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2014駒場祭「ミニシネマ・パラダイス」講演会記事

2014年11月23日に開催しました駒場祭講演会「ミニシネマ・パラダイス」の様子です。
改めまして、ご来場くださった皆様、ありがとうございました。

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自己紹介

(浅井)
アップリンクの社長の浅井と言います。よろしくお願いします。
僕は1970年から80年にかけて、寺山修司が主宰した劇団「演劇実験室天井桟敷」の舞台監督を務めていました。公演のために欧米の大都市を訪れ、そこで「カルチャーセンター」というものに出会いました。そこは、カフェやギャラリー・シアター・ライブラリーがされているところでした。20代の頃にそこで見聞きしたものが今の僕にとって良い意味でのトラウマになっていて、現在のアップリンクを作る時のモデルになりました。

いまから7年くらい前に、渋谷区宇田川町にあるビルの2フロアを借りて映画館を始めました。1階にはカフェ「タベラ」とギャラリー・イベントスペース「ファクトリー」、2階には2つのスクリーン「エックス」「ルーム」と物販スペース「マーケット」を設けています。
Twitterの反響をみると「手作り映画館」とも評されているようです。もともと普通の雑居ビルを映画館に作り替えているので、他の映画館では当たり前のことも一からやっています。スクリーンの前には家具店で購入したソファや座椅子を並べ、前席のお客さんの頭にスクリーンが被らないように平台を設置しました。また小規模なので、満席で映画を観られないお客さんの不便を解消するために、「Ticketboard」というWeb座席予約システムを導入しました。

映画上映のほかに、アップリンクでは「ワークショップ」を開催しています。
デジタルカメラが普及し、いまは誰でも映画を撮ることができる時代なので、未来の映像制作について考えている人たち、映画を観る人ではなく作る人・届ける人たちを対象にこの企画を始めました。現在は配給サポートと映像製作の2つのワークショップを開催しており、最近は定員を超えるほどの人気があります。

また、以前刊行していた雑誌「骰子」の後継としてWebサイトwebDICEを運営し、映画やカルチャーに関する情報を発信しています。

年末年始には「見逃した映画特集」といって、今年公開の映画で人気だったハリウッド映画からからドキュメンタリーまで、他の映画館の上映作品も含め40本弱の作品を再上映します。
小さい割にはいろいろ考えてまさに手作りで運営している映画館です。是非一度訪れてみてください。

(山下)
イメージフォーラムの山下と申します。シアター・イメージフォーラムの支配人ということになっていますが、映画館のプログラミングや広報などをやっております。
私がどうしてイメージフォーラムで働くようになったのかというと、私自身学生の時に、いわゆるミニシアターというところで沢山映画を観ていました。その中で自分も何か映画を作ってみようと考えるようになり、イメージフォーラム映像研究所のワークショップのチラシを見つけて、そのワークショップに参加したんですね。そうしているうちに色々仕事を頼まれるようになり(笑)、現在に至るという感じです。

アップリンクもイメージフォーラムも、映画館を運営している組織としてはかなり異色な存在なんじゃないかなと思います。
映画館「シアター・イメージフォーラム」は、四ツ谷にあった「シネマテーブル」を移転する形で2000年にオープンしました。プログラム的に言うと、アーティストが作ったような映画、映像作家が作った映画の新作と、ドキュメンタリーと、特定の監督の特集上映といったものが多いです。最近はポーランドの新旧映画を特集した「ポーランド映画祭」を毎年やっています。

イメージフォーラムはもともと「アンダーグラウンドセンター」という名前で、個人で実験的な映像作品を製作していた人たちが自分たちの作品の上映活動を行う組織として1971年に誕生しました。その中で、他の作家の作品も預かって所謂配給活動を始めました。そこで、浅井さんもいらっしゃった天井桟敷の劇場を拠点にしながら定期的に個人映画実験映画を上映する「シネマテーク」活動を行っていました。その活動は現在のイメージフォーラムにある「寺山修司」という部屋で続いています。

そのシネマテークを続けながら、77年に後進の映像作家を育成する「イメージフォーラム映像研究所」を立ち上げ、団体の名前も「イメージフォーラム」に変わりました。現在も、1年間のコースで映像製作の手法を学ぶワークショップをやっています。
80年には出版社「ダゲレオ出版」を立ち上げて、『月刊イメージフォーラム』というオルタナティブな実験映画やアート的な映画を取り上げる雑誌を出版していました。雑誌はいま休刊中ですが、出版社ではシアター・イメージフォーラムで上映した映画のDVDなどを販売しています。

87年からは、国内外の芸術的な作品を集めた映画祭「イメージフォーラム・フェスティバル」を毎年ゴールデンウィークに、東京・京都・福岡・名古屋・横浜の全国5都市で開催しています。これは、日本で紹介される機会の少ない映像作家たちの新作の発表と相互交流の場としてスタートしました。今年(2014年)の映画祭で取り上げた(1)アレクセイ・ゲルマンの『神様はつらい』という映画は来年(2015年)の2月に『神々のたそがれ』というタイトルで公開されると聞いていますが、それでも映画祭で上映された作品の中で他の劇場でも公開されるものはほんの一部で、ここでしか観られない作品が多いです。

イメージフォーラムとしては、いろんな形で映画や映像といったものの可能性があるんじゃないかという主眼のもと、映画の上映・配給をしております。

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(1)ロシアの映画監督(1938~2013)。代表作は、『フルスタリョフ、車を!』。『神様はつらい』は遺作となった。