January 2011
M T W T F S S
« Sep   Feb »
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

ヨーロッパ滞在記 その5 - パリの街を歩く。-

 

崇高なものと俗なものの同居するモンマルトルを歩き倒し、疲れたらカフェへ。

フランスは至る所にカフェがあるので、休憩場所には苦労しません。滞在二日目にしてすでに、さっとカフェに入ってコーヒーを

注文したり、パン屋でクロワッサンをしゅぱっと買うのに抵抗がなくなりました。ひっそりした路地に佇むパン屋さんのパンが美味しすぎて

感動します。これがクロワッサンか!という感じです。カフェでは昼からお酒も飲めるので、ふらりとワイン を飲みに入ったりする楽しみも

覚えてしまいました。最高です。

 

自分の脚で街を覚える。迷うことで裏通りを知り、道を聞くことで言語に触れる。その通りの香りを頭に焼き付ける。

見る文字全てを口の中でこっそり呟きながら、そういうふうにパリの街を歩き回っていました。

歩くたびに秋の冷たい風が吹きつけ、風を切って歩く感覚があります。パリは、ただ歩くだけで本当に楽しい街です。

 

歩くうちに様々なことに気が付きます。たとえば、コンコルド広場へ向かう道で。

パリの街は、狭い空間から一気に広い空間に出る快感があります。パサージュから広場へ。建物やアーケードが突然消えて、

膨大な広さの場所と空が一気に眼前に広がる感覚はまるで、「自分」という存在の位置がふっと移動するような気分にさせられます。

うまく言葉にはなりませんが、狭い空間を歩いていたときの自分は、「世界を歩いているんだぞ。」という気分だったのに、

こうした広場に出た瞬間に、「自分は世界の端っこに間借りしているだけにすぎないんだ。」という気分になる。

自分と言う存在の占める大きさが相対的に変わる。でも、それは無力感とは違って、むしろ快感なのです。

 

夜10時にルーブル宮殿の広場に出た時もそうでした。狭い入口を通ると一気に広がる、馬鹿みたいに広い空間。

息を呑んで、次の瞬間なぜか分からないけど笑いが込み上げて来ました。走りだしたくなるような広さと、それを囲む建物の壮麗さ。

そして、頭上の闇に鮮やかに浮かんだ月の美しさ。広場には人がほとんどいなかったので、闇の中、広場の石畳に寝転んで、

月と空間を見上げてしばらくじっと過ごしていました。この光景は一生忘れられないだろうな、と思いながら。

 

帰りには、月が浮かぶセーヌ川に佇みました。セーヌ川にかかった橋を渡りながら、板の隙間から足元を見ると、水面に光が

反射してキラキラと光っているのが見えます。ただそれだけなのに夜の空気の冷たさと相まって、涙が出るぐらい感動してしまいました。

そして上機嫌のまま、カフェでボルドーを二杯飲んで、幸せな気分に浸ってホテルに帰るのでした。

 

 

ヨーロッパ滞在記 -その4 ピガールからモンマルトルへ-

 

「ピガールへ繰り出した」、というと「歌舞伎町へ繰り出した」みたいなもので、何だか変な感じが漂いますが、

こんなことが出来るのは男一人旅行の特権かもしれません。ピガールの街に出てまず訪れたのが、アダルトショップ。

真昼間から何をしてるんだ、と怒られそうですが、何かを買いたかったわけでは全くありません。

どうせなら男一人旅行でなければ出来ないことをしてみようと思ったのと、風俗が一番出ている場所の一つかな、と思って

特攻してみたのです。結論としては、

【売っているものは日本とほとんど同じ。日本のアニメ文化の影響が「コスプレ」グッズの豊富さに色濃く反映されている。】

というところでしょうか。フーコーなどを読んでいてセクシュアリテの領域に関心を持っている僕としては、正直かなり面白かったです。

 

その後、ずっと歩いてサクレ・クールへ。アダルトショップから「サクレ・クール=聖なる心」へ移動というのは凄まじいコントラストです。

サクレ・クールはモンマルトルの丘の上にあり、ピガールがその麓に広がっているわけなので、聖-俗が位置空間として近接している

(しかし「高さ」という厳然とした壁で隔てられている)のは面白いですよね。

もちろんサクレ・クールへ直行したわけではなく、麓を歩きまわって蛇行しながら、徐々に丘に登って行きました。

いま思い返してみれば、凄い距離を歩いていたと思います。異国に限らず、知らない土地に来たときにはとにかく自分の足で歩き回り、

そのあと高いところに登って街を把握することにしているのですが、サクレ・クールはその意味でもぴったりな場所。

いままで歩いていたピガールの街を一望し、また遠くにエッフェル塔を望むことが出来ました。

雨上がり、爽やかに青空と飛行機雲が広がった中、壮大なドームの最上部から眺めるパリの街並みは最高に美しくて、

モンマルトルが大好きになりました。

 

モンマルトルの丘の芝生に座って、眼前に広がるパリの街を見渡しながら、麓で買って来たクロワッサンをかじる。

そんな幸せな時間に浸っていると、シューベ ルトの弦楽五重奏が聖堂の方から聞こえてきました。

立ち上がって見てみたところ路上パフォーマンスのようです。近くに移動してしばらく聞き入りました。

演奏終了後、おひねりを渡しながら演奏者の方たちと話したのですが、みな音楽が専門の大学生だそうです。

「僕もいちおう音楽やってます。」と伝えたら、「日本から音楽しに来たのか?楽器は?」などと妙に盛り 上がってしまい、

しばらく話し込みました。といっても相手が嵐のように話してくれただけで、そのうちの二割ぐらいしか聞き取れていない気がします。(笑)

ともかく、この景色の素晴らしさとそこに暮らす人々の素敵さに、「しばらく日本に帰らなくてもいいかな…。」とちょっと思ってしまうほど、

フランス滞在初日から居心地の良い時間を過ごすことが出来ました。