夏は吹奏楽の季節だ。また今年も、はじめての中学校からお声がけ頂き、吹奏楽指導をさせて頂いた。
指揮する曲は、指揮を習い始めて間もない頃、吹奏楽指導へ赴く師匠に同行させて頂いたときの曲だった。
あのとき僕は、言葉なしに棒だけで音楽をがらりと変えてしまう師匠の凄みを、そして指揮という芸術の恐ろしさを目の当たりにした。
その瞬間のことを思い起こしながら、僕はいま、ひとりで中学校への道を歩く。この夏はあの夏よりも暑い。
時間が経ったのだ、と唐突に思う。だがしかし、過ぎた時間を惜しむことも、過ぎてしまったものに慌てることもしまい。