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Interviews

太田克史さん(編集者)**文学企画


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(4)教科書には、載るよね
廣瀬
そうですね。例えば、佐藤友哉や西尾維新さんが、何十年後かにも読み続けられているような作家になると思いますか?
太田
なってくれたらいいなと思いますよ。そして、なってくれるんじゃないかと思いますよ、奈須きのこさんや竜騎士07さんも。そうそう、いつか彼らと一緒に教科書に載るのが僕の最近の目標だからね(笑)。
廣瀬
国語の教科書にですか?
太田
国語じゃないね。歴史の教科書だね。普通の高校生の教科書に載りたいね。
岡田
日本史とかですか?
太田
そうそうそうそう。学術書の中での文学史とか出版文化史には今のままでも僕の名前はそれなりに残るだろうけど、今からもっとがんばって、普通の高校生の教科書に載りたいね。僕は奈須さんや竜騎士さんは歴史の舞台に残る可能性がものすごくあると思う。そうなると、僕の名前もたぶん残っちゃう。早稲田とかの入試問題のちまーい引っかけ問題で、「次の作家と関係のある人物を選べ」的な選択肢でさ。受験生が「知らねーな、この太田克史とかって、かつふみ? かつし?」みたいな感じで(笑)。
まあ、そんな感じでは残る気はするし、残ってみたい。だってさあ、山川の教科書に名前が残ったりしたら愉快じゃん。それに、今は荒唐無稽に感じるかもしれないけど、可能性としてはゼロじゃないと思うよ。だって、50年後とか100年後の日本の姿を考えたら僕はこの辺りの作家さんしか残らないと思うもん。
例えばね、こういうふうに書かれるんじゃないか、っていう気が僕はするわけ。「21世紀前後の日本はマンガ・アニメ・ゲームというサブカルチャーが隆盛を極め、それらの文化は世界へも積極的に輸出され、文学活動にも大きな影響を与えました。当時の作家として、奈須きのこ、竜騎士07らが活躍しー」みたいな。で、その欄外に「当時のライトノベル的文学活動を牽引した文芸雑誌に『ファウスト』があり、その編集者は太田克史ー」みたいなさ。山川の用語集では星が「2」くらいの感じで(笑)。そんなイメージだよね、今はとりあえず。
だって、浮世絵とかはそういう感じで歴史に残ってるわけじゃん。馬琴と北斎のコラボレーションが歴史に残っているように、例えば竹さんと西尾さんのコラボレーションや、武内崇さんと奈須きのこさんのコラボレーションが歴史に残ったり……、っていう可能性は十分以上にありますよ。今だってすでに武内さんの絵には世界中に理解者がいるんだし、いずれ竹さんもそうなっていくかもしれないし、何より僕がそうする(笑)。で、そうなったら、歴史に残さざるを得ないじゃん。
才能がある人を集めてくるのが編集者なんだから、今の日本の世の中で、これだけの数、世界レベルの絵を描く人がいるのに、それが文芸と全くリンクしていませんでしたっていう歴史しか残せなかったらさ、恥ずかしいじゃん、僕ら編集者が。世界的にすごいものが当時日本にあったのに、当時の編集者は何もやってませんでしたっていう歴史になっちゃうぞ、このままだと! って僕は思ったわけ。だからこそ、金子一馬さんや西村キヌさんと一緒に仕事しようとも思ったんだよね。
僕、金子さんの一級のイラストはボスに負けてないと思うし、西村キヌさんが参加したゲーム『ストリートファイター』は全世界で数千万本も売れたんだよ。そういうのって、いずれは必ず歴史に名前が残るからね。だからそういうサブカルチャーと、文学活動とが濃密な接点を持ったってところに、見る目がある後世の研究者が「こんなことやった奴はいったい誰なんだ!?」っていつか気がつくわけですよ。そうなったときに、僕の名前が急速にクローズ・アップされてくるわけ。ハハハ、面白そうでしょ?(笑)
廣瀬
面白いですね! 50年後くらいにですか?
太田
うん、そうねえ。50年後くらいに再発見されると思う。されたら面白いと思う。ハハハ。
廣安
じゃあその50年後に西尾維新さんが、例えば今私たちが太宰を読んで面白いと感じるように、面白く読まれますか?
太田
そればかりは、分からないね。なったらいいと思うけどね。ただ、『南総里見八犬伝』ってオリジナルは読んだことないけど、筋は知っていて面白いよね、みたいな感じで翻案のものが残っていたりする可能性もゼロじゃないよね。
廣瀬
正月にドラマ化されたり、ですか。
太田
そうそう、リメイクされたりして残る可能性もゼロじゃない。アニメだと『ガンダム』なんかはすでにそうなっているじゃないですか。これ以上言っちゃうと予言者の領域になっちゃうけど、歴史的にはそういう可能性は十分にあると思うよ。
浮世絵だって、そもそもは日本画をヨーロッパに輸出するときに、その日本画がガタガタ動かないように一緒に箱に詰めていた新聞紙みたいなもんだったのに、それを見たオランダ人が素晴らしさを発見して評価したから今に残ってるんですよ。だから、僕の言っていることも、今は与太話に聞こえるかもしれないけど、十分に実現がありえるかもしれないよ?
アニメ・ゲーム・マンガと接近した文学的アプローチっていうのは、今、僕らしか真剣にやっていないから、その点だけでも歴史的には残る価値があるんです。そして、そこに注目する歴史家が出てきたら、僕たちの仕事は確実に発見される。そういう歴史家はもしかすると出てこないかもしれないけど、僕は出てくると踏んでいる。なぜかっていうと、50年後、100年後の日本はぶっちゃけて言うと、たぶん相当に貧しくなっている気がするの。だからそうなってしまった日本では過去の輝かしい日本の栄光を探るムーブメントっていうのが確実に起こるわけ。そうしたら、今現在のアニメ・ゲーム・マンガの隆盛っていう現象はさ、すごい輝かしい時代に見えるわけじゃん。僕の仕事の射程は、遙か未来の未来まで遠いんですよ(笑)。