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【映画企画】黒沢清監督インタビュー

海外で最も知名度のある現代の日本人映画監督は誰だろうか?
この問いの答えとして、是枝裕和監督、北野武監督と並んで挙がるのが、黒沢清監督だろう。
特に黒沢監督を「発見」した「カンヌ国際映画祭」の開催国・フランスでの知名度は非常に高く、新作『岸辺の旅』は約80館で公開され(日本では約90館)、現地のあるシネコンでは初日の動員数が上位3位に食い込むなど黒沢監督の人気が改めて証明される形となった。今年の秋には全編フランスで撮影された新作『ダゲレオタイプの女』が公開される予定だ。

さて、2016年2月4日。黒沢監督にお会いして私は浮き足立っていた。
アメリカと並ぶ映画大国・フランスで圧倒的な知名度を持っている黒沢監督が目の前にいる……!『CURE』、『叫』、『トウキョウソナタ』といった監督の作品のシーンがどんどん蘇り、質問したいことが溢れてきた。監督の「撮りたいもの」、東京藝大大学院映像研究科監督コース教授として若手にどのようなことを期待しているか、新作のこと……気づけば、「映画企画」史上最長となる、2時間半にも及ぶインタビューとなった。是非ご覧いただきたい。

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1.黒沢監督の「撮りたいもの」


―――黒沢監督が「本当に撮りたいもの」というのはどのようものでしょうか。

「撮りたいもの」というより「撮れるもの」を撮るということを考えてきました。これまで撮ってきたのは「撮りたいもの」であると同時に「撮れるもの」であると考えています。撮れもしないのに「撮りたい」と言い続けることがそれはそれで立派な態度かも知れませんが、映画というのは一人でやるものではありません。もちろん、今は色々な表現があり、色々な撮り方がありますが、僕は劇場でやっている商業映画を一つの基準としています。そうなると、撮りたいものがすぐ撮れるというものではない。人もお金も必要となってきますし。それは自主製作の映画でもデジタル映画でもそうですね。友達を集めなければいけないし、何十万、下手したら何百万かかってしまう。というときに「やりたいもの」というよりは「やれるもの」をやる。そういう心構えで続けてきました。

―――そもそも、ある作品を作る時に「この作品のテーマはこれである」というものが念頭にあったりするものなんですか?


いや、それはないです。ないですが、一言で言えるようなものがない、というだけで、この映画をこんな風に完成させてみたい、という強い欲望のようなものはあります。それを一言でいうのは難しいのですが。その意味で、テーマと言えるのかもしれませんが「圧倒的に面白い映画」を作ってみたい。その面白さの前に、面白さ以外のものが吹っ飛んでしまうような。観た瞬間に「あ、これのことだ」と言葉を通さず直感できるような作品って作ってみたいなあ、といつも思うのですが、中々。

―――例えばどのような作品でしょうか?

いっぱいあるのですが、凄く分かりやすい例として、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1)。あれは圧倒的に面白いですね。テーマが何かと言われれば特にないし、話を言ってみろ、と言われれば下らない話で、人間が深く描けている気もしないですし。ただ、圧倒的面白さが全編に貫かれていました。一方で物語的なテーマとして、かねがねやりたくて、これまでもやろうとしましたが中々実現できないでいるのが「戦争」。戦争を扱った映画がやってみたい。ただ、実際これは大変ですね。お金がかかりますし。また、いつの、どの戦争にするか、でまた色々ありますしね。悩みどころです。


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(1)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(監督:ロバート・ゼメギス)は、1985年のアメリカ映画。全米公開時には『フューチャー現象』と呼ばれる程のブームが起き、日本でも興行収入66億円の大ヒットとなった。