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Interviews

【音楽企画】宮脇俊郎さん(ギター講師)

はじめに

音楽。
それは多くの人々に趣味として親しまれ、歌手やミュージシャンといった音楽を職業とする人々は羨望のまなざしを浴びている。その一方で、彼らのようになることを夢見て多くの若者が努力を重ねながらも、道半ばで挫折していくこともまた事実である。

宮脇俊郎さんは、音楽教則本の執筆の第一人者であるとともに、音楽ライター・ギター講師としてご活躍されている。ステージ上の主役よりも一歩引いた立場から、軽妙な語り口で述べる音楽論は共感を集めてきた。

音楽を職業とすることとはどのようなものなのか。実際にその立場にいらっしゃる宮脇さんにうかがった。

【プロフィール】
宮脇 俊郎 (みやわき としろう)

ギター講師/音楽ライター
1965年兵庫県生まれ。ビートルズで音楽に目覚めギターを手にする。18歳で上京、23歳よりギタリストとしてセッション活動を始める。24歳からギター講師・音楽講師のライターとして担当を持つ。現在は雑誌「ギター・マガジン」、「ヤング・ギター」、「Go!Go!Guitar」にてコラムを連載している。

夢は叶うまで持ち続けていいものなのか

宮脇1
―初めに、プロのミュージシャンになることだけを目指して音楽活動を続けていく若者が少なからずいる現状に対して、宮脇さんはどのようにお考えでしょうか。

僕は夢をそこまで引っぱっていいものかどうかって思っているんです。プロミュージシャンで一応やっているっていう人が、雑誌とかで「夢は叶うよ」みたいな言い方をする。だから、自分たちもいけるんじゃないかと思ってバンド活動を続けていくっていう人がいまだに無茶苦茶多いわけです。

僕のギター教室にも、「どのようにしたらプロになれるんですか。」とか聞いてくる人が通ってくるんですね。でも音楽の仕事と夢とがごった煮になったままバンド活動を続けて、結局フリーターになった人とか皆さんの周りにも絶対いると思うんですよ。20代前半はそれでもフリーターの方が稼ぐ例も多いですが、26、7歳ぐらいになると会社員のボーナスという存在がすごく強力なものに思えてくるものなんです。で、いくらバイトで稼いだってそれを越えられないなって思って、多くの人がバンド活動を止めていくんですよね。

―僕の友達にもバンド活動が軌道に乗り始めたら大学を辞めてプロを目指していこうという人がいますね。

僕はちょっとそこが疑問なんです。実際、大学新卒で就職できる範囲と、大学卒業後、2・3年間他の何かをしていた人、あるいは高校卒業してずっとバイトだけやってきた人の就職できる範囲の差はホワイトカラー・ブルーカラー的に言うと、極めて大きいんですよね。それで、みんな打ちひしがれたように音楽への夢を諦めるところで、居酒屋の店長みたいなサービス業に就くとか、警備会社の社員になるとか、そういう人生が多いんですよね。あ、誤解を受けないように先に言っておきますと、警備会社の社員や居酒屋の店長を目指しているとかなら、もちろん何の問題も無いわけです。僕が言っているのは、音楽で食っていく道をあきらめた時期によっては、望む仕事に就けない現実があるということです。音楽を仕事とすることの現実的な厳しさをもっと早い時期に痛感していれば、ちゃんと大学新卒で、たとえば楽器屋の店員さんとして働く道だったら、音楽に関わり合いを持ちながら堅実に人生を過ごせるわけですよね。だから、いつも僕はすごくもどかしい思いがあるんです。

―夢と職業を混同している若者は音楽に限らず、スポーツや演劇の世界などにもいますよね。その中でバイトをしながら夢を追う人生なのか、それともホワイトカラーの人生のほうがいいのか。それをどれだけ早い時期に見極められるかっていうのが大切だということですか。

そうなんですよね。僕が最近心に引っかかっているのは、「俺が俺が」的な夢の持ち方なんです。例えば、小学生が「宇宙飛行士になりたい」という夢を抱くとします。それは自分が月面に立ちたいという、「俺が俺が」っていうのが先にきているんですよね。でも職業っていうのはそのような夢とちょっと違いますよね。やっぱり主役はそこに相応しい人が行くべきで、そこをフォローするっていうことも自分の仕事になるんです。でも、音楽の仕事っていうのはそういうところに「俺がステージに立ちたい。」っていうのがどうしても来てしまいやすい。くわえて音楽の世界は競技モノとは違い、好みによって何がいいのかが曖昧になるんですよね。たとえば、プロ野球だったら成績を残せるかどうかで結果が残酷なまでに示されてくるから、どんなにプロ野球選手になりたいと思ってもダメな人はもうダメだと分かりますよね。ところが、音楽の世界はそこが非常に曖昧というか。実際、歌が上手くない人だってテレビ出ていますよね。あれ、このアーティスト大丈夫なの? とか思う瞬間ありますよね。

―結果が目に見えて見えないということですね。

そうですね。何がいいのかが最終的にリスナーの嗜好の判断によるものであるので、それが夢をずっと追い続けることの一つの要因になっていると、僕は思うんですけどね。最近は、デビューできるとかそういう概念じゃない形のプロを目指す人も増えていまして。つまり、「サポートミュージシャンをやりたい」と現実的に思う人が多いんです。そして実際、それだけのレベルに達しちゃっている人もまた多い。でも一つややこしいのは、それで仕事がとれるとは全然限らないということなんですよね。