リルケと世阿弥とコクトーが、同時にきっかけをくれた。
ここ数週間、いや長く見れば一年半にわたる負荷を経て、そしてまたここ数日の「文字」で座禅を組むような時間を経て、天に穴が空いた。
それは言葉にならないものだけれども、明確に違う次元なのだ。
海の微風が静かに吹く、嵐のあとの境地。
無関心とは違って凪いでいる。文字通り波風立たぬ平面でありながら、再び嵐を巻き起こそうと思えばそうすることもできる。
細かいことがどうでも良くなるような大きな海、それでいて、無限に細やかな波紋を刻み付けることもできる海。
明鏡止水、水鏡無私。水鏡無私,猶以免謗,況大人君子懷樂生之心,流矜恕之德,法行於不可不用,
おそろしく均衡の取れた領域が広がる歓待の空間。この延長上に目指すべき境地があることを確信する。
ここからスタートして、精神の強度を高めていくのみ。