「ピガールへ繰り出した」、というと「歌舞伎町へ繰り出した」みたいなもので、何だか変な感じが漂いますが、
こんなことが出来るのは男一人旅行の特権かもしれません。ピガールの街に出てまず訪れたのが、アダルトショップ。
真昼間から何をしてるんだ、と怒られそうですが、何かを買いたかったわけでは全くありません。
どうせなら男一人旅行でなければ出来ないことをしてみようと思ったのと、風俗が一番出ている場所の一つかな、と思って
特攻してみたのです。結論としては、
【売っているものは日本とほとんど同じ。日本のアニメ文化の影響が「コスプレ」グッズの豊富さに色濃く反映されている。】
というところでしょうか。フーコーなどを読んでいてセクシュアリテの領域に関心を持っている僕としては、正直かなり面白かったです。
その後、ずっと歩いてサクレ・クールへ。アダルトショップから「サクレ・クール=聖なる心」へ移動というのは凄まじいコントラストです。
サクレ・クールはモンマルトルの丘の上にあり、ピガールがその麓に広がっているわけなので、聖-俗が位置空間として近接している
(しかし「高さ」という厳然とした壁で隔てられている)のは面白いですよね。
もちろんサクレ・クールへ直行したわけではなく、麓を歩きまわって蛇行しながら、徐々に丘に登って行きました。
いま思い返してみれば、凄い距離を歩いていたと思います。異国に限らず、知らない土地に来たときにはとにかく自分の足で歩き回り、
そのあと高いところに登って街を把握することにしているのですが、サクレ・クールはその意味でもぴったりな場所。
いままで歩いていたピガールの街を一望し、また遠くにエッフェル塔を望むことが出来ました。
雨上がり、爽やかに青空と飛行機雲が広がった中、壮大なドームの最上部から眺めるパリの街並みは最高に美しくて、
モンマルトルが大好きになりました。
モンマルトルの丘の芝生に座って、眼前に広がるパリの街を見渡しながら、麓で買って来たクロワッサンをかじる。
そんな幸せな時間に浸っていると、シューベ ルトの弦楽五重奏が聖堂の方から聞こえてきました。
立ち上がって見てみたところ路上パフォーマンスのようです。近くに移動してしばらく聞き入りました。
演奏終了後、おひねりを渡しながら演奏者の方たちと話したのですが、みな音楽が専門の大学生だそうです。
「僕もいちおう音楽やってます。」と伝えたら、「日本から音楽しに来たのか?楽器は?」などと妙に盛り 上がってしまい、
しばらく話し込みました。といっても相手が嵐のように話してくれただけで、そのうちの二割ぐらいしか聞き取れていない気がします。(笑)
ともかく、この景色の素晴らしさとそこに暮らす人々の素敵さに、「しばらく日本に帰らなくてもいいかな…。」とちょっと思ってしまうほど、
フランス滞在初日から居心地の良い時間を過ごすことが出来ました。