたので、駒場で四時間ほどかかって仕上げる。

このプロジェクトの名前を公にする日もそろそろだろう。きっと相当大きな企画になるに違いない。楽しみだ。

 

 作業をやりながら自分のクラスの友達がどこへ進学先を決めたのかを聞いたのだが、驚くべき結果が明らかになった。

なんと、僕のクラス(文三 十五組)から、四人も法学部へ進学していた!!これは驚かずにはいられまい。

今年度、文三から法学部への進学に成功したのは全員で九人。そのうちの四人がうちのクラスから、というのだから凄いことだ。

周知のように文三から法学部へ進学するためにはかなりの高得点が必要になってくる。高得点だけではなく、「チキンゲーム」、

つまり「一次調査で出したものの、無理そうなのでやっぱり降りる。」「いや、誰かが降りると読んで突っ込む。」というような、

インディアンポーカーめいたゲームを乗り切る「読み」と「度胸」と「運」が必要になってくる。四人のうち、二人は圧倒的な点数をもって

法学部への進学を決め、残る二人は大胆極まりない「読み」によって法学部への進学を成功させた。すごい。

文三のクラス(我々のクラスは三十一人いる。)から、四人が法学部へ進む。これは過去最多ではないだろうか。

 

 ちなみに、みんなの進学先を集計していったところ、我々のクラスから最も多く進学した学科は法学部である可能性まで出てきた。

(文学部を文学部として纏めてしまうとそこが一番多くなってしまうので、法学部と文学部の各学科を比較することにはなるが)

進学先の人数的には、法学部=文学部社会学科>教養学部>文学部英文学科=文学部国文学科=文学部哲学科>etc

という順番になっているはずだ。これは相当に異常な結果である。二年間を一緒に過ごして来てこのクラスの凄さは十分に知っている

つもりだったが、改めてそれを味わった。なんにせよ全員進学先をきっちり決めたようなので、進振りおつかれコンパでも開きましょう!

 

 夜、二日連続で指揮法レッスン。

今日は脱力のコツと、音楽の流れに任せることを教わった。終了後にはアーノンクールのビデオを鑑賞した。

まだアーノンクールの頭髪が黒々としていたので、きっと若かりし頃の映像だろう。そのあと、先生の過去の演奏会のDVDを鑑賞。

曲目はベートーヴェンの五番。見事なまでの脱力と、打点の分かりやすさ、無駄のない動きに毎回のごとく感動。

帰り際に先生が最後に下さった、「音楽に限らず、芸術は【感じる】もので、中から溢れ出すものだよ。内から突き動かされなくっちゃ。」

というアドバイスがとても印象的だった。自ら音を出すのではない指揮者は、音を出さないからこそ、目に見えない〈なにか〉を持ち、

それを伝えなければならない。〈なにか〉は、四拍子をどう振るとか叩きを鋭くとか、そういうテクニカルな問題を超えたところにある。

自分のうちから〈なにか〉が溢れ出して、電流のように棒の先から演奏者の心へ伝えられるようになりたい。

 

 そんなことを考えながら雨の帰り道を歩く。

ふと、エリック・ハイドシェックと話したときにアドバイスを求める僕に向かって彼が優しい笑顔でくれたメッセージを思い出した。

 

「難しい事はありません。ベートーヴェンが音楽の本質を言い切っています。『心から心へ』と。音楽はあなたの中にあるのです。」

 

 

まとめて更新&進学先について

 

 色々あって纏まった文章を書く時間が無かったのですが、ようやく時間が取れたので一気に色々書きます。

 

 ・胃下垂

胃下垂にかかってしまいました。人生初。胃がかなり下にさがっているのがリアルに分かります。

食べてもまったく胃が消化する気配が無く、ラーメン一杯を完食するのに四苦八苦します。お酒も思うように呑めない。これはつらい・・・。

 

・本

アラン・コルバン『風景と人間』、山本博文『天下人の一級史料』、大森荘蔵『時間と自我』、ライアル・ワトソン『匂いの記憶』を読了。

あとの二冊は図書館で借りたものですが、そろそろ返却期限が切れているような気がして怯えています。

それから柴田寿子『リベラル・デモクラシーと神権政治 スピノザからレオ・シュトラウスまで』を購入。柴田先生は僕の尊敬する先生の

一人でしたが、今年になってご逝去されました。早すぎる死が惜しまれてなりません。本書の前書きや後書きの行間からは

難病に侵された先生の強い意志と無念さが伝わってきて、読みながら瞼が熱くなりました。

先生の社会思想史の授業を口述筆記して作ったシケプリは前期教養学部時代の宝物の一つです。

 

・髪

ちょっとだけ茶色に染めました。単なる出来心です。黒髪愛好家であることは変わりません。サーフィンに行ってきて海水と太陽の

影響を受けたのか、思ったより茶色っぽくなっている気もしますが、自分の中ではそんなに違和感なし。これもアリかな、という感じです。

 

・フランス語とか

Newton Pressから出ている『トレーニングペーパーフランス語』シリーズを文法の復習と単語増強を目的にガシガシ進めています。

もうすぐPart1が終わるはず。近所のマクドナルドでこれをやっていた際、隣に来た女性の方が持っていた袋にPour la frimeと書いて

あって、いつもなら「この店の名前良く見るなあ」と思って終わるのですが、フランス語をやっていたため無意識に和訳してしまい、

「Pour la frimeって〈うわべだけ〉という意味だよなあ・・・」などと考えてしまいました。「うわべだけ」という意味の袋を街で持ち歩くのは

ちょっと恥ずかしいかもしれません。すぐにボロボロになりそうです(笑)

まあ良く考えてみると町中に意味の分からないメッセージの書かれたものは結構転がっているもので、先日も大学へ行く途中の道で

追い越したマダムのTシャツの背中に「前 代 未 聞」とフォント60ぐらいで印刷してあるのを見ました。

前代未聞と書かれているTシャツを見た事はなかったので、確かに前代未聞です。

 

・音楽

指揮法のレッスンに備えて叩きのトレーニングを一日100回やっています。前よりも鋭く叩けるようになってきました。

フルートのレッスンにも行っていますが、そろそろまともな楽器が欲しくなってきました。天邪鬼なために「使い手を選ぶ」と言われる

サンキョウのフルートが気になっています。特に40周年記念モデルのリングキー。買うお金はありませんが・・・。

 

・ボウリング

セカンド・ディメンションの指調整が完璧になり、この球のポテンシャルをかなり引き出せるようになりました。

横回転を強めに入れて外に出した時の戻り具合が半端無いです。スーーッ、グワッ!!という感じで、蹴散らすように強く重い当たり。

スタッフの方の粋な計らいで投げる前に特別にオイルを引いてもらい、それからこのボールを投げたのですが、フッキングポイントに

入ってからの加速感にビビりました。隣のレーンの左端ぐらいに立ちほとんど右ガターを超える形でリリースして5枚目あたりまで

出すとジャストポケット。なんじゃこりゃ。こいつのおかげでセミパーフェクト達成です。今ならシナモンアップル臭も許せます。

 

・進学振り分け

無事に第一希望の教養学部地域文化研究科に内定しました。地域文化研究科の中のフランス分科に所属する予定です。

興味の幅を広く取っていたため、進学振り分けに際しては相当悩み、教養学部の科学哲学や表象文化論、比較文化にはじまり、

文学部哲学科や倫理学、社会学、果ては工学部建築学科や都市デザインまで考えましたが、以下の理由から最終的に

地域文化研究科に絞りました。

 

1.何よりも駒場に残りたかった。

→「本郷に行きたい!」と思う方が大多数でしょうが、僕の場合は逆に駒場に残りたいと思っていました。

というのは、本郷の各学科のようにタコツボ化したディシプリンに閉じ込められず、学問を広く横方向に繋げて捉えたかったからです。

これが簡単な事で無いのは承知しています。しかしそれでも、学問にしろ遊びにしろ、常に越境者の志を持っていたいと思います。

また、教養学部でこれから始まる大きなプログラムを非力ながら引っ張っていく立場になるようなので、このプログラムに大学生活の

後半を賭けるため一番動きやすい場所を取っておきたかったというのもあります。

なお、引っ越しするのがめんどくさかったから、というのも一つの理由です。

 

2.大学における残り僅か二年の勉強で何かが身につくのか?

→院まで行けば別でしょうが、あと二年間で自らの専攻分野を卒業後に活かせるまで身につけられるのか僕には疑問でした。

そして文系のかなりの分野は本を読めばそれなりの知識をつけられるはずです。授業を受けるよりも自分でどんどんと読み進めて行く

方が身になるでしょうし、今までもそうしてきました。では、今までで身につかなかったものは何か?

僕の場合、それは言語です。ずっと外国語から逃げてきた。だから今度は言語から逃げられない環境に自分を置いて、スパルタで

言語を鍛えようと思います。言語は卒業してからも必ず活かせますしね。ちなみに地域文化研究科は卒論を各専攻地域の言語で

書かなければなりません。僕の場合はフランス語です。卒論発表や口頭試問もフランス語で行うらしいです。地獄です。

 

3.フランス現代思想に興味アリ。

→本棚を眺めて気付きました。フーコー、ドゥルーズ、ラカン、バルト、ベルクソン、メルロ=ポンティ、ヴァレリー、ランボー、コルバン・・・

僕が好きな思想家や作家、詩人、歴史家、それは多くがフランス系でした。スラヴォイ・ジジェクや大澤真幸の影響を受けて社会学にも

かなりの興味を持っていましたが、社会学への興味の底にはフランス現代思想がありました。(そもそもスラヴォイ・ジジェクの著作は

ラカンの理論が全てのベースになっていますしね)だから単に社会学をやるのではなく、しっかりと原書を読める言語力をつけて、

それぞれの思想への理解を固めたうえで、必要とあらば社会学的なアプローチをとりたい。最近はミシェル・フーコーの生権力論の射程

と現代の生命倫理の交差点に一番の関心を持っているので、これを一つの軸にしようと企んでいるところでした。

これを考えたとき、地域文化研究科フランス分科はこの分野の先生方に非常に恵まれています。

 

4.副専攻制度

地域文化研究科の特権に、東大の中でもレアな「副専攻制度」が認められているというものがあります。僕の場合は国際関係論か

相関社会科学、あるいは表象文化論を副専攻にしたいと考えていますが、このように自分の専攻分野と別の分野の授業を取ることが

出来るシステムです。これは一つに興味を絞れない人には嬉しいシステムで、地域文化研究科に惹かれる大きな理由になりました。

 

 こんなところです。

最後に、そもそも地域文化研究科のフランス科って何をやるのかという点だけ書いておきたいと思います。

昨年のシラバスを見れば、アナール派などのフランス史学やフランス思想、レヴィ=ストロースの人類学的構造主義、

マラルメやフローベール、ゾラなどの作品のテクスト分析、ヨーロッパ政治構造論、ヨーロッパ経済システム論、表象芸術論、

メディア環境論、世俗性と政教分離やライシテ、クイア・スタディーズ、ブランショ、デリダ、ボードレールetc…

このように政治・経済・宗教・文化・社会などの多角的なテーマを横断的に学ぶ学部であることが分かります。この多角性を活かすも

殺すも自分次第。第二外国語としてドイツ語を選択していたこともあり、二年間相当にフランス語に苦しめられることになるでしょうが、

最後まで必死に食いついて行きます。ここをお読みの方でフランス語に堪能な方がいらっしゃいましたら色々とご教示下さい。

地域文化研究科に進学される方がいらっしゃいましたら、これから二年間どうぞよろしくお願いします。

 

伊豆サーフトリップその2

 

 クラス旅行Part2、またまた伊豆へ波乗りに行ってきた。

宿泊先は前回と同じくガーデンヴィラ白浜。下田駅からバスで十分、歩いて一時間(勢いあまって歩いて来た友達が約一名いた)

の距離に立つ、とても素敵な宿である。天気予報では三日間とも曇り空の予報が出ていて、電車が下田に近づくにつれて

雨が降ってきたりして「泳げるのか・・・?」という不安に駆られたりもしたが、前回も雨の予報を覆した実績があるので、

自らの晴れ男パワーを信じて雨の伊豆高原を抜け、下田に達する。

 

 海辺は青空だった。海の緑がかった青がどこまでも続き、沖の方にはうっすらと島が見える。晴れ男パワー恐るべし。

太陽に喜びつつ急いで宿に向かい、オーナーさんに挨拶をして水着に着替え、浜へ向かう。

台風が過ぎた後だけあってかなり良い波が来ている。崩れ方も綺麗な胸ぐらいの波。その分人は結構多かったが真夏の比では無い。

ボディボードを教えたり友達を穴に埋めたりビーチフラッグスをやったりして海を満喫する。前回よりも海水が塩辛かった。

合間を見て、今年からはじめたショートボード(今まではロング-ファンだった)に挑戦してみるが、今までとは感覚が違い、なかなか

テイクオフが安定しない。板が短いために浮力が乏しく、パドリングでかなりスピードをつけないと安定したテイクオフにならない。

二日目になってようやくコツがつかめ、それなりに安定したテイクオフが出来るようになった。出来るようになってみると楽しいもので、

ボディボードやロングボードに乗っている時よりも滑り出しの感覚が気持ち良い。波に押される、というよりは波を切る感じ。

波の力でグッと押されるというよりはシューッと波を切っていく感じがあって、耳元で波切り音が聞こえるのがとても楽しかった。

 

 宿の素晴らしさは相変わらずで、初日の晩御飯には前と同様、豪華な舟盛りや神がかった美味しさのグラタン、伝説の海老フライ、

二日目の晩御飯(バーベキュー)では大量の肉に加えてサザエやホタテやカマスやアジのヒラキなどを堪能。

「学生がこんなの食べてすいません帰ったらチキンラーメンでしばらく過ごしますので・・・。」と謝りたくなるぐらいの豪華な食事だった。

友達が大分帰省のおみやげに『かぼす酎』という絶品のお酒を持ってきてくれたり、オーナーさんが御好意で『磯むすめ』という焼酎を

一升瓶でプレゼントして下さったり、バーベキューでお隣になったグループ(結婚祝いだったそうだ)の方々からビールやサザエやケーキ

をふるまって頂いたり、宿では沢山の人の温かさにも触れることになった。本当にありがとうございます。

 

 結局三日間とも雨が降る事はなく、それどころかどんどんと天気が良くなっていった。

三日目の朝に窓から差し込んだ光は真夏と変わらないぐらいの明るさで、雲は夏の入道雲、そして部屋から見える海は輝いていた。

最終日、ホテルを出発して海へ向かう前に少し時間があったので、ロビーに置かれていたピアノで久石譲のAsian Dream Songを

適当に弾いてみたり『海の上のピアニスト』の楽譜をロビーで発見してPlaying Loveを片手でさらってみたりして遊びながら、ふっと

鍵板や楽譜から眼を離したとき凄いことに気づいた。なんとこのピアノのボディ、海と空が映っている!!

ちょうど窓を背にして置かれている形だったから外の風景が映り込んでいたのだ。ピアノの黒に青い空と海が映るのは感動モノだった。

 

 三日間かけて体力の限界まで海を楽しみ、白浜を後にする。

夏の雲はいつの間にか鱗雲に変わっており、雲と溶けあう水平線を見ながら夏の終わりを感じた。そろそろ秋がやってくる。

 

 

『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』(高橋昌一郎,講談社現代新書 2008) &カオス呑み

 

 駒場の生協で著者の名前が目に入り、即座に購入。

著者は講談社現代新書で10年近く前に『ゲーデルの哲学』を書いており、これを高校時代に読んでハマった覚えがあったからだ。

JR大阪駅を出てすぐ、ヤンマーディーゼルの看板が窓から見える辺りで読み終えたということまで覚えている。それほど印象的だった。

 

 今回の『理性の限界』もまた、読み終えた瞬間を覚えていられるほど刺激的な内容。

最初から最後まで「シンポジウムにおける対話」という形式を取っているので、内容は決して簡単ではないものの、楽しんで読める。

テーマは大きく分けて「選択の限界」「科学の限界」「知識の限界」の三つであり、それぞれに関連する主要な理論が

仮想シンポジウム参加者の対話によって説明されてゆく。

「数理経済学者」がコンドルセのパラドックスを説明したかと思うと、「情報経済学者」がアクセルロッドのTFT戦略について

説明してくれるし、それに絡める形で再び「数理経済学者」がミニマックス理論やナッシュ均衡に話を広げていく。

「科学主義者」はラプラスの悪魔や相対性理論を噛み砕いて説明するし、「相補主義者」は二重スリット実験を紹介してくれる。

(二重スリット実験は何度読んでも感動する。この現象を目の当たりにした科学者は最初どれほど驚いただろう。)

お約束とも言えるクーンのパラダイム論については「科学社会主義者」なる人が概略を語ってくれる。

それに対して「方法論的虚無主義者」なる人がファイヤアーベントの哲学を持ち出して来て、Anything Goes ! という極端な

科学哲学を紹介してくれたりもする。(このファイヤアーベントの哲学は本当に面白いと思う。これから読んでみたい。)

 

 ところどころ登場人物に不自然なところがある(「ロマン主義者」とか「フランス国粋主義者」とか)が、それもまたこの本の面白さ。

著者は、幅広い参加者たちに託して対話の中に様々な知識(たとえば、フランスの「コアビタシオン」と呼ばれる政策についての

説明や、マーヴィン・ミンスキーの「心社会論」についての説明など)を練り込んでくれている。その一方で、「カント主義者」が

「要するにだね、カントによればだね、君の意志の格律がいつでも同時に・・・」と言いかけては「司会者」に

「はいはい、今はカントの話ではないのでまた後日にお願いしますね。」と流されているのがちょっと哀れで笑えたりもして、

最初から最後まで読んでいて飽きない。後半で紹介される「ぬきうちテストのパラドックス」なんかには「むむむ・・・。」と

悩まされること請け合いである。悩みながら楽しみながら、『ゲーデルの哲学』同様に買ってすぐに一気に読み通してしまった。

数ある新書の中でも非常に充実感の高い一冊。おすすめです。

 

(参考:【抜き打ちテストのパラドックス】

1.月曜日から金曜日まで、いずれかの日にテストを行う。

2.どの日にテストを行うかどうかは、当日にならなければ分からない。

という講義要項があったとする。これを見たA氏は「テストは実施されえない」と判断した。というのは、この講義要項1に基づけば、

まず木曜日の時点でテストが行われなかった時点で「テストは金曜日だ」と予想されるが、予想された時点で講義要項2に反するので

金曜日にはテストは行われえない。これより、金曜日にテストが無いならば、木曜日にテストを行う場合、先ほどと同様にして水曜日

まででテストが行われなかった場合「テストは木曜日だ」と予想され、これは講義要項2に反するので木曜日にテストは行われえない。

これを繰り返していくと、月曜日から金曜日までで「抜き打ち」テストを行うことはできない。よって抜き打ちテストは無い。

このようにAは判断したのである。しかし、実際には金曜日にテストが実施された。

「おかしい!上の理由により、テストは行われないはずだ!」とAが主張すると、教授は笑いながら

「でも、君はテストが今日行われないと思っていたんだろう?それならば、抜き打ちテストは成立しているじゃないか!」と返した。)

 

 なお、これを読んだあとにクラスの友達数人で高尾山のビアガーデンにて「カオス呑み」をしてきた。

「カオス呑み」とは名前の通り、秩序に縛られず酒を楽しむ会のこと。簡単に言うと呑みまくっているだけである。

いつもは下北沢などで開催され、最終的には結構カオスな事になるのだが、今回は高尾山ということもあって

非常に穏やかな展開になった。今回はみんな『理性の限界』を破らずお酒と高尾山から見る夜景を楽しんでいたようだ。