約十五年ぶりに会う、小学校一年生の頃のクラスメイトである白小路紗季さんが招待して下さったソロ・コンサートに行ってきた。
つい最近まで、僕は彼女がヴァイオリニストとして活躍していることを知らなかったし、
彼女ももちろん僕が駆け出し指揮者をやっていることなんて知らなかっただろう。
会場について開演を待つ間、十五年振りに姿を見ることに何だかとても緊張した。
静まった中に入って来てスポットライトを浴びた彼女は、一年生の頃の面影や仕草を確かに残しながら、
鮮やかなドレスの似合う、美しく凛とした佇まいの大人の女性になっていた。
前半の最後に痺れる。
弓の速さ・圧の抜き。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ三番のある箇所で、弓が一瞬宙に舞った瞬間、物凄いスピードで空間を切り抜く。
そうして響いた音は鋭いだけの音ではなく、とても中身の詰まった豊かな音だった。
後半も楽しみだなあ、と期待しているうちに始まったイザイの無伴奏ソナタ三番。これは本当に凄かった。
前半より集中力がさらに増しており、何かに取り憑かれたような演奏。会場の空気が彼女の振る舞いに凝縮していくのを感じた。
彼女の弓使いはまるで刀のよう。弓を目一杯使ったあと、鋭く跳ね上げて一瞬の間を作り出し、迷い無くザッと断ち切る。
空間と空間、時間と時間の隙間に生まれる、息を飲む一瞬。その一瞬から血が噴き出して鮮やかに散るような錯覚。それは美しく、壮絶だった。
三番のあとにはイザイの無伴奏五番、そのあとにサン・サーンスのワルツ・カプリース、そしてヴィエニャフスキの華麗なるポロネーズ二番が続く。
これも勢いに乗った素晴らしい演奏で、特にワルツ・カプリースの華やかな音色の変化には耳を奪われたが、頭は先程のイザイ三番の衝撃から覚めやらず。
それぐらい凄い演奏だったと思う。余韻の残る中、アンコールはモンティのチャルダーシュを遊びたっぷりに!
演奏後、十五年ぶりの再会を果たして色々と話し、近いうちに一緒にヴァイオリン協奏曲をやろうと約束する。
小学校一年生の頃はこんな話をするなんて考えたことも無かったね、と二人で笑いながら。
彼女と音楽したいな、と心から圧倒された時間だった。
コンチェルト、必ず実現させよう。また一つ目標が出来た。その日に向けて一生懸命勉強せねばならぬ。