KENBUNDEN

合コンから貧困まで 東京大学見聞伝ゼミナール公式サイトです

トップページ > Interviews > 【映画企画取材】藤岡利充監督(映画監督)

Interviews

【映画企画取材】藤岡利充監督(映画監督)


藤岡監督2

【日本映画の戦い方について】「海外に目を向けるしかない」

-今回の配給に関してなのですが、まずポレポレ東中野(12)で上映が始まって、その後口コミで評判が広がり、他館への公開につながりました。この配給方法はどう決まったのですか?

あれは、ポレポレさんに連絡が入ったみたいですね。僕も詳しく分からないんですけれど、地方の場合は、劇場からアプローチがあるみたいですね。「ちょっとサンプル見せてくれ」と言った具合に。

 

-生々しい話になりますが、製作資金は、幾らくらいでしたか?

最初の製作資金は、300万円でした。それは純粋な製作資金と言うか、機材をそろえるのに300かかったんですけれど、その上に更に、宣伝・広告費とかかかるじゃないですか。合計で500、600万はかかりました。ペイは出来ました。でもそれでも、トントン。ペイできるか、できないかぐらい。


-あれだけの反響を呼びながらトントンですか。そうした厳しい財政状況の中で、今後も映画を撮り続けるっていうのは、大変じゃないですか?映画は他の表現媒体に比べると、お金がかかりますよね。機材だけでも300万円かかっているわけですし……。


そうですねえ。だからもう、共産党の気持ちですね(笑)ロマンです。 だから、今後DVDのセルでどうなるか、なのですけれど……。でも、今の時代、機材費も下がってきてはいるんですよ、小さな機材で撮影もできるんですけれど、問題はその後ですよね。かけてくれる劇場が少ない。

 

-僕らの中でも、それが問題意識としてあります。先日、30年の歴史を持つ吉祥寺バウスシアター(13)の閉館が決まってしまいました。このようにミニシアターの規模が小さくなると、藤岡監督の作品のような、インディペンデントの素晴らしい作品に触れる機会がなくなっていくように思うのですが、如何でしょうか。

作る人間は減らないと思うんですよ。ただ、かけてくれる劇場の数はどんどん減っていくと思います。供給の方が多いですからね。だから、僕はマーケットを広げるしかないんじゃないかと思います。日本だけをターゲットにしていくと厳しいんじゃないかと。

 

-今はもう、日本で評価される前の、ないしは日本で評価されない作品が海外の映画祭で評価されるケースが多いですよね。

やっぱり海外を視野に入れた映画の作り方をしていかないと。親日国ってあるじゃないですか。そうした国々を視野に入れた作り方をしていくしかないんじゃないかと。僕も、これ(映画)で食べたいとは思うんでそういう作り方をしていくと思います。

 

-『映画「立候補」』は、どこかの海外の映画祭へ出品したりはなさらないのですか?『選挙』が海外で評価されたのと同様、日本の選挙の実態を描いた本作は評価を得られると思われますが。

出品はするんですけれど、海外で求められている日本像ではないですよね。震災とかの方が受けはいいですから。 想田監督の『選挙』は、言ってしまえば、今の日本の否定じゃないですか。どっちかって言えば、『映画「立候補」』は、今の日本の肯定で終わっているんですよね。そこの違いはあるかもしれないなと。
最後にどっちに転ばせるか、って考えた時に、僕は肯定に持っていったんですよ。

 

-どのようなものが受けるかがの判断などは、海外に進出していく難しさですよね。

難しい所ですよね。僕は、自分の映画を観て、日本を好きになって欲しいんですよ。ただ、そうした作りが、少なくともドキュメンタリーという枠組みの中では、求められていたものと違うのかなあ、と。やはり親日国がターゲットですよね。

 

-これからは、そういう売り出し方も考えていかなければいけない、と。それでは、今後監督が、映画監督として食べていく戦略と言うのは、テーマは興味があるものを選んだうえで、それを海外に売り出しつつ、国内の小劇場でも展開していく、という形でしょうか?

はい。もちろん、ミニシアターでも頼まれれば出していきたいとは思いますけどね。ただ、それだけっていうのは、ね。『映画「立候補」』もまあまあヒットしたって言われながら、これだけの返ししかないってなると、ちょっと厳しいんだろうな、と。

 

(12)中野区にあるミニシアター。新人監督の作品やインディペンデント映画を多く上映している。
(13)東京都武蔵野市吉祥寺本町にある映画館。ロードショーの他に単館系作品も上映している。2014年5月末日をもって閉館予定。