取材の始終を通して、彼は自らを「戦場カメラマン」とは名乗らなかった。
彼は、「報道カメラマン」と名乗った。
この取材の丁度1週間後、東日本大震災が起きた。
中東へ行く予定だった宮嶋カメラマンは、その足で東北に向かい、自衛隊に従軍して現場の写真を撮り続けた。
昨年の夏に、偶然、とある震災関連の写真集を買った時、宮嶋茂樹氏のクレジットが記載されていたのを見つけた。
ああ、この人は今も「最前線」に立っている、と嬉しくなった。
「最前線」は、銃弾の飛び交う戦場だけにあるのではない。
災害の被災地も、テロ事件の現場も、それが社会の激動の場である限り、そこは「最前線」だ。
その生の現実を、「報道カメラマン」たちは、一枚一枚の写真に込めて、世に送ってきた。
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昨年の3月11日以降、僕らはその「最前線」に不意に立たされた。
今まで写真の向こうのものだと思っていたのに、それが現実のものとなった。
その時、僕らには何が必要とされるのか。
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ヘルメットと報道腕章を付けて、今日もどこかの「最前線」に立ち続ける彼らは、それを知っている。
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カメラのレンズの向こうから彼が発するメッセージに、僕らは、今こそ耳を傾け、イヤ、目を向けなければならない。
(文責:田村修吾)