2複雑系生命研究からわかったこと
「ゆらいでいる」ことが生きていることに積極的な意味を持つんじゃないか
――複雑系生命の研究を通して得られた成果について教えていただけますか?まず複製ということを考えると、生物では一個の細胞が増えて同じ細胞をもう一個作る。その時にはその細胞の中にある何万種類もの分子を大体同じに作らなきゃいけないわけですよね。でもそれって普通に考えたらそんな簡単なことじゃない。まず分子を作るのも決まった通りにいくわけではない。反応は分子同士の衝突で起こるので、たまたま分子がぶつかったって起こってしまう。だから当然分子が作れたり作れなかったりということが起きて、その結果各成分の量は一定に留まれなくてゆらいでしまう。特に「作る」ためには、自分を基に自分を作るみたいなことをやるわけだから、その過程を見ると、数式で書けば「xの増える量がxに比例して増える」みたいな指数関数的な形になりますよね。で指数関数的になるってことは、ちょっとの差も増やしちゃう可能性があるってことね。だからその意味で、「ゆらぎ」とかいうのはなかなかコントロールできないわけですよね。
じゃあ複製の際、細胞が自分の持つ多くの成分とほぼ同じような成分を作っていくときに満たすべき一般的な性質があるかどうか。そういうのをいろんなモデルや理論でやってみている。例えば、各成分の中に多いのも少ないのもあるんだけど、各成分ごとに「これが一番多い」という順位と量とをプロットすると、その結果はだいたい逆比例している。一方で大体同じ細胞が作れるようになったとしても、さっき言ったように、複製された細胞と元の細胞はなかなかぴったり同じにはならない。例えば同じ遺伝子を持ったバクテリアの、あるタンパクの量が細胞ごとにどのくらい違うかを見てみる。そうするとやっぱり、かなり、しかも多くの場合桁が変わるほどにゆらいでいる。例えばある細胞では一万個くらいあったタンパクが、別の細胞では10万くらいあったとする。それの分布を調べてみると、統計とかで習う普通の正規分布とかガウス分布とかにはならなくて、それぞれの数値にlog、対数をとってみると大体ガウス分布(すなわち対数正規分布)になる、という性質がある。だから結果として、ある範囲内に収まるようにはしてるんだけど、やっぱりかなりゆらぎがある。
細胞はかなりゆらぎとかノイズが大きいシステムだとすると、そこから研究の可能性が二つあります。「たくさんゆらいでいるけど、じゃあそれを懸命に抑えている仕組みがあるに違いない」と言ってゆらぎの抑え方を調べる研究方向と、「結局ゆらいでしまうんだから、ゆらいでいることやノイズがあることが生きていることに積極的な意味をもつのではないか」という方向。僕はどっちかというと後者です。
成長していくような系で、中がゆらいでいるような系だったら、そこそこ適応できちゃうんじゃないか
生き物というのはいろんな環境にいても内部の環境を少し変えてそこに適応して生きていける。普通考えられているのは、細胞には「この環境になったらこのタンパクをもっと作りなさい」というのを知らせる仕組みが進化を通してできているということ。確かにそういう側面はあるし、実際に実験でわかってきている。一方で細胞は今まで出会ったことのないような変な環境に置かれたとしてもなんとか生きていくわけね。そうしたときに、「この環境だったらこのタンパクを作りなさい」みたいなことが全て細胞の中に埋め込まれているっていうのも、ほんとかいな、というのがある。――場合の数が無限通りあるようなものですよね。
そう。この適応の仕組みを理解したい。細胞の中はいろいろゆらいでノイズがあって、ノイズによって適当に動かされてる。そのときに、細胞にとって「いい状態」というのは、細胞が成長して体積が大きくなって、たくさんタンパクを作ってたくさん薄まること。「いい状態」ではノイズが入ってもそんなに影響を受けない。一方「悪い状態」ではあんまりタンパクを作らないで成長もしない。少ししか作りも薄まりもしないので、細胞の中に入ったノイズは、小さくても細胞が自然に作るものより大きくなりうる。そうするとすぐ細胞内のバランスが崩れてしまい、崩れたバランスはなかなかもとに戻らない。するとノイズのもとでは細胞はだんだん「いい状態」に向かう。そういうことを考えると、特別な仕組みを作らなくても、成長していくような系で中がゆらいでいるような系だったら、そこそこ適応できてしまうんのではないかと思う。まあそもそも作るのと薄まるのがバランスしてる状態がどうやってできるのかというのも問題なわけだけど、そこらへんはもうちょっと研究を進めているところ。
さっきの複製の話でも、細胞全体の成長と各分子の増化がうまく整合性を持てるところで、どのくらいゆらぐかという一般的な性質が出てくる。そして適応については、タンパクを作るのと細胞成長との整合性によってうまく外界に適応できるということが出てくる。これらが階層性を持ってうまくバランスがとれているような系の性質なんじゃないか。
――普通の生物学では適応は、世代交代をしてくときに、遺伝子が組み変わって、より適応的な遺伝子を持つ個体が子孫を残していくという説明もされますが、複雑系の理論ではそのような世代交代などの要素はあまり考えないのですか?
普通の生物学でも、適応というのはいろんな時間スケールの現象であって、「進化して適応する」というレベルの長時間の現象としての適応と、もう一つ細胞をある環境の中に置いといただけで中の性質が変わって生きていけるようになるという、短時間の現象としての適応がある。そこで階層性には、大きさだけでなくて時間の階層性というのもある。だからその短いスケールで起こることと長時間のスケールでおこることがどういうふうに関係しているのか、それもこれからの生物学でどんどん大事になっていくんじゃないかな。
ゆらぎが大きいものは進化しやすい
進化の話は実験との共同研究から始まったものです。高等生物を進化させるとかは時間かかりすぎるけど、バクテリアとかのレベルだったら世代交代早いから、わりといま進化の実験ができるようになってきた。例えば光るタンパクを導入したバクテリアをもっと光るようにするとか。当然「進化」というときは遺伝子が変わっていく。でもさっき言ったように、遺伝子が変わらなくても、発現がゆらいじゃって形質が変わっていくということもあるわけですよね。例えば「あるタンパクの量が、もっと多いほうが生きられる」というような環境において、「そのタンパクをもっと作りなさい」という風に進化させる。そうすると遺伝子が変わってそのタンパクをたくさん作るようになるわけ。ただ、進化する前に、そもそも個体差でそのタンパクが多かったり少なかったりしてるわけです。でもそれはたまたまゆらいでいるだけだから、多かったやつの子どもが多くなるってわけじゃないんで、そういうゆらぎはどうでもいいようにも見える。ところが実験してみると、その「ゆらぎが大きいやつ」は進化しやすいという性質がある。ゆらぎでそのタンパクが多かったやつがよりいいっていうわけじゃないんだけど、ゆらぎやすいっていう性質があるとその時のほうが進化しやすいっていう性質がある。――その「進化しやすい」というのはどのような意味でしょうか?
同じ割合で遺伝子を変えて、例えば「このくらい光るのを作りなさい」ってしたときに、もともとゆらいでいるやつのほうが早くそこに到達できる。少ない世代で。遺伝子が一個変わったときに、その形質がどれだけ変わるかっていうのは一定ではないわけで、遺伝子の変化が同じでも、形質の変化度合いが速い、遅いがある、その違いが進化しやすさ。いくつかの実験をやってみたりコンピュータでシュミレーションしてみたりしても、ゆらいでいる方が形質が変化しやすい、ということが見えてきてる。
統計力学で進んだ考え方をある程度ベースにして、一般的な理論が作れるんじゃないか
この揺らぎと進化しやすさ関係は割りと大事な理論につながるなと思ってる。物理のほうでは、アインシュタインのブラウン運動理論というのがある。これはアインシュタインの1905年のいくつかの業績のうちのそんなに一般には知られてないほうなんだけど、現代の統計力学とかの中心を占めるもので、この理論をもとに線形応答理論とかいうのが発展した。平衡状態の周りでゆらいでいるときに、そこに外から外場、例えば電場とかをかけたときにどのくらい変化するのかという理論なんだけど、それの骨子はなにかというと…もともとブラウン運動で粒子の位置とかが揺らいでいると。そこに外から何か力を加える、電場をかけるとかいろいろなことをする。そうしたときにそれが変化する割合…力をかけたときに応答する度合いと、もともとゆらいでいる度合いは比例している。というのがアインシュタイン以来の統計力学の一大成果。今の進化の話って、それにすごく近いんですよね。もともとゆらいでいる度合いがまずある。外場をかけるのとはちょっと違うけどれど、ある環境において適応させるってのは、外場に対して生物が応答して変化するようなもの。そういう意味で統計力学で進んだような考え方をある程度ベースにして、一般的な理論が作れるんじゃないかというのをいろいろやっています。とはいえ、そうは言っても統計力学みたいな確固とした理論が今のところないわけだから、とりあえずはそんな考え方がどこまでいいのかっていうのを実験とかコンピュータシュミレーションとかで試してみる。それでまあまあよさそうだとなったら、そういうのにたいしてどのくらい理論が作れるか。例えば熱力学だと、自由エネルギーとか温度とかいう概念を作ることで今言ったようなことの基が作られたわけだけど、そういうようなエントロピーみたいな、現象論的な量が導入できるんじゃないかと。そういったときに一つの大きなポイントは、細胞の成長率。環境変えたときにしばらくしたら成長が一番しやすい状態に行くわけで、それはほうっておくと「自由エネルギーが最小になる」とかいう熱力学の話のようなもので、符号は逆だけど。成長率が最大になるというように、成長率とかいう、熱力学のマクロな量みたいにあって、それが環境を変えるとか進化させるとかそういうパラメータに対して最大になってるというようなフレームで一応理解できる。ただ、進化をパラメータとかいったときに、一つのパラメータで書けるかどうかわからないわけですよね。だからいろいろやってみて、そういうので進化を理解するというのが、大体進化の理論、実験でやっていることです。
――多分に統計力学のインスピレーションをもらいつつ、ですか?
まさにその研究は2005年頃から始めた研究で、ちょうどアインシュタインの1905年の百年記念みたいなので、まあそこからインスピレーションがあって(笑)
細胞は、時間的に変動している状態だと、自分以外のものを作れる
発生や細胞分化の話をしましょう。今iPSとかES細胞だとかが色々賑わっているけど、多細胞生物の発生過程が面白いのは、みんな同じ遺伝子を持っている細胞なのに、最初の細胞は色々な細胞になれる。それがだんだん増えていくにつれて、 自分しか作れない細胞になっていったりする。たとえば血液の幹細胞だと、血液の種類の細胞は全部作れる、というのがあって、もっと下の段階に進むと、白血球しかつくれない、というようになっていく。だから、いろんなものになれるという能力がだんだん不可逆的に減少していく。それをうまいことやると戻せる、というのがiPS細胞の研究等でやっていることだけど、普通の発生過程ではそういうことは起こらない。じゃあどういう場合に戻せるのかということは、物理屋にとってみると「おお、不可逆性を巻き戻せるかじゃないか!」ということになる。最終的にはエントロピーみたいな謎の量Xがあって、これが増えていくとか減っていくんだとか、という話でできれば一番幸せなんですね。細胞と言ったって色々な成分からなっていて、お互いに化学反応でその量を変えていってお互いに影響し合う。その結果だんだん違う細胞ができて来るとか、いろんなものになれた細胞が自分自身にしかなれなくなるとか、そういったことが起こるかどうかということを色々と計算機で実験してみた。特にこれは古澤さんという、現在は大阪の理研の人とやっているんだけど、そこでわかったのは、最初に単成分の量が完璧に一定ではなくて、時間的に変動し合うような状態があると、それが増えていった時に、だんだん自分しか作れないようになる。いま、「自分と他のものになれる」か「自分しか作れない」という性質でいうと、この時間的に変動している状態では、自分をつくったりほかのを作ったり両方できる。しかしその振動を失っちゃったやつは自分しか作れない。
――ゆらぎ?
さっき言った「ゆらいでいる」とは少し違う。さっきの「ゆらいでる」は、自分でゆらぎを作っているというよりは、外からのノイズがあって結果としてゆらいでいるというようなもので、受身でゆらいでいる。今の場合は、中である量が増減しているという状況を自発的に作ってしまっている。その意味では、さっき言った「変化しやすさ」の王様みたいな感じ。
――じゃあんまり「ゆらいでる」って表現はふさわしくない
そうですね、自分で自発的に振動することでいろんなものを作る能力があるんじゃないかと。で、一応これはいろんな細胞のモデルをやった結果、力学系の理論というやつで一応理論的にもっともらしいというような話を作った。それが15年位前に出たんだけど、15年位前は誰も細胞の中でいろんなたんぱく質の量が振動して時間的に変化するとかいうのはあまり信じていなかった。2,3年前になってそのような例が見つかった。京大の影山さんという人達がやったんだけど、実際に色々な分化が作れる細胞の中では時間的に振動していて、それが作れなくなっちゃったらその振動はほぼなくなっている、というのが見えてきたので、これは、この理論正しいかもしれないということでちょっと盛り上がってやっています。とはいえ、まだそういう例が一つや2つ位なので、どのくらい正しいかというのはまだこれからなんだけど。もしそういうことが正しいと分かれば、iPSみたいに色々なものになれる状態に戻すには、振動を失ったような部分を活性化させて、またそれを励起させて、振動するようにさせれば良いんじゃないか、というのが我々の予言だったんだけれども……(笑)その予言どおりに話しが進んだわけではなくて。我々の理論のやや弱い点というのは、かなり一般的抽象的なモデルでやってるから、じゃあどのタンパクを励起し、どの遺伝子を励起・活性化したら振動は復活するとか、そういうことに答えるのはなかなか難しい。何かをやればいいということはいえるんだけど、どれ、ということはいえない。山中さんがやったような、4つの成分のどれとどれが対応しているとか、そういうことが分かれば、一応正しいかなということはいえる訳ですよね。まあ調べて言ったら違ってることになるかもしれません。どんな素晴らしい理論でも、結果間違っているということもある訳で。
少数コントロール
――あと本の中で面白いと思ったのは「少数コントロール」のお話なんですけれども、あれは原始的な、本当に簡単なシステムから増殖していく反応が見られてすごく面白いというか。生きている状態がある種の普遍的な状態だという立場だと、じゃあどうやってその生きている状態を適当に化学反応を集めたらできてしまうのか、ということには興味がある訳ですね。実際に共同研究者の人とかは化学反応を集めて細胞を作れないか、ということをやっていて、「適当に化学反応をして、だんだん増えていく或いはいろんな成分が作られ増えていく」という状況はだんだんできつつあるんだけど、じゃあそれがイコール細胞なの?と。その際に「遺伝情報」というものを細胞は持っている。「情報」とは何なのか?モノの立場でいえば、(情報が)DNAの上に乗っかっている。でも所詮DNAだってたくさんある分子の一つじゃないか。じゃあそれが「情報」だと思えるのはなぜか?そう考えると、結局その分子があることでその細胞の性質や増え方が制御される、ということがある。。いろんな化学反応でお互いに増やし合っていくような分子のシステムを考えた時に、その中のある分子が「情報」を担ってるんだ、と思えちゃうのは一体なんでなんだろう、ということを疑問に思った。そのようなシステムで「ほかの分子を変えると少し変わる。けれどそれ以上に、ある分子を変えるとその細胞の性質がものすごく影響されるような分子がある。そうするとその分子がものすごく大事になる。そして「そいつは保持されてなければいけないだろう」ということになって、「そういう物があればそれが遺伝情報を担う分子だ」と思えてくるようになるだろう、と。
で、じゃあそういう状態は一体どうやって生まれてくるんだろう、と考えた。
DNAとタンパクの関係をみると、DNAだけで増えているのではなく、DNAとタンパクがお互いに増殖を助けている。「お互いに助け合う関係なのに片方のみが偉そうに見えるのはなぜか?」ということに行き着く。
結論はすごく身も蓋もないんだけど、お互いが増やし合う系で、片方は作るのに時間がかかるとかで数が少ない、そういうときに数が少ない側はそいつが変わることで他の全てに影響を与えてしまう。ところがもう一方の分子はたくさんあるから、一個の性質を変えた所で、一斉に全部の分子の性質を変えない限りは大した影響は無い。そういう形で少数のやつが情報を担うようになっていったんじゃないか。
――それは先生の実験で、化学物質XとYの相互触媒系を考えて、シュミレーションを走らせると、再帰的増殖と分化の両方の現象がみられたということ?
少数のやつが変化していく限りではほかのいろんな分子はそれに影響されて色々変化しやすいのに対し、少数のやつが同じである限りは、ほかの分子も一定の範囲内にあるという意味で、同じ物を作っていくという性質を持ちやすい。そういう意味で、再帰的に同じ物を作りやすいし、そいつ(少数のやつ)が変わることで進化しやすい、というようなことになるのでは、ということです。
――それが「同一多様化」?
というよりはそれは「少数コントロール」。同一多様化は、細胞分化の話の方で、相互作用をしているうちにもともと同じものが変わっていってしまう、ということ。ただ、「少数コントロール」は、それがあれば、うまく進化できるとか、遺伝情報になる、という所までは言えたけれど、勝手にそういう少数成分が生まれて来るか、つまり適当な化学反応の系に、どこからともなく少数のやつが入ってきてすべてを制御するように自発的に変化していくか、ということは依然として謎です。
そこがどうやって生まれるか、というのはよくわからない.これは昔からそれに近い問題は議論されてて解決されてないんだけど…「遺伝的乗っ取り」という話があります。最初の生き物はDNAみたいな遺伝物質を持っていなかったんだけど、適当な化学反応で代謝を維持していて、そこに今の遺伝情報を担う分子がうまく入り込んでそれを乗っ取り、今のような生き物の進化する性質を持つものが生まれてきたのでは、という仮説がある。
最初はケアンズ=スミスって人が言って、そのあと物理で有名なフリーマン=ダイソンという人が定式化した。かれのorigins of life という本に書いてある、だけど、依然「どうやって遺伝が起こるの?」という問いにはまだ答えられていない。我々は「少数成分があればそういうことが起こりうる」ということは示したけど、「勝手にそういう状況が生まれて来る」かどうかは依然分からない。
適当にみんな進化もせずにやっていた状態が仮にあったとして、どうやってそこに少数のやつが入り込んでコントロールするような状況がどうやって生まれるのかは、今の所よくわからない。
――先生の書かれた『生命とは何か』の中では、内部の揺らぎやダイナミクスとともに相互作用が非常に大事だとされていますよね。相互作用によって分化とかが進展する。
さっき振動するのが大事だと言ったんだけど、単体で振動してるだけだったらみんな勝手に振動しているだけになる。しかし、中のタンパクが振動している細胞がお互いに影響し合うとその影響の度合いによって違う所に移るということが起こる、と。
――違う所に移る、とは?
化学成分が二種類仮にあって、その量がお互いに増減すると、二次元の絵で回っているような感じになる。一つの細胞で見ると、そのタンパクの量が変化して回っている状態の物がある。それがたくさんになると、みんな違う位相で振動して
タンパクの量が全く同じ細胞が影響し合っても同じ影響しか与え合わないわけで、これを変化させることは難しい。ところが振動していると、みんな違う所に一瞬一瞬いるような状況になっているので、一方が別の所にいるともう一方に与える影響は異なりうる。
すると、その相互作用の影響で細胞の状態を大きく変えるような影響を及ぼしあうことも起こりうる。そうして、また別な安定な状態に落っこちちゃって振動も止まってしまう。そういったことが起こると色々な細胞を作れる細胞から自分しか作れない細胞に変わってしまう。
振動しているほうの細胞は、自分自身を作る場合もあるし、今の状態から飛ばされて違う物になったりする場合もある。複製と分化を両立できる。
普通に考えるとその両立は難しい、とくにそれが振動しない安定している物だったとしたら、自分しか作れない筈。それが今、安定している状態が振動しているものだとすると、いろんな所があるので、それによって飛ばされたり自分を作ったり、が両立できる.というのが一応我々の考え方。理屈的には自然だし、色々なシュミレーションをやると、そうなるので、まあ正しいのではないかなあ、と。