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Interviews

【SF企画】幸村誠先生取材(漫画家)


PHASE 02 『プラネテス』と宇宙開発の最前線の邂逅

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――デブリを扱うきっかけとなったのは、『宇宙のごみ問題』という本ですよね。この本は、たまたま買われたんですか?


たまたまですよ。
本好きなので、その頃はバイト代を持ってよく本屋に行っていたんです。
背表紙とか見て、面白そうだったら買ってみる。その中の一冊が『宇宙のごみ問題』でした。
SFが好きで、SFの漫画を描けたらな、って思っていたところだったので、面白そうだな、って思って。

――当時、「デブリ」という言葉を「人間が捨てた宇宙ゴミ」という意味で使ってたSFが、他にはあまり事例が無いと聞いていたので、多分幸村先生が漫画だと初めてなのかと。

おそらくそうですね。

――理系でないのに自分で調べられたんですね。こんな本を持っている時点ですごいなあ、と。
『ヴィンランド・サガ』でも、歴史学などの最前線の学説を拾っておられるように思います。
どうやってキャッチしているのでしょうか。


僕は無学な人間ですけど、本が好きなんです。
だから関連書籍を読んで、読んでもよくわからないところは点と点の間を「なんかこうかなぁ」と想像して、線でつないでいる。
その線の結び方が間違っているよ、ってたまに指摘されます。
「ああ違ったー、そこは思いつかなかったー」っていうことはありますけど。それでも、本当に本が好きでみてるだけです。

――『プラネテス』で宇宙開発に関心を持ち、実際に宇宙開発に関わる人も増えています。
幸村先生自身は宇宙開発フォーラムの取材を受けるなど、現場に足を運ぶようになったり、現場の人とお話をなさったりしています。
きっかけやそこに至る思いなどがあるんでしょうか?


漫画を描いている間は特にやりとりなどは無かったんですけれども、アニメ化されるくらいの頃にポツポツと「読んでるよ」と話をしてくださる宇宙開発関係の方が出てきた気がします。
専門分野に進んだ方から何がしかの感想をいただけるのはうれしいですね。

――宇宙開発の現場やイベントと関わる中で、先生の中で宇宙開発やSF漫画に対して変化や思うことはありましたか?

特にないです(苦笑)。
でもいろんな方とお知り合いになれたのはうれしいですね。
宇宙飛行士の方々とお会いしましたし。目の前にいる人が宇宙行ったんだなぁというのは不思議な感じですね。この間ISSの船長になった方(*9)とか。

――先生は宇宙開発のリアルな現場を描かれましたが、ご自身が思っていたのより現実の方が進んでいて驚かされたり、そういったことはなにかありますか?

デブリに関しては、ずいぶん記事になるようになったと思います。
一般には、2000年代初期までは、全く知られていないものだった気がします。
それが近頃は、新聞でも人工衛星が爆発してデブリが発生したなどと、記事がたまに載るなと思います。

この間の映画『ゼロ・グラビティ』(*10)だってそうです。あんなのがテーマになるようになってる。
低軌道だから2時間で地球1周なんですが、2時間おきにデブリがまた来る! なんて描写をちゃんとやってるのは凄いなぁと思いましたね。

あと『プラネテス』を描いてから、対デブリの様々な技術や最新アイディアが耳に入るようになりました。

そういうのを拝見する限り、まだデブリ回収に関する決定打というのは無いように感じてますね。
おそらく相当に技術が進歩して、人が常駐するISS以上の施設が整っていったり、あるいはビックリするような新素材が出ないと、ブレイクスルーは無いだろうと思います。
このままだと2070年になっても無理じゃないかなぁと。

漫画の中だと、人員と宇宙船を使って、軌道を合わせてデブリを回収してリサイクルし、無理なら燃やす、と非常に贅沢なデブリの回収の仕方をしています。
それができればある程度はマシになりますが、そのやり方でさえ小さなデブリ、数ミリ程度のものは回収できない。
1センチ以下のデブリは、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)でさえ確認できないけど、ISSに致命的な打撃を与えることができます。
そんなものが、確認できている2万数千よりも遥かに多いはずです。絶望的だと思いませんか?
ピクサーの『WALLL-E』(*11)という映画で、主人公のロボット、ウォーリーがロケットで地球を出る時、地球の周りをゴミが隙間なく膜のように覆っている描写があるんです。
アレほどにはならないにしても、デブリ膜と言いますか、原子核の周りを電子がぶんぶん飛んで電子雲を作るような、そういう状況にならないとは限らないんです。

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*9宇宙飛行士の若田光一さんのこと。2014年4月からISS(国際宇宙ステーション)コマンダーを務めている。
*10アルフォンソ・キュアロン監督。2013年公開。
*11アンドリュー・スタントン監督による米ピクサーの映画。2008年公開。