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Interviews

【SF企画】幸村誠先生取材(漫画家)


PHASE 05 幸村ワールドはどこへ向かうのか

――お年を重ねて、心境の変化とか作風の変化とかありましたか?

子供ができたことで、子供が将来読むことを想定して描くようになった気がします。
今までは好き勝手に書いていたけど、目の前にいるこの人が読者さんだとハッキリと意識するようになった気がします。

――プラネテス以外でもう一度SF漫画を書いて下さいと言われた時に、どういうものを作りたいですか?

よくプラネテスの続きを書いてくれませんかとお願いを言われることがありますが、「続き」は無いと思います。
仮に同じ世界観や設定を引き継ぐとしても、もう少し進んだ時代ということになるかと。

『ヴィンランド・サガ』を書き終わったとして、それでもまだ描き足りない、上手くテーマを描ききることの出来なかったという悔いが残ったら、
『プラネテス』や『ヴィンランド・サガ』のようなものを内包したものを書くんじゃないかな。

もしまたSFを描くとしたら、楽しいのが良いですね。

やり切った!当分いいわ!という気持ちになったら、描いてて楽しい、読んでて楽しい、そういうものをSFにしろ何にしろ描くんじゃないかな
もし次回作が楽しいやつだったら、「幸村先生描き切ったんだな」と思ってください。

――今の『ヴィンランド・サガ』は、苦しんで描いているんですか?

もちろん面白くしようとして描いているんですけど、描くの辛いなあってよく思います。
ストーリーもシリアスな話だと大変だなあって思うし、何より絵を描くのが苦行で苦行で。(笑)
僕そんなに絵が好きじゃないのかなあって。

もっと楽しく描ける絵とストーリーで楽しくやろうよって、そうしたら読む方も楽しいよきっと!って。
でも『ヴィンランド・サガ』の役割ってそれではないので、難しいと思う。

――次回作のネタバレになるかもしれませんが、『ヴィンランド・サガ』のあと、これを書きたいっていうのはあります?

僕、現代日本を舞台にしたものは、描いたことないんですよね。15年漫画描いているのに!
だから現代を舞台にした、ホラーでも楽しいモノでもSFでもいいし。楽しいものを描いてみたいですね。

ただあれ描きたい、これ描きたいとあんまり考えていると、今描いてるやつを早く終わらせたくなるので。

――じゃ、この話はほどほどに。(笑)

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彼は、自分のことを「テンポが悪くて、孤独だ」と言った。
確かに彼は孤独なのかも知れない。
どこか、ふわふわとしていて、どこか、遠くを見ていた。

彼の生み出した、はるか遠くの深宇宙を見据える科学者や、まだ見ぬ海の向こうの新天地に理想を抱いたヴァイキングたちは、
あるいは彼のような目をしていた。

そんな彼と話す時間は、あっという間に終わった。
彼の描く漫画は、次はどこへ行くのだろう。

聞き手:田村修吾 吉見洋人 写真:後藤亮