KENBUNDEN

合コンから貧困まで 東京大学見聞伝ゼミナール公式サイトです

トップページ > Interviews > 【映画企画取材】藤岡利充監督(映画監督)

Interviews

【映画企画取材】藤岡利充監督(映画監督)


【どう戦っていくか】「僕は、勝つことと負けることは表裏一体だと思うんですよ」

-最後の橋下氏のシーン(5)は衝撃が大きかったです。

アメリカの大統領選挙は、どちらかが先に敗北宣言出すんですよね。49対51だったとしたら49の人が早々と敗北宣言出して、それ以上争わないようにするんです。でも日本だったら49の人が負けてないって大騒ぎする。もしオリンピックだったら、銀を取った人が「俺、金だったよ」とか大騒ぎしないですよね。それは何故かといえば、負けた人は「自分がいつか勝つかもしれない」と思っている。逆も然りで、勝った人は「いつかは負けるかもしれない」と思っている。だから勝った人は負けた人の意見といえども取り入れる気持ちがなければいけないし、謙虚でなければいけません。その一方で負けた人たちは勝った人たちを認めないと、自分が勝ったとき認めてもらえなくなります。今回の都知事選で舛添さんが勝った時も、他の候補も舛添さんが勝ったことを認めようとしませんよね。舛添さんが勝ったからこそ、勝った舛添さんを上手く利用することを考えればいいのではないでしょうか。勝った人にアプローチすればいいのに。僕は、勝つことと負けることは表裏一体だと思うんですよ。常に勝てる時ばかりじゃないですし。この映画ではそこまで表現していませんけどね。

 

-その話を聞いて個人的にすごく興味深く感じたことなのですが、成功の確信自体は、負けの可能性が高い中で自分がどういう戦いをしていくかというところから組み立てていくことってことだと思うんです。監督自身は映画「立候補」という作品で勝つことを考えていましたか?

もちろんです。戦略としては、まず観たときに観客が寝ないで、観た後に誰かに映画について語りたくなるということ。観た人に損したと思わせないことですね。そこを大事にしていく。あとはキャスティング。だから、なるべくなら泡沫候補の有名どころを全部集めなきゃいけない。だから又吉さん(6)にはこだわりました。

 

-又吉イエス氏は、40分電話して交渉した結果、断られたとのことでした。

そうです。意外とっていうかね、又吉さん、言葉しっかりしてて、電話越しですけれど、背筋伸びてるなって(笑)。頑固なおじいちゃんっていうイメージで、電話越しで「今、震災で日本が下に向いているからねえ、これは日本を元気にする映画なんですよ。又吉さん、今ネットですごい人気があるじゃないですか。又吉さんを支持している人たちって、やっぱり元気のない人達だと思うんですよ。又吉さんが映画に出ることで元気になれると思うんですけどね」って言ったんですが、断られました(笑)

-どうして断られたんですか?

自分は大きなメディアしか相手にしないって(笑)。多分、それは昔トラブルがあったんでしょうね。又吉さんの動画は昔からネットにたくさんアップロードされているじゃないですか。どこかのタイミングで、又吉さんが気分を害されるようなことがあったんじゃないかと。それの積み重ねで、「そういう所に出ても意味がない」と思われたんじゃないでしょうか。

 

-マック赤坂が演説を始めたらみんないなくなって、「真面目なことを言うと誰も聞かない」と言っていたシーンはとても印象的でした。

そこもすごく難しいんですけれども、マックさんが誰を見ているかですよね。マックさんは聞いていない人を見ているんですよね。でも、彼の話を聞いている人もいるんです。マックさんはずっと渋谷に立っていたり、いろんなところの街頭で演説を行っています。そこでマックさんが一番気になるのは、自分が無視されているということだったということでしょうね。

 

-想田監督の影響は受けていらっしゃるんですか?観察映画のようにナレーションも付けてないですし。

受けてますよ。最初は観察映画みたいに、長回しのシーンだけで編集したバージョンもありました。ただ、それを試写し終わったら、作った自分が寝てたんですよ。で、これは拙いなと思って、眠いのを我慢して観返してみたら、マックさんに対する怒りしか生まれてこなかったんですよ。「これは駄目だ」と。マックさんに対する怒りが生まれて、それでも「この映画観て良かったな」と思えるならいいんですけれど、そうはならないな、と。
元々、見る必要がないと思われている人ですから。見る必要がない人についての映画の結論が、「見る必要がないですよ」では、時間の無駄ですから。だから、こういう作り方は止めて、自分に出来る得意な手法で作ろうと思いまして。「まあ、変なおっさんだけど、面白い所もあるよね」と、鑑賞後にそう思えるような映画になればと。

 

(5)選挙に勝利した橋下氏が記者からの「負けた候補者たちの主張を取り入れる気はあるか」との問いに対し、「負けた候補者の主張は全く覚えていません。選挙は負けたら終わり、ジエンドなので。」と答えるシーン。
(6)日本の政治活動家。世界経済共同体党代表。唯一神。本名は又吉 光雄(またよし みつお)。自らを「唯一神又吉光雄・イエス・キリスト」(ゆいつしん・またよし みつお・イエス・キリスト)と称し、政治活動などを行っている。