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Interviews

【映画企画取材】藤岡利充監督(映画監督)


【製作秘話】「マックさんは巨神兵」


-何故泡沫候補を全員撮ろうと思われたのですか。


早い段階でね、「マックだけでは持たない」と思いました。泡沫候補の闘い方を全て表現したいって思って。泡沫候補の中でも、マックさんって知名度がある方じゃないですか。そうじゃない人達、「泡沫候補の中の泡沫候補」、みたいな人たちも写しておきたくて。

-撮影の中で、一番印象的だったシーンはありますか?

一番、「この映画がもしかして上手くいくかも」、って思ったのが、京大で学生を罵倒した後で、今度は警察を罵倒する(7)あのシーンを見た時ですね。こんなの他で見たことないだろう、と。

-逆にそれまでは、上手くいくかどうか、半信半疑だったわけですか?

こりゃ駄目だろう、と思っていましたよ。何回か「帰ろうか」とすら思いましたし。で、マックさんがあれをやったから負けてはならないと奮起しました。あの時は「マックって、選挙期間中は、スターを取ったマリオ(8)みたいな気分なんだろうなあ」、と思いました(笑)。


-ただの、恫喝している人ですもんね(笑)。

ただ、やっぱりすごいと思ったのは、(劇中のシーンで)京大の学生って弱い人でしょ、で、警察は強い人で。彼はそのどっちにも強くあろうとする。まあ、普通いないんですよ。どっちかに弱いんですよ。ただ、マックさんは違うでしょう。どっちにも強くあろうとする。それであの時例えたのは、巨神兵(9)(笑)
とはいえ、政治とは弱い人を助けるためのものじゃないかと思って、マックさんへの反論のつもりで、あいりん地区で住民にインタビューをしてみたんですよ。

 

-マックさんもそうですが、戸並健太郎氏(10)や桜井さんがどういう人生を送ってきたのか、気になるところです。

桜井さんも、自分の会社がつぶれてから苦労されています。桜井さんが言われてましたけど、「この仕事は辛いけどどんな仕事にも必ずいいところはあるし、仕事は辛いのが当たり前なんだから、そこで自分がどれだけ努力できるか。プラスの方を見ようとして頑張っています」とのことです。


-マックさん自身はお金持ってますよね。


でもドケチですよ。あれほどケチな人は見たことない。俺奢ってもらったことあるのうまい棒だけじゃないかな(笑)。あとはたこ焼き一個か二個くらい。

 

-マックさんとはどれくらいの距離感で撮影されたんですか?

自分はマックさんに直接対応を求めましたが、マックさんは嫌がるんです。だから僕はいつも桜井さんを通して、「今日はどこでやるんですか」ということを聞いて会うってことをしてました。マックさんは結構一人になりたがる感じは強いです。他人を全然自分の中に入れてくれません。入れてくれそうである程度のところで止める。かわいい女の人なら別ですが、男は駄目でしたね。

 

-かわいい女の人ですか。マックさん結構遊んでそうですものね(笑)

映画「立候補」で唯一知ってたけど描かなかったのが、マックさんが選挙活動の半分くらいナンパしてること。(一同爆笑)
全部欲張りすぎなんです。モテたい、政治で勝ちたい、笑わせたい、欲張りすぎなんです。でもそれも含めて、自分に全部それを取る価値があるって思ってるのが彼なんです。なかなかそこまで自分の価値を高く設定できないですよ。

 

-作品に関する質問のシメとして、撮り方の問題なんですが、結構カメラがあることによって相手が意識すると思うんですよ。そんな中でどのように撮っているのかと。京都府警のシーンがあったじゃないですか。あれは気づかれないように撮っていたのか、そうではないのでしょうか。

逆にカメラは大きいほうがいいんですよ。最近は小型化のカメラが増えているから分かりにくくなっていますけど、大きいほうが相手も「取材なんだな」とはっきり分かる。それで相手もしゃべるかしゃべらないの判断も出来るから。小さいと分かりにくくて、「ただネットに流して晒すだけじゃないのか」と逆に警戒されます。なるべくカメラは目立つほうがいいと思います。取材をしてますってはっきりした方が相手も警戒しない。撮らないで、と言う人にも、わかりやすく「取材をしてます」ってポーズがあれば大丈夫です。

 

(7)京都大学の学園祭において、校門の前で演説を始めたマックを諌めに来た学園祭実行委員の学生に対し、「選挙妨害で就職がなくなるぞ」と脅したり、選挙区域外の京都府で大音量で音楽をかけながら踊るマックを諌めに来た警察官を「選挙のルールも知らないのか」と罵倒するシーン。
(8)要するに、無敵状態。
(9)スタジオジブリの宮崎駿監督の映画作品『風の谷のナウシカ』、および宮崎駿の同名原作漫画に登場する架空の巨人型人工生命体である。
(10)マック赤坂の一人息子。映画「立候補」のラストでドキュメンタリー映画史に残る名場面を生み出す。