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「遊び人」礼賛

 

「遊び人」という職業がドラクエにあったのは凄いことだなあ、と今この年になって思う。

ドラゴンクエスト3の場合、遊び人はレベル20になると特別なアイテムなしに「賢者」になることができる。

これは非常に意味深い。なるほどという感じだ。

つまり、遊び人が賢者になるのは、これまでの行いを悔いたからではなく、行いの蓄積の結果として英知を有したからである。

遊び人は対人関係から自然と悟りへ至る故に、他職から賢者になるには必要なアイテム(=境界を飛び越えるもの)「悟りの書」を必要としない。

すなわち、遊び人と賢人は逆の方向にあるものではなく、まさに遊び人と賢人こそが、唯一近しい位置にあることが示されている。

 

レベル1を10歳とすれば、レベル20はおよそ30歳。

30歳までずっと遊び人でいることは難しいことだ。

定職についてレベルを上げていく仲間を横目に、遊び人は役に立てない申し訳なさや先行きの見えない恐れを乗り越えなければいけないだろう。

しかし、道化のように笑いながらも自らの意志を譲らず、ひたすらに遊びの道に徹し、ぎりぎりまで弓を引き絞ったとき、他の人には真似のできない豊かな世界が展開するのだと思う。

30歳まであと5年。そのとき僕は、何者かになれるだろうか。

 

 

 

雨の夜、The Melody At Night, With You

 

雨の夜には、普段あんまり聞かないキース・ジャレットのピアノを無性に聞きたくなる時がある。

聞きたくなるのはいつもこの、The Melody At Night, With Youというアルバムだ。

このアルバムは闘病生活(キースは「慢性疲労症候群」で3年間演奏からリタイアする)を支えた妻に捧げたものだと言われている。

本来は発売する予定のものではなく、プライベートな録音だったらしい。だからこそ、なのかは定かではないが、自己に深く沈潜しながらも

大切な誰か一人に捧げるような、祈りのような感情が籠められているように思う。Blame It on My YouthからMeditationへと至る静かな歩みを、

My Wild Irish Roseの無理に笑おうとしているような、傷ついた人を慰めようと笑顔を注ぎながら、心の底では自身も涙を溢れさせているような素朴な歌を聴くたびに、

不思議と涙が溢れてくるのを抑えることができない。

 

そして必ず思い出す。

もう生きるのが嫌になっちゃった、と泣きながら雨の日に電話をしてきたあの後輩のことを。

 

 

 

The Melody At Night, With You