雨の夜には、普段あんまり聞かないキース・ジャレットのピアノを無性に聞きたくなる時がある。
聞きたくなるのはいつもこの、The Melody At Night, With Youというアルバムだ。
このアルバムは闘病生活(キースは「慢性疲労症候群」で3年間演奏からリタイアする)を支えた妻に捧げたものだと言われている。
本来は発売する予定のものではなく、プライベートな録音だったらしい。だからこそ、なのかは定かではないが、自己に深く沈潜しながらも
大切な誰か一人に捧げるような、祈りのような感情が籠められているように思う。Blame It on My YouthからMeditationへと至る静かな歩みを、
My Wild Irish Roseの無理に笑おうとしているような、傷ついた人を慰めようと笑顔を注ぎながら、心の底では自身も涙を溢れさせているような素朴な歌を聴くたびに、
不思議と涙が溢れてくるのを抑えることができない。
そして必ず思い出す。
もう生きるのが嫌になっちゃった、と泣きながら雨の日に電話をしてきたあの後輩のことを。