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2014駒場祭「ミニシネマ・パラダイス」講演会記事


3「映画館で観る」ということ

―ミニシアターの生き残り戦略についてお伺いします。ご両館は、大規模なシネマコンプレックス(シネコン)にどのように対抗しているのでしょうか。


(浅井)
そもそも、シネコンとやっている映画が違うからね。

(山下)
そうですね。

(浅井)
僕は配給会社もやっているから、シネコンにも配給会社として映画の供給をする。だから、必ずしもシネコンを敵だとは思っていなくて、むしろどう利用していくかだと思う。それに、シネコンでやっている映画の多様性は圧倒的にない。シネコンって、スクリーン数が多くても、字幕と吹き替えとかで同じ作品をスクリーンもやっていたりする。そうなると、シネコンでは自分が観たいと思える映画をやってない時がある。だから、そこに行けばとにかく東京でやっているミニシアターの作品が全部観られるようなアート系の映画のシネコンを作りたいなとは思う。

―見聞伝ゼミナールでは今年10月には大学生、大学院生に対してアンケートを行いました。その結果からも、「(DVDレンタルに比べて)料金が高い」、「映画館で映画を観る時間がない」、という理由で映画館を訪れない人が多いことがわかります。こうした状況に対し、お二人はどのようにお考えでしょうか。


(山下)
まあ、凄く難しい。確かに、業界の常識として、「まあこれDVDになってこれだけ売れたんだからお客さんは入らないだろうし、もう上映する意味ないよね」ということがよくある。でも、メディアやSNSの影響とかで、お客さんに作品を伝える方法が昔と変わっているので、以前上映した時とは全然違うお客さんがいらっしゃるのは感じます。

(浅井)
映画館で観ると、暗闇の中で集中して観られるし、他人と一緒に見る経験というのは特別だと思うけどね。実際、うちでもDVDとしてレンタルされている作品も上映するけど、観に来る人はたくさんいる。やっぱり、映画館に観に行くのとレンタルビデオを借りて観るのは別物だと思った方がいい。

(山下)
そうだと思います。レンタルして観たい映画と映画館で観たい映画は違いますよね。僕も正直、「これはレンタルビデオでいいや」って思うこともよくあるんです。逆に、「これはレンタルビデオで見てもしょうがないな、頑張って映画館に観に行かなきゃ」っていうものもある。
メジャー作品がそうではないとは言いませんけど、アート系の映画は、物語を見て情報を得て終わりではなく、映像表現として観られることを考えて作られていて、こちら側も映像体験として見せたいものが多い。だから、そういうものは映画館で観るのが一番だと思います。例えばフェスティバルでやったアレクセイ・ゲルマンの『神様はつらい』という作品は、顔の前に嫌なものばっかり写ってひたすら耐える映画なんですけど、三時間あってずっと気持ち悪いんですよ。気持ち悪くて観てられないし、もしこれをDVDで家で観たとすると、例えば電話がかかってきたり、腹が減ったなってなったら途中の10 分くらいで観るのをやめると思うんです。でも、映画館でその気持ち悪さに耐えて観ると、それが体験になって「なにかすごいものを見たな。これは何なんだろう」っていうようなすごくモヤモヤしたというか……エネルギーが伝わってくる映画なんです。こういう経験は映画館でしか得られないのかなと思う。

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