「私はたゞ人間を愛す。私を愛す。私の愛するものを愛す。徹頭徹尾、愛す。
そして、私は私自身を発見しなければならないやうに、私の愛するものを発見しなければならないので、
私は堕ちつゞけ、そして、私は書きつゞけるであらう。」(坂口安吾『堕落論』所収「デカダン文学論」より)
夜通し書き続け、思い続けた雨の朝。
いつの間にか熱を失った風が部屋に流れてくる。
布団に大の字になって転がりながら、霞んだ目で天井を見つめながら、
小学生の時以来ずっと惹かれ続けているこの文章の意味が突然少し分かった気がした。
わが青春を愛する心の死に至るまで衰へざらんことを。
手を伸ばせば届く距離に秋がそっと微笑む。