KENBUNDEN

合コンから貧困まで 東京大学見聞伝ゼミナール公式サイトです

トップページ > Reports > BL Teatime in 駒場

Reports

BL Teatime in 駒場



第三部・私たちの萌えって


第三部ではいろいろなBLにおける様々なニューウェーブーの中で私達の萌えは変化していくのかいかないのか、それぞれオリジナルBLがお好きな松尾先生、二次創作がお好きな江路先生にお答え頂こうと思います。

(第三部中は両先生の敬称を略させていただきます。ご了承ください)

司会 まず、第一に今回両先生にはオリジナルのニューウェーブとされる作品に目を通して頂きましたが、これは萌えの変化ととらえるべきものなのでしょうか。

松尾 あまり難しいことを考えたことが無いのでこれがニューウェーブなのかはわからないけれども、草間さんやbassoを読んでいると、「一世代来たんだな」という気が。

私達の世代はオトナになったらもうマンガは卒業、という感じだったんだけれども、草間さんくらいになると一世代来て、ふつうに子供の頃からマンガを読んでて大人になってもふつうに読んでてそれプラス一般生活も普通に行える、私のようにオタクまっしぐらみたいじゃなかった人達がこういうふうに書いているんだろうな、思いました。

.

司会 江路先生には今回えすとえむ先生の「ショーが跳ねたら会いましょう」などもお読み頂きましたがいかがでしたでしょうか。

江路 書き手からの視点なんですけれども、今回第一部で紹介されたオリジナルのBLを全部よんで、かなり新しいのから古いのであったと思うんですけど、絵柄がまず全然違うなぁと思って。やっぱ今の流行りはえすとえむ先生とかbasso先生とかそっち系かなと思ったんですけど、私世代だったら結構古めに映るものもありました。

うつりかわりがすごい。ここ最近一ヶ月くらいで全部読んだので強く感じますね。

司会 そうですね。ストーリーの面に関してはどうですか?

江路 ストーリー……、そうですね、古典としてさっき『トーマの心臓』が挙がりましたね。私の妹も若干腐女子に片足突っ込んでるんですけど、「読んだこと無い」って言うので貸してあげたら「わからない」っていうんですよね。この『トーマの心臓』を読んで、その次の世代って結構分かりやすいBLっていうかコメディ系が多いな、って思ったあとに現代のを見るとなんかまた戻ってきたような気がするんですよね。

今のニューウェーブより若干前のBLってどっちかっていうとコメディタッチというか、そういうのが多かったと思うんですけど、いままた改めて出てきてる人達っていうのはまた『トーマの心臓』時代に似た深みを感じます。

司会 伝統的なお耽美であるとかJUNEの時代であるとか深みのある作品、重厚性が回帰してきているのではないか、というようなお考えでしょうか。

江路 私はあまりオリジナルを全部制覇しているわけではないのでその時代時代によって色んな作家の人がいると思うんですけど今回読ませて頂いた中でなんだかそんな感じを抱きました。

.

司会 松尾先生いかがですか?

松尾 頭で分類したことがあまりなかったんだけど言われて考えて見るに、「一世代来た」っていうのもあるし、今のニューウェーブといわれる作品の登場人物達ってちゃんと男女交際の経験があった上で次は男に惹かれちゃってわあどうしよう!みたいな。だからちゃんと経験のある人になってきてるのかな、だから悩むのかなって。一世代前のときは初めて出会う性愛の対象が、男女づき合いしたことがなくて初めてなのに男だった、ていう感じだったんじゃないのかなってちょっと思います。

司会 ありがとうございます。世代やメディアの影響などを経てオリジナルBL自体もいろいろ変化してきているということですね。

.

.

それでは二次創作におけるニューウェーブということで「アンパンマンの擬人化」なんて話を聞いて松尾先生もちょっと衝撃を受けられたかと思うんですけれども、ぜひアンパンマン擬人化についてのご感想を松尾先生お願いします。

松尾 すみませんあの、私あんまり自家発電型じゃないんですよ!ネタをあたえられておー!みたいな感じなのでこれとこれをくっつけたらどうかなーっていう妄想の部分があまり働かなくて。あーそういう考え方もありかー、みたいな感じでした。すみません、これがほんとに正直な感想です。」

司会 ありがとうございます。まあたしかに私も頭の中でばいきんまんとアンパンマンがどうなってるんだろう……ってすごい興味はあるんですけど……まあおうちに帰ったらちょっとpixivでぐぐってみようと思います(一同笑)

.

でもこういった擬人化のムーブメントっていうのは、今まあヘタリアとかに通じるものがあると思うんですけれども。擬人化の醍醐味っていうのはどこにあるんでしょうか、江路先生。

江路 んーと、どうなんですかね。私も無機物の擬人化というのはやったことがないのでなんとも言えないんですけれども。なんで流行ってるのか……。ああいうのってヘタリアとか鉄道擬人化とかは原作があるのでみなさんそういうのの更に二次創作なんですけど、それとはまた別に消しゴムと鉛筆とかよくやってる人いますよね。そういうのは元になっている人がいないから描く人によって全然キャラが違うし、おじさんだったり、こどもだったりするかもしれないですし。そういうのはなんか不思議で、鉛筆と消しゴムはみんな知ってるんですけどそれを描くとするとみんなキャラがその人その人で違う。そこらへんはまたヘタリアとかとアンパンマンは違うところかな、と。

司会 そうですね、しかし一方で最近擬人化があまりにも多いんじゃないかなという気がしてきたんですけどそれはどうお考えでしょうか?

江路 まあ商業のことなので……売れるものがあったらつくるのかなーとは思うんですけど、ヘタリア、鉄道以降そんなに擬人化からまた更に二次創作で爆発的に流行るっていうのを見てないので雑多な感じには見えますね。そうやっていっぱい本屋さんに並んでるのをみると。

司会 二次においてもかなりジャンルの流行り廃りが大きい、ということなんですね。

.

因みに、初めあんぱんまんについてお話すると伺った時に擬人化しないで普通にアンパンマンなのかなって勝手に思ってたんですけど、それはないんですか?普通にアンパンマンのまんまカップリングっていうのは……

江路「食パンマンって平たくないですか?(一同爆笑)キスシーンを描いた時に食パンマンのあの焼けた茶色の面が見えるのは多分絵的に……それが良い人もいるのかもしれないですけどやっぱ万人には受けない。あとバイキンマンもアンパンマンも鼻が丸いんですよ。横から見た時こう……結構出っ張ってるのみると、キスさせるときに邪魔臭いような気がするんですよ。

やっぱ人間の横顔でキスさせるとやっぱ、いいじゃないですか。まあ絵的な問題もあるかなぁ、と。」

松尾「あの姿のままでやってる人もいらっしゃる?」

江路「ちょっと私は存じあげないんですけど、多分いらっしゃるような気はします。どこかに多分いらっしゃいます、多分絶対います!」

司会 ありがとうございます。

.

.

では次ですね。三次元でBLが表現されていくという、BLバーやBLカフェなど今まで私達の世界、二次元にあったBLの世界が三次元化して、更には三次元の世界で目の前でいちゃいちゃしながらカクテルを作ってくれたりして、そんな店員さんと私達交流したりできるなんていうムーブメントがあるんですけれども、この萌えというのは私たちのこれまでマンガとかアニメで養ってきた萌えの延長線上にあるものなんでしょうか。

松尾 すみません、わたしほんとーーーーうに骨の髄までマンガのオタクなので、動いてるとダメなんですよ(一同笑)。アニメもだめなんですよ…… マンガばっかり読んでて夢の中でもコマ割りで出てくるくらいなのでほんとにごめんなさい!

江路 わたしもちょっと専門外なところがあるんですけど、先程の質問用紙で頂いた『身近な人、友人、仕事の同僚などなどにフィルターを発動させたことはありますか』、という質問なんですが、わたしスポーツジムに通ってるんですけど、そこに夜毎日男の人二人で来る人がいるんですよ。絶対二人で、一人では絶対来ないんですよ、絶対二人で一緒にきて二人で一緒に帰るんですよ。まあ、そうみえるんですけど。(一同爆笑)あ、またあの二人が来てる!と思って二人で仲良くストレッチしてるのを見てるんですけど。そういう日常の中にある……事実は誰にもわかんないですよ、聞かないと私がなんとなくどうかなーと思って心を潤すことが出来るのは、まあ私の生きる糧じゃないですか。毎日がんばって仕事いってがんばってその後にジム行くことを楽しみにしてる。それとはまたちょっと別ですよね。これはもうお仕事としてやっているわけで、そういう自然さというか日常の中に入り込む形じゃなくて逆に非日常に行こうみたいな。

そういう面では三次元にも違いがあるんじゃないかと。

私は日常の中に潤いとして潜んでくれてたらいいんですけど、自分から非日常に行ってなおかつお金を払おうっていうのはちょっと……元々田舎にいるのでそういうお店も無いですしそういう発想はなかったですね。」

司会 両先生ありがとうございます。

そうですね。私も初めて知ったときは「え、三次元って……」という強い抵抗感があったんですけれども、高校時代にですね、部活には仲のいい二人組というものがいるもので私も後輩と一緒に後ろの方から「絶対あの二人はあやしい!」「なんであいつがいるときだけYシャツの第二ボタンまであけるのか!」などと議論を重ねていました。中にシャツを着ている日と着ていない日があるとかちょっと統計的に分析したりして(一同笑)

.

こういったBLバーですとかBLが三次元化してきたというのは社会のBLに対する許容であるとか腐女子自身の心情の変化とかもあるんでしょうか?

江路 そうですね、多分わたしは家のとなりにBLバーとかがあれば行くと思うんですよ。一度行きます。そこでもしかしたら新しい萌えが見つかるかもしれないですし。そういうのってカップリングと一緒で合う合わないがすごくあると思うんで、もしかしたらこれがすごくハマる人がいるかもしれないですし、ちょっとひとそれぞれなので。マイナーは絶対好きな人がいるっていうので、そういう人のためにあればいいし。

ただそのマイナーを好きな人が少なければいつか潰れてしまうかもしれないし、好きな人が多ければずっとずっと続いていくものだと思うので、まあそれが好きな人のためにBLバーなどが池袋の片隅にあるのは全然いいと思うし、

こういう色々なマイナー向けがあって需要のあるものが残っていけばそれはそれでいいと思います。

司会 ありがとうございます。変化と共にいろいろなものが生まれてくるというのは市場経済における宿命というところでしょうか。

それでは時間にもなってきましたので両先生に質問にこたえていただこうかと思います。

.

.

『もし自分のこれまでの人生に全くBLが関わらなかったら、毎日はどう変わっていたと思いますか?』

松尾 すごく深いですね。おそらく砂漠のようだったんじゃないかと思います(会場笑)。

私の中でBLは、女性性の抑圧からの解放とくっついているので、多分BLがなかったら、女性が不自由であること、抑圧された存在であるということを感じながらもそれを発散する場がなくて、もしかしたらそもそもそれを認識することもなかったかもしれません。それでもっといらいらして生きていたんじゃないかな、と思います。

江路 私はもっとリア充になっていたと思います(笑)。

多分もう結婚できたかもしれないくらいの時間のとられ方ですね。あとは同人誌をやるために神奈川の大学に来たということもあるので、多分ずっと北海道の雪の中にいたんじゃないかなと思うんで、そういった意味では旅行好きにさせてくれたという感じですね。高校の時から東京に来て。大阪行ったり、挙句今働いているのが旅行会社で(会場笑)

けっこう人生に色々かかわってくるのかなぁって思いましたね。

.

『最近腐男子が増えてきましたが、やはりBLは女性のものであってほしいですか?それとも性別関係なく楽しんでほしいでしょうか?またメディアでBLが取り上げられることについて一言あれば』

松尾 いろいろな考え方があると思いますが、基本BLは女性向けに作られていると思います。それを男性が楽しめるならどうぞどうぞ、という感じです。ですが私は古いタイプの人間なので、あんまり語り合うというのは女同士のオタク友達ともあまりないので、多分BL好きな男友達と語り合うことはものすごくできないと思うんだけれども、好きでいてくださる分にはとてもうれしいと思います。

江路 また書き手からの視点になるんですけど、やっぱ男性のことって女性にはわからない所があるので、腐男子だったらそれを訊きやすいかなって思います。話の中で訊きにくいことがあっても、腐男子だったら「創作上のことで訊きたいんだけど…」って訊くことができると思うので、男性の相談相手としては最高だと思います。あとは男性でも全く。私も男性向けを書いていたことがあったので、男性向けの作品を女性向けにするというだけなので、それほど抵抗はないですね。

.

『江路先生は男性向けではどのような作品を書いていたんですか?BLに対する思い入れとの違いはありますか』

江路 今日は年齢制限をかけていない集まりなので、直接的表現は控えたいと思うのですが(会場笑)、まあジャンルとしては「寝取られ」ですね。

奥さんとか恋人がほかの男とかと浮気、もしくは不倫をするのをとられた男性側から見るのがいい、と。これは男性のお客さんの方が共感していただけるかと思います。BLとの思い入れの違いというと、BLと男性向けって全然違うと思います。男性向けだと女の子が非常にかわいいんです。でもBLって二人がいて、初めて成り立つんです。男性向けでも男性と女性のキャラをしっかりわけて描く人もいるんですけど、どっちかっていうと女の子がメインなんです。男性向けは女の子をバンって押し出してくるんですけど、BLってさっきも表紙たくさん見ましたけど、けっこう男性二人で出してるのが多くて、表紙からして違います。性的な場面を描くときも、男性向けは女の子をバンって描くんですけど、そういったところも全然BLと違うので、描く時の気持ちも全然違うなって私は思います。

.

『BLは高永ひなこ先生の『チャレンジャーズ』と『恋する暴君』や日高ショーコ先生の『シグナル』と『嵐のあと』などスピンオフによる派生作品が最近増えてると思います。このことについてどう思いますか?』

松尾 キャラクターへの愛が深いんだなぁって思います。BLって最初に筋があって話があるのではなくて、キャラクターがあって話ができていくところがあると思うので、スピンオフはどんどん出てくるものだと思います。私は『チャレンジャーズ』も『恋する暴君』もどっちも好きですね。

司会 BLを読んでいて、サブキャラで妄想してしまうことがあるんですけど、松尾先生もありますか?

松尾 そうですね、私は主役に集中するタイプなので、あんまり脇役の方まで目が行ってないですね。

.

『腐女子という呼称に比べて、百合を嗜む男性のことを「百合男子」と美化した呼称で呼ぶのですが、これに関して違和感はありますか?』

松尾 男性のほうが正当化したり、持ち上げてあげたりしないといけないのかなって思います。女性の場合は自分を貶めて笑うけど、男性は自分を貶めて笑えないでしょう?それだから、百合男子っていう名前でちょっと持ち上げてあげたほうがいいんじゃないですかね。だからこういう自称をつけるのも男性特有なんじゃないかなって思います。

.

『表紙買いはなさいますか?雑誌で読んでから買いますか?そして買う基準は何ですか?』

江路 同人誌ですと、もっぱらイベント買いなので、表紙買いが多いですね。狩人になるので時間がありませんから、二人を描いた表紙があったら、パラパラっと中身見て即買いますから、表紙買いが多いですね。実家で割りと隠してるので、あんまり増やしたくないので、吟味して買います。

松尾 私の場合は有明の方は最近いっていなくて友達に頼んでいるので、作家買いです。商業の方は、コラムを書いているのもあって、表紙でババっと買ってしまうんですが、得てして勘は当たるもので、なんとなく当たるんですよね。

.

両先生ありがとうございました。