一度コンサートを終えると、その準備にかかった時間や諸々の雑事などに疲れて、
あるいは自らの未熟さを痛感し、しばらく間を空けようと思う。
だが、それも一ヶ月経つと限界。
僕はもう、うずうずしている。また指揮がしたい。みんなの音が聞きたい。
指揮をするのは壮絶にエネルギーを必要とする。演奏者集めから曲選に始まり、自分の精神状況の準備に至るまで、
どれ一つとして簡単に済ましてしまえるものはない。けれども、自分が尊敬する、大好きな奏者たちがそれぞれの音を一つに集めようと
してくれているのを感じるとき、すべての苦労を超える幸せを噛み締めずにはいられない。
本番前の言葉にならぬ高揚、幕間のざわめき、すべてを終えた後の虚脱感と充実感。
後日、演奏を聞いて下さった方が言葉にして感想を綴って下さったものを目にする時の幸せ。
今までの人生の中で、これほどまでに感情を揺さぶってくれるものを僕は音楽以外に知らないし、
おそらくこれからもそうであり続けることだろう。ドミナント室内管弦楽団のみんなと
ストラヴィンスキーの終曲を本番にしか生まれ得ぬ熱気の中で演奏しているとき、
あるいはヴィラ=ロボスを心から溢れるような思いで演奏しているとき、
痺れる頭で、自分は今ここで確かに生きているのだと気付いた。
もっと指揮がしたい。もっと本番を振りたい。もっとステージに立ちたい。
休息は終わりだ。日々を淡々とこなしながら、次に向けて動き出さなければならぬ。